第4話 初めての戦闘
――ガチャ。
急に部屋の扉が開き誰かが入ってきた。
よく見ると革の鎧に身を包んだ兵士のようだけれど顔はサル。
「お嬢様ァ、飯の時間だぜ?」
汚いお盆の上に食べ物らしきものが入った木の器が乗っている。
見た目と違って良い奴かと思ったけれど意地の悪そうなニヤけた顔を見るとそんな感じでもなさそうだ。
「ボスがこの女は貢物だから手を出すなと言ってるが少しくらい大丈夫じゃねぇか? 屋敷にいた奴隷の女共にも飽きたしな」
「ウキャキャ、違いねぇ!」
薄暗い部屋にサル兵士の下品な笑い声が響く。
「侍女たちはどうしたのですか!?」
「アァ? 女共は意識はあるが蛙みたいにひっくり返って股を開くだけで声もあげねぇから街の奴隷商に売っちまったよ」
「なんてひどいことを……」
ニヤニヤしながら1体のサル兵士がサラに近寄ろうとするとクマ人形がサラを守るようにサル兵士の前に手を広げて立ちはだかる。
まるでサラにこれ以上近づくなと言ってるようだ。
「こいつは何だァ? ああ、お嬢様の人形遣いとやらのスキルか」
立ちはだかったクマ人形の頭を掴んで持ち上げ薄気味悪く笑うサル兵士。
クマ人形に戦闘能力はないのか手足をバタバタさせているだけだ。
「その子たちに手を出さないで。お願い――」
サラが最後まで言い切ることなくサル兵士はクマ人形の頭と胴体を引き千切ってサラの目の前に投げ捨てると床に転がったクマ人形はピクリとも動かなくなった。
(ぬいぐるみを引き千切るなんて酷いことを)
頭と胴体に分かれたクマ人形を手に取って「痛かったよね、ごめんなさい……」と呟くとサラの手からクマ人形がスゥッと消える。
(本当に魔法で作ったんだ……)
ここは魔物も魔法も存在する異世界だとは聞いているが実際に見たのは初めてだから驚いた。
「ああ、確か人形遣いの呼び出した人形は頭と胴体が離れたら魔力の繋がりが切れるんだよなァ? これは悪いことをした」
そう言いながら近くにいた別のクマ人形を捕まえて同じように引き千切り馬鹿笑いするサル兵士たち。
「さて、ボスが来る前にお嬢様とやらの体を味見してみるかァ?」
サラの体がビクッと硬直するのがわかる。
他のクマ人形たちも動かなくなった仲間をみて恐怖からサラにしがみ付いて離れようとしない。
「まずはボロ服を脱いでくれるか? 破り捨ててもいいが味見がボスにバレると面倒だしな」
サラは屈辱に顔を歪めながら腰紐を外して床に置く。
そしてギュッと目を閉じて顔を横に向けながら貫頭衣に手をかける。
「……うぅ」
「どうした? その首輪に命令してもいいんだぞ?」
ニヤニヤしながらサラの様子を見ているサル兵士たち。
(……胸糞悪いな)
このサラという少女がなぜ捕らわれているのか知らない。
もしかしたら見た目と違って本当は悪い少女なのかもしれない。
――だけど。
「そのモフっ娘は僕のなんだから勝手に触るなよ」
黙って見てたけれど限界だね。
人形だからなのか恐怖感がなく負ける気がまるでしない。
「ウキッ、誰だ!?」
急に声がして驚いたサル兵士たちはキョロキョロと辺りを見渡して声の主を捜すが当然誰も見当たらない。
「ここだよ」
僕は腕をぐるぐる回しながらサラの衣服に手をかけているサル兵士の足を突いてアピールする。
最初は警戒していたが僕の姿を見てホッとしたのか笑い出すサル兵士たち。
「ウキャキャ、お嬢様とやらの最後の抵抗ってかァ?」
まあ、人形が腕をぐるぐる回してるだけだし舐められても仕方ない。
「サラ、すぐに助けてあげるから待ってて」
僕がサラに伝えると喋る人形に一瞬驚きながらも大笑いするサル兵士。
何もせずに早々と帰っていれば大怪我をしなくても済んだだろうに。
「ウキッ、やれるもんならやってみな!」
サル兵士の了解が得られたので腕を回しながらサル兵士の顔面付近へピョンとジャンプする。
「お言葉に甘えて逝ってらっしゃーーい!」
鍋つかみグーパンで殴るとボンッという音と共にサル兵士の上半身が消し飛ぶ。
そして残った下半身がゆっくり地面に倒れていった。
(うわっ、ホラー映画かよっ!?)
僕的には牢獄の壁付近まで吹き飛べば時間稼ぎになると思ったのに吹っ飛ぶどころか上半身の肉片すら残さず爆散した。
まあサル兵士をビビらせるつもりだったから結果オーライなんだけどさ。
……破壊神様に創造神様、この力はやり過ぎデス。
僕を含めた全員が呆気に取られているが時間稼ぎになったからいいか。
「お前もその手を放せよな」
残りのサル兵士も鍋つかみグーパンで静かにさせた。
下劣な行為から解放された安心感から体の力が抜けて僕の方に倒れこむサラを優しく受け止める。
「……サラ、大丈夫?」
他のクマ人形たちに体を支えられながら持ってきた水を一気に飲み干し僕をジッと見つめる。
さすがにだいぶ怪しまれたかな?
「驚かせてごめ――」
「助けてくれて、ありがとうっ!」
モフっ娘に抱きしめられました。
最後までお読みいただきありがとうございます。
少しでも面白い、続きが気になるようでしたらブックマークや評価をお願いします。