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紫雲の國の玉水の恵み  作者: テディ
一の巻
2/153

現実

 顔を上げて見渡すと、そこは(やしろ)のような場所に思えた。

あまりの景色の違いに、口が開いているのが自分でも分かる。

だって資料庫は狭くて暗くて、棚と本しかないのだ。

間抜けな顔で嫌だな、と人ごとのようにぽかんとしていた。


ーー木の香り……。


香りに気がついて、初めて頭が動き出した気がする。

自分が扉を開いた場所は、薄暗い資料庫ではなく、

社、……ううん、それとはまた違う。祭壇がない。

木の香りは太い柱になっている所から、漂っているように思う。

床は畳で、い草の香りもする。10畳ほどあるだろうか?

その周りは、1段下がった木床になっていた。

祈りを捧げる場所に思えたのはなぜだろう……。


私は、自分の置かれている状況に、なす術もなくボーっとするしかなかった。

5人の人物が自分を取り囲んでいる。


あれは、装束(しょうぞく)……??


私の目に飛び込んできたのは、神職の方が普段身に付けているような

白衣(白い着物)に紫の(はかま)

正座して顔を少しふせ、両手を上げた手には剣持っていて、まるで捧げ物をしているようだ。


少し離れた木板のところをグルっと、さらに囲むように

和服姿の人が、たくさん立っている。


私は、ハッと我に返った。

ーーー資料……!!!


自分の手をバッと勢いよく見ると、

……あったはずの資料がない……。


……ゆめ……?

……。そうだなぁ、今日はバタバタしてたし……。

やれやれ……。


何も持っていない手元を見つめ、ふう〜っと息を吐くと

眉間に手をやって揉んでみた。

そうだ、疲れたんだ、きっと……。

首を左右に振りながら、つぶっていた目を開いて

顔を真っ直ぐ上げた。


……が、……!!!!!


どうしよう……、景色が資料庫に戻らない……。


あれだ、教授から受けるストレスが原因だと思う。やっぱり人員を増やしてもらおう。

学部生はマズイな……。1学年下の院生に手分けして手伝ってもらおうかな。


自問自答していた私は、うんうんと頷き、

周りを見て、困ったなと思っていたの。

だって、この夢、いつ覚めるのかな? どうしたら良い?


そんな私を囲んでいた装束姿の人達が、剣を捧げる姿勢のままスッと立ち上がったの。

思わずビクッとしちゃった。なんて言うか動くと思っていなかったんだよね。

そして、まるで目の前に道が開けるかのように、後ろにサササッっと下がり

私の背後に、また正座して落ち着いてしまった……。


ーーーまさか、斬られないよね……?

振り返って、その人たちを見ていると

反対方向から、初めて私に話しかけてきた人がいた。


50歳くらい……?これは……海外からいらしたのかしらん?

んん?? コスプレ……??


その人は、銀色の髪に青い瞳だった。

真っ白な肌は、その色を引き立てるためにあるに違いない。

濃い紫の着物に紺色の帯、白い絹でできたようなツヤツヤのストールを

胸元に垂らし、いつの時代の流行りかは分からなかった。


「よくいらして下さった……!!!」


コスプレイケオジは、なんと……!!

事もあろうに、私の前で正座をし、頭を下げたではないか!!!


驚きのあまり、固まっている私に、彼は感激したように蕩々(とうとう)と話し始めた。

「私は、翼賛(よくさん)(くに)を治めております、勇隼(いさはや)と申す者。

國を上げて、貴方のお越しをお待ち申し上げておりました」


そのイケオジの挨拶の間、周りの人も全て彼に(なら)

頭を下げている。

私は、これ以上ないくらい驚いてキョロキョロと周りを見るしかなかった。



「貴方様は、影向(やうがう)様のお告げにより、御呼び願ったもの。

決してイタズラに御呼びたてしたわけではありませんので、ご理解いただけると

ありがたい限りです」


彼は国主なのだろう。しっかりと私の目を見て、真剣に話している。

その様子を見て、私は思い切って、……そう、この場の雰囲気は

全て無視して、質問してみることにした。


言葉を出すのに、少し震える……。しょうがないよね、夢だからフワフワしてるんだもん。


「あの……」

勇気を出して振り絞った声は、少し震えていた。


「あのっ……、これって夢ですよね……? 私、どうしたら良いですか?

夢にしても、なんだか大掛かりで……」


小声でそう言うと、勇隼《いさはや|》様はとても驚いた顔をして、厳しい顔をしている。


まずかったかな……?このノリに付き合うのが正解だった……?

私が、たちまち不安になると、国主様はニッコリと笑って

話を続けてくれた。正直、笑ってもらえるとホッとするよね。

特に、この状況じゃ……。


「我が國の至宝よ、しっかりご説明します。これは夢ではありません。

ひとまず、場を移しましょう。伊吹(いぶき)、問題はないな?」


領主様の視線の先には、私の後ろにいる装束の人達がいる。

もう1度、自分の後ろを振り返って気がついた。


うわぁ〜〜、コスプレ祭りだ……。ウィッグって、色々な種類があるんだな〜。

目の色って、カラコンであんなにキレイになるのかな……?


「お館様、なんら問題はございません」


顔を上げた伊吹と呼ばれた人は……キレイな薄紫の長髪 、紫の瞳……。

それが装束の濃い紫の袴と、よく似合っている。


それを見つめながら、思っていた。


……ダメだ……。夢だとしても、キャパオーバーだ……。


とりあえず私は、考える事をひと休みすることにしたのだった。


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