表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

4話

ここに来て、軽い人間不振な私だが、そんなことはどうでもいい。

最低なショタより食べ物である。


平和ボケしている日本人の私だ。


良心が邪魔をして犯罪は出来ない。

といっても犯罪チックなことはしているので、緩いもんであるが。


その為、食べ物を手にいれる方法がとても限られる。


そんな私が食べ物を手に入れられる方法の一つ。


それは、教会の炊き出しだ。





瓦礫やテントのなかを進む。


瓦礫の隙間には骨ばかりになった犬がぐったりと伏せている。


周囲は灰にまみれた木材や、剥がれた石畳に彩られ、モノトーンの世界であるのに対し、空は驚くほどに蒼い。


どこでも空は同じ青色だと、何にもならない言葉を浮かべる。


そんな蒼い空の中に一本の細い煙が上がっていた。



炊き出しだ!



言葉は泡の様に消え、私の頭の中は食べ物一色だ。


目の前に大きなゴミのようなものが転がっていたが、私は気にせず飛び越え、走り出した。



瓦礫をすり抜け走る。

風が顔に当たって気持ちがいい。

思いっきり走ったのは、一体いつぶりだろうか。



しかし、エネルギー不足な身体はすぐにリミットを迎え、なんとか教会にたどり着いた時にはもう、死にそうになっていた。



瓦礫だらけな都の中で、驚くほど原型を留めている教会。


元々、華美ではないが荘厳なその姿は、陰惨な状態の周囲の中で、正しく神の恩寵があるかのように見えた。


そんな教会の前には人だかり。

骨と皮ばかりになった人々が死闘を繰り広げている。

もちろん、配給の食べ物を賭けて。


あぁ、これはもうダメかも。

今にも死にそうなほど腹を空かせているのに、もう体力がない。

体力の回復を待っていたら、飢えた人々があっという間に食べ物を食いつくしてしまうだろう。


これは死んじゃうかもしんない。




トントンと肩をたたかれる。

振り向くと、両手一杯にパンがギッシリ詰まったバスケットを抱き抱えたうら若きシスターさんがいた。


「貴女に神のお恵みを」

ふにゃりと笑うシスターさんは、まさしく天使に見えた。



「ありがとうございます!」

パンを3つほど手に取り、スカートのポケットにねじ込む。


シスターさんに押し寄せるであろう飢えた人々を避けるため、私はそくささと教会を後にした。











マイハウスへの帰り道。

私はパンを食べるのを必死に我慢していた。



瓦礫をすり抜け歩いていると、ぼろぼろの子供が道端に転がっていた。


泥だらけで、髪もボサボサ。

ズボンは擦りきれ、身体には無数の傷痕がある。


なんとも憐れで、私でさえ同情を覚える姿。



「…だれか………たすけて………」



こちらに向けた爛々と光る、生への執着が溢れた目。


でも生憎、私は子供が信じれない。

子供をまたぎ、歩き出す。








「……いもうとだけでも………たすけてください…」



声が聞こえた。


今にも消え入りそうな声だった。


振り返り、少年を見る。

少年は背中に小さな女の子をおんぶしていた。



「…お願いします…………どうか…妹を……」



「私は子供が嫌い。特にあんたみたいなあざといヤツが」


「……それでもどうか……妹を…」








たすけてください












その言葉は途切れ、少年の願いだけが蒼い空に響く。


目を閉じた少年を妹ごと背負い、私はマイハウスへ歩いた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ