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俺、この戦いが終わったら魔法少女になるんだ  作者: 虹ぱぱ
二章:癒し手の魔法少女
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58話:女教師の追想1

大暮ゆうき先生視点です。


多分ちょっとだけ先生視点続きます。

「ー♪」


 私は最高の気分で職場に向かっていた。

 この仕事は嫌いじゃない。

 だけど、仕事に向かうというのは、やはりどこか憂鬱な気分になってしまう。


 でも、今日の私はハッピーだった。


 こんなに人生で楽しい気分になったのは初めてかもしれない。


 世界が輝いて見える。


 私はずっと一人だった。


 少し、みんなより魔力が強かった。

 それだけではみ出してしまった。


 それに外に出てみて、わかった。あそこは、監獄だ。


 地下帝国で逃げだす時も一緒にいた人達は、たまたま一緒に逃げる事になった人達だった。

 あの中に居ても、私は一人。決して、仲間ではなかった。


 そして、逃げ出す時にはぐれて、初めて手を差し伸べてくれた人。


 それがカルマ君だった。


 震えて、とてもかっこいいとは言えなかったけど。


 それでも、あの手の熱さは忘れない。


 あの、彼の鼓動とシンクロして高鳴る胸の熱さを忘れない。


 正直、私は諦めていた。ああ。やっぱり一人で、一人のままで死ぬのかと。


 それもいいかと諦めていた。逃げ出したのに諦めた。

 もう、いいかと走る事をやめようかと思った私に手を差し伸べて言ったのだ。


「こ、こっちだ! 一緒に行こう!」と。


 一緒に行こう。その言葉で、震える彼の手を握ってしまった。


 諦めていたのに。


 一言で気付いた。思い出した。


 ああ。そうだ。私は生きたくって逃げたんだって。


 そして、一緒に逃げて、何度も駄目だって思ったけれど、彼は必死になって、逃がしてくれた。

 彼は本当に力が弱かった。あの世界で絶対の力、魔法という力がとても弱かった。

 それでも、出来る事を駆使して、考えて、恐怖を殺して乗り越えた。


 彼は覚えてないけれど、一度諦めた私に彼の姿は鮮烈だった。


 そして、外に逃げ出して。教師になった。


 ただ一人で、黙々と、彼が生きていることだけを信じて、己を磨いた。

 彼に受けた恩を返したかった。

 彼を助けたかった。


 彼にもう一度会いたかった。


 外に出ても、一人の私はそれでももう諦めようとは思っていなかった。


 あの時の彼は弱かったけれど、とても強かった。


 あの姿をずっと覚えている。

 だから、頑張れた。


 時が経って、四葉に出会った。


 とても変わった娘。


 彼女に出会って、彼女の家庭環境を調べてみた。彼女の痕跡は、おそらく四葉の力の暴走……でわからなかったけれど、あの家が異常である事はわかった。


 家中を埋め尽くす、ゴミ。悪臭。


 それに、四葉には他に3人の姉妹がいたはずだった。そう、はずだった。

 みんな死んでいた。


 その中で死ぬ事なく生き続けた四葉。どうゆうふうに育ったのか想像が出来ない。


 彼女は深い傷を負っている。


 とても大きな傷を。


 あの明るい笑顔の下に。彼女は彼女を守るために作り出した人格。死んだ姉妹と同じ数、3人。


 ただ推測でしかないけど、その三つの人格がはっきりと意思を持ち始めたのは、四葉が魔法に目覚めたのがきっかけのような気がする。

 この辺りは、カルマ君にじっくり時間をかけて解明してもらうしかない。


 そして、四葉と暮らすようになって。私は一人じゃなくなった。


 彼女との生活は色々と危険な事も多かった。けれど、とても楽しかった。


 そして、あの日。初めて一葉と出会った。あの間欠泉から出てきた魔物、3頭の犬に私は腕を落とされた。

 苦痛で呻き、意識を失いかける中で私は彼女に会った。


 どんな表情をしていたのかはわからない。覚えていない。


 どんな会話をしたのか、それも覚えていない。とても穏やかな気配、けれども四葉だとわかった。


 一葉は私の腕を治した。


 そして、あの3頭の犬を屠った。


ここから寄り道せずに一気にいけるかな?


次回『59話:女教師の追想2』

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