6話
「助けて頂き、本当にありがとうございます」
私の目の前で、兄妹はパンを器用に食べている。
妹の方はこちらには目もくれず、夢中になって食べている。
兄の方は口一杯にパンを詰め込みながら、普通に話している。
まあ、いいんだけどさ。
そのパンは教会から恵んでもらった物だし。
あっという間にパンはなくなり、兄妹は水をガブガブ飲んでいる。
「えーッと、私の名前は渡部杏理。あんた達の名前は?」
ぷはーと水から口を放して、兄の方が答える。
「僕はチャー・ミカといいます。妹の名前はリース・ミカで、身分は平民です」
先日の事件で両親を亡くしました、と苦笑いするチャー。
先日の事件とはなんだろう?
都が"こう"なってしまった原因なのだろうか?
「アンリさんと呼んでもいいですか?」
「いいよ。ところで、事件ってなんの事?」
「知らないんですか?」
ちょっとびっくりしたようにチャーが目を大きくする。
「うん 、こういうことは疎くてね」
チャーが話すにはこういうことらしい。
それはよく晴れた日の事で、チャーは父の仕事の手伝いをしていたらしい。
突然轟音が聞こえたと思ったら、家が崩れたらしい。
もうもうと立ち込める煙の中で、一人のきらびやかな鎧を纏った騎士を見た瞬間、意識がブラックアウトし、この有り様らしい。
なんかもうハショリ過ぎである。
至極真面目な顔で話すので、ついつい真剣に聞いていたが、残念すぎる。
これでは何も分からない。
とりあえず、教会に行こう。
天使に会いたい。