表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
一の巻
6/153

衝撃

ブクマ、評価、感想ありがとうございます!!励みになります。


……小鬼だ。……小鬼だっ……!!!


何度目をこすっても、自分をつねっても、目の前の光景は変わらない。

その子達は、……背丈は自分の膝くらいまではあるだろうか?

まるで人の赤ちゃんが歩いているように見える。

ぷくぷくしていて、柔らかそう……。雷様の絵のように腰巻きをしていて

上半身には何もつけておらず、ぷっくりとしたお餅のようなお腹は丸出した。

ここって、寒い季節はないのかな……?

子犬のように、キュッ、キュッと鳴きながら小鬼達、……6人?6匹?は、

嬉しそうに私の周りをコロコロと寝転がっている。


1本の(つの)の子もいるし、2本の子もいる。

……3本はいないんだな……。

思わず冷静に観察してしまった。

青鬼でも赤鬼でもなく、普通の肌色。髪は巻き毛の子もいるし、

ストレートの子もいる。

皆、キレーな金髪で濃い茶色の瞳……。違いは角の本数と髪質だけだ。

ああ、違う。一つ目の子も、2つ目の子も、三つ目の子もいる。

三つ目の子の額の目は邪眼なんだろうか?

でも……、皆が仲良しで楽しそう……。

コロコロと転げ回って、楽しそうにしている小鬼達を見て、

思わず微笑んでしまった。


その私に、小鬼達が気がついた。思わず固唾(かたず)を飲んで見てしまう。

だって、彼らは人間が見える事をどう思うのかしら? 嫌がられる?

こんなに楽しそうなのに、怒り出したらどうしよう……!!!


そんな私の心配をよそに、小鬼達は満面の笑みで

次々と布団の上に乗ってきた。私の指や、袖を掴みキュッ、キュッっと鳴きながら

まるで遊んでくれと言っているようだ。


……かっっ、可愛い……!!!!!

どうしよう、お肌がすべすべだ。フニフニしていて可愛い!!!

どの子も大きな目で、喜んで私を見ている。


「なあに? 遊びたいの? 」

思わずそう聞いてみると、1人の子が私の首に抱きついて

抱っこをせがんできた。


あぁぁぁ、あったかい……。可愛い……。

そう思いながら、ギュッと抱き締めると満足したように

次の子に変わる。皆、どうやらギュッと抱きしめて欲しいようだ。


6人目の子を抱っこしている時、廊下から声がかかった。

「雫様。お目覚めですか……?」


昨日、私を磨き上げてくれた女官さんの声だ。

どうしようか迷ったが、そのままの大勢で返事を返した。


「はい、おはようございます」

そう返事をすると、スルスルと襖が開けられたの。


そして……、女官さんが顔をあげると、

もちろん驚いていた。


あ……、やっぱり小鬼は驚くものなのね……?


「雫様……、お、おはようございます。……その者達は……?」

「あの、起きたら部屋で遊んでいたんです……。この子達、小鬼ですよね?」

「ああ、申し訳ありません。私の言葉が足りませんでした。

小鬼に間違いはございませんが、すぐに人に なつくわけではないので……。

雫様の世界にも、小鬼がいらしたのですね」

「……いいえ……!!! 物語の中に出てきますが実在はしません。初めて見ました」


慌てて否定すると、女官さんの目は更に大きく見開かれることになってしまった。

……マズイのかしら……?


「雫様、私でよろしければ……、小鬼についてご説明いたしましょうか?」

おずおずと申し出てくれた女官さんに、もちろん説明してもらわねば!!


「お願いします!!!」

ものすごく前のめりに、お願いしてみると、

女官さんは若干、引き気味に了承してくれたの。


「でっ……では、まずは朝の身支度を整えていただいて、

朝餉(あさげ)のお声がかかるまで、お話しさせていただきます」

引きつった笑顔の女官さんが、小鬼達をなだめながら

私の身支度を手伝ってくれる。小鬼達は女官さんも好きなようで、

にこやかに言う事を聞いていた。


「さあ、お前達。雫様の準備をしますよ。大人しくしておいておくれ。

そうそう、台所に戻っていても良いですよ?庭も、そろそろ出ても良いでしょう」

そう言われると、小鬼達は変わらずキュッ、キュッと鳴きながら

嬉しそうに廊下へパタパタと走って行ったの。

その様子を見届けて、ほお〜っとやっと人心地がついたような女官さんに、

顔を洗う場所や、着るものの準備をしてもらい、

部屋に戻ったときには、もうあのフカフカのお布団は片付けられていた。


私の正面に座った女官さんは、首を傾げて戸惑いながら説明をしてくれたの。


私の見たのは小鬼で間違いなかったわ。

彼らは、人間の生活の手助けをしてくれるんですって!!

例えば、夕暮れになると彼らの力、妖力って呼んでたな、

その力で明かりを灯してくれたり、料理や工場で使う火を起こしてくれたり、

力仕事をしてくれる子もいるんですって。


最初は、その人間が好きって言う理由だけど、絆ができると

その人の大切な人も手伝うことがあるみたい。

彼らへの報酬は、愛情だけ。


妖力……、やっぱり人ならざるものって認識なのかな……?


そんなこんなで驚きの説明を受けた私は、大切な事をスッカリ忘れていた。

……ホント、こんな大切なことが頭から抜けてるなんて……。

我ながらどうかしていると思うが、そのくらい驚いたのだ。


あのぷにぷにした柔肌(やわはだ)と可愛さに、頭から抜けていたもの……。



……そう、夢から覚めていないのだった……。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ