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俺、この戦いが終わったら魔法少女になるんだ  作者: 虹ぱぱ
二章:癒し手の魔法少女
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68話:夜が視る夢

???視点です。泡沫。

 ……ぉ…………。


 何か、聴こえた気がした。

 真っ暗な闇の中で。


 まどろみ、たゆたう中で。


 色々なものが詰め込まれていく。


 頭に。体に。心に。魂に。


 知識が。


 気持ちが。


 力が。


 それらが■に通り過ぎて蓄えられていく。


 刻み込まれていく。


 音が聞こえる。


 トクン……トクン……っと。


 微かに、だけど力強く。


 温かい。


 安心する温かさだ。


 真っ暗でも怖くない。


 この温もりがあれば、怖くない。

 不思議な気持ちだ。


 だから、今まで怖かった事も見つめる事が出来る。


 怖くて、逃げていた事に向き合える。


 この暗闇の中で夢を見る。


 知らない事、今までの事。色んな夢を。


 ■を通り過ぎていく知識と混濁して訳がわからなくなる。


 だけど、静かに。


 じっと見つめる。


 また夢が繰り返される。


「私の……お父さんは……サタン様なの?」


 夜色の幼い少女が言った。


「違うわ」


 顔を半分、仮面で隠した女が言った。


「でも誰にも内緒よ?」


 そう言って笑った。とても綺麗な笑顔だった。


「じゃあ……私のお父さんは誰なの?」


「……んー。そうね。誰っていうのは言えないわ。」


「どうして?」


「あの人は秘密にしなければいけない事が多いから」


「……ふーん。どんな人?」


「そうね。とても強い人よ。身体もだけど……心がとても強い人」


「強いから好きになったの?」


「……そうね。強いっていうのも関係があるのかな」


 夜色の少女の頭に手を置き、優しい目で語る。


 ……母親の顔だった。


「私は最初、あの人を憎んでいたの」


「え?」


「あの人は私の大切な人を奪ったの。奪ったと思ってた。筋違いなんだけど。けど、恨んでいた」


「……嫌いだったの?」


「うん。大っ嫌いだった!」


 そう言って、笑った。


「でもね。色んな事があった。そして、あの人を憎みながらもずっと見ていた。」


「嫌いなのに見てたの?」


「うん。いつか殺してやるって思ってたから」


「え?」


「ふふ……。まあ、観てたのよ。向こうは私の事なんて眼中にもなかったでしょうけど」


「ふーん……」


「あの人は『世界最強の戦士』なんて大層な呼ばれ方もしてたけど、もう一つ呼び名があったの」


「なに?」


「『不死鳥』って呼ばれてたわ」


「『不死鳥』?」


「んー。死なない火で出来た鳥さんみたいなのよ」


「死なないの?」


「そう。あの人も決して死ななかった。どんな任務でも。どんな場所でも。どんな事がおきても。必ず生きて帰ってきたの」


「強かったから?」


「そうね。強くて、強くて。彼を孤独にするくらい強くて。」


「だから、好きになったの?」


「……私が大切だった人は私を置いて死んでしまった。あなたのお父さんを憎んでいたけど、それと同じくらい大切だった人も憎んだわ」


 静かに、女は続ける。


「私ね。見てて思ったの。この人は帰って来るんだって。絶対。どこにいても生きて帰って来るんだって」


「……」


「知りたくなったの。あの人の事が。私を置いて絶対死んだりしないあの人をもっと知ってみたくなった。そして、気付いた時には好きになってたの。あの、俺が世界最強の戦士だって言ってた獰猛な笑みも。あの、俺に任せろって言ってくれた怖い顔だったけど、奥底に感じる温くて、優しい笑みも。出来るなら、もう一度見たい。貴方にも見せてあげたい。」


 女は微笑んで少女に聞いた。


「お話、難しかった?」


「うーん。うん。わからなかったー!」


「あはは! そっか。」



 ……。


 ……。


 ……ぉ……て……っ……た……。


 また声が聞こえたような気がした。


次回『69話:削られる命』

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