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0008:能力

春休みも開けてなかなか高頻度投稿とはいかないものです。今回は文字数も控えめで

 「そして、ジン教と戦うのが我々でなくてはならない理由は警察内部に教団の人間がいるということだけではない。そこに君に飲んでもらった石が関係してくる。」


 そう言うとエディは先程ノグチがやったように水晶に手を置く。

そして、次の瞬間には水晶が燃え上がった。


「……!!手が!?」


炎が消えてそこに現れたのは予想に反して元のままのエディの手。

面食らった様子のノグチを見てエディがフッと微笑む。


「俺の手が燃えたと思っただろう?だが予想に反して俺の手はもとのまま。だがね、今の炎、俺以外触ればもれなくやけどする。今の炎は俺が出したんだ。」


急によくわからないことを言い出すエディ。

何を言われたのかわからず困惑するノグチ、エディはニヤリと笑い、今度は水晶を触らず手の上に紙片を乗せ、それを燃やしてみせた。


「意味がわからないだろう?安心しろ、俺も最初そうだった。俺もかつて、君と同じように深く絶望し、この組織に拾われ、石を飲んだ。そうして発現したのがこの物を燃やす能力だ。君は試したところ物を増やす能力を発現したようだな。本当ならここで詳しく説明してやりたいところだが、そういうわけにもいかない。我々には時間も人手もないんだ。だからここではほんの表面の概要についてだけ教えておく」


一気に言われてノグチはこの先程からやけに情報を頭に詰め込まれるようなエディの様子は余裕の無さから来ているのだ、ということ、そして自分が飲んだ石はまるで小説の中に出てくるようなトンデモアイテムだったことを認識した。


「まず、この能力にも名前はない。我々のボスは命名を嫌う。ボスの名前すら誰も知らないんだ。皆がボスのことはボスと呼び、ボスも我々のことは名前で呼ばず役職名で呼ぶ。組織の中では能力は能力といえば伝わるさ。そしてこの能力には絶対的な法則がいくつか有る。その一つは絶対に対象が必要ということだ。つまり極論言ってしまえばなにもない空間に放り込まれたら我々は能力を使えないのさ。もっともその環境ではそもそも人間が生きることすらできないがね。そして能力の対象は2種類に分かれる。”もの”全体が対象のものとなにか固有のものが対象の場合だ。通常対象が細かいほど能力もより複雑なものになる。”もの”が対象の我々の能力は増やすだったり燃やすだったり単純なことしかできないのさ。」


またしても説明パートに入ったエディの話を腰を据えてじっくりと聞く構えのノグチだったがエディは立ち上がり


「さて、本当に表面で申し訳ないが俺の役割はこれまでだ。待っていたら迎えが来る。しばし待機だ。」


と言う。時間がないと言っていたがやはり最後まで説明はしてくれないようだ。

しかし、一つだけ絶対に聞いておきたいことがノグチにはあった。


「なあ、あの時あんたの茶番に付き合わずもう何もしたくないから裁きでも何でも受けるから放っておいてくれ、といったらどうなったんだ?」


「その時は君にまだ自殺願望が残っていたと見做しお望み通り殺してあげただろうな。」


あまりにもあっさりと言われ、どうやら今まで生きてきた世界とは本格的に違うところに来てしまったようだと自覚するノグチ。

そのままエディはさっさと部屋を出ていってしまい、ノグチは取り残される。

またしても沈黙が流れる。先ほどと違うのはたった一人で静寂と向き合わなければならないということだ。

子供のときは好きに物を考えられる時間の象徴だった静寂は大人になるにつれて意味を変えた。

彼の配属されていた部署の有るオフィスは電話対応をしている部署がとなりにあるため、常に声が聞こえた。

静寂は電話が一見もないことを示し、いつしか静寂を嫌うようになっていた。

自宅では妻との会話がないから静寂を避けようと音楽を聞き、見たくもないのにテレビを付けた。

職を失ってからは、静寂は友人だと思っていた薄情者達が電話を切ったことをこちらに教えた。

静寂は嫌いになったと思っていたが、そうではなかった。静寂は今の状況を考えさせられる。

それが希望への妄想につながった子供時代、良くないことを連想させるようになった社会人時代、いずれの時も静寂は形を変えはしない。暖かくもなく、冷たくもなく、ただ、そこに”在る”

などと考えを巡らせることにも飽きてノグチは立ち上がり、自分が座っていた椅子に触れる。

なんとはなしに先程の感覚を思い出し、手先に意識を集中させ、次の瞬間横に木材が現れる。

どうやら対象を正しく指定するのには集中力が必要なようだ。

それを繰り返し、なんとか高精度の複製を試みるノグチ。彼はまだ自分の限界についてわかっていなかった。


と、何度も何度も繰り返して試すノグチを不意に衝撃が襲う。耐え難いその衝撃に思わずノグチは倒れ込んだ。

この八話を持って序章の完結というようなつもりです。ここまで約2万字そこまで厳格に分けて考えてませんが

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