4話
ここに来て、軽い人間不振な私だが、そんなことはどうでもいい。
最低なショタより食べ物である。
平和ボケしている日本人の私だ。
良心が邪魔をして犯罪は出来ない。
といっても犯罪チックなことはしているので、緩いもんであるが。
その為、食べ物を手にいれる方法がとても限られる。
そんな私が食べ物を手に入れられる方法の一つ。
それは、教会の炊き出しだ。
瓦礫やテントのなかを進む。
瓦礫の隙間には骨ばかりになった犬がぐったりと伏せている。
周囲は灰にまみれた木材や、剥がれた石畳に彩られ、モノトーンの世界であるのに対し、空は驚くほどに蒼い。
どこでも空は同じ青色だと、何にもならない言葉を浮かべる。
そんな蒼い空の中に一本の細い煙が上がっていた。
炊き出しだ!
言葉は泡の様に消え、私の頭の中は食べ物一色だ。
目の前に大きなゴミのようなものが転がっていたが、私は気にせず飛び越え、走り出した。
瓦礫をすり抜け走る。
風が顔に当たって気持ちがいい。
思いっきり走ったのは、一体いつぶりだろうか。
しかし、エネルギー不足な身体はすぐにリミットを迎え、なんとか教会にたどり着いた時にはもう、死にそうになっていた。
瓦礫だらけな都の中で、驚くほど原型を留めている教会。
元々、華美ではないが荘厳なその姿は、陰惨な状態の周囲の中で、正しく神の恩寵があるかのように見えた。
そんな教会の前には人だかり。
骨と皮ばかりになった人々が死闘を繰り広げている。
もちろん、配給の食べ物を賭けて。
あぁ、これはもうダメかも。
今にも死にそうなほど腹を空かせているのに、もう体力がない。
体力の回復を待っていたら、飢えた人々があっという間に食べ物を食いつくしてしまうだろう。
これは死んじゃうかもしんない。
トントンと肩をたたかれる。
振り向くと、両手一杯にパンがギッシリ詰まったバスケットを抱き抱えたうら若きシスターさんがいた。
「貴女に神のお恵みを」
ふにゃりと笑うシスターさんは、まさしく天使に見えた。
「ありがとうございます!」
パンを3つほど手に取り、スカートのポケットにねじ込む。
シスターさんに押し寄せるであろう飢えた人々を避けるため、私はそくささと教会を後にした。
マイハウスへの帰り道。
私はパンを食べるのを必死に我慢していた。
瓦礫をすり抜け歩いていると、ぼろぼろの子供が道端に転がっていた。
泥だらけで、髪もボサボサ。
ズボンは擦りきれ、身体には無数の傷痕がある。
なんとも憐れで、私でさえ同情を覚える姿。
「…だれか………たすけて………」
こちらに向けた爛々と光る、生への執着が溢れた目。
でも生憎、私は子供が信じれない。
子供をまたぎ、歩き出す。
「……いもうとだけでも………たすけてください…」
声が聞こえた。
今にも消え入りそうな声だった。
振り返り、少年を見る。
少年は背中に小さな女の子をおんぶしていた。
「…お願いします…………どうか…妹を……」
「私は子供が嫌い。特にあんたみたいなあざといヤツが」
「……それでもどうか……妹を…」
たすけてください
その言葉は途切れ、少年の願いだけが蒼い空に響く。
目を閉じた少年を妹ごと背負い、私はマイハウスへ歩いた。