54話:明先生
「くー……くー……」
大暮先生の姿がない。いるのはカルマと九米……と鳳凰院凶。カルマは寝ている。九米共はスリープモードだ。
実に、都合がいい。
全裸で寝ているカルマの足元に近づく。
「ちょ、鳩子ちゃん!?」
手で目元を隠し、指の間から様子を伺っていた四葉が声をかけてくる。
四葉も年頃だ。多少興味があるのだろう。
布団から覗く足先。ずれて覗くふくらはぎと太もも。
汚い。
汚物だ。
あと少しずれればモザイクが必要だ。
そこを凝視する四葉。
「おい。四葉。向こうを向いてろ」
「え? う、うん」
黙って向こうを向いた四葉を確認して、カルマに向きなおる。
これから起きる汚い映像を少女に見せるのはどうかと思った。
「……九米」
声を九米にかける。スリープモードから起動し、俺を見る九米。
「貴様が悪いわけじゃないのは分かっているつもりだ……だが、その尾を全て剥ぎ取って、ただのサッカーボールに成り下がりたくなければ……わかるな?」
視線に力を込めて声をかける。
ペットには躾が必要だ。まだ上下関係をわかっていない。
だから俺を裏切るような真似をする。
ここでNOと言うのなら、言った事を実行するまでだ。
「が、ガッテンダー」
「いい子だ。じゃあ、やれ。」
九米は無言で尾を使ってカルマを拘束する。
両手、両足を縛られ寝床に磔にされる。
ついでなので、四葉の目と耳も塞いでもらう。
「ちょ、ちょっと? 鳩子ちゃん? な、何? こうゆうプレイはまだちょっと……」
四葉は無視する。
「ん……くー……ぐー……」
いまだに、俺達の存在に気付かずに眠り続けるカルマ。
危機管理がなっていない。罰が必要だ。……まあ、起きても関係ないが。
さて、動けないカルマ。昨日は頑張っただろう。体も大変疲れているはずだ。
疲れた体も労われて、罰にもなる一石二鳥の方法だ。
「九米」
九米はカルマの頭にのしかかる。
「う、うーん……くー……くー」
「よし。映像を流せ。とりあえず映像は「黒騎士と奴隷 ~華麗なる風穴~」でいい。」
「ガッテンダー」
九米が寝ているカルマの夢をジャックする。カルマが呻く。
「……ゆうきちゃん……の胸板……大きいです……え? ……大きい? ……あ、あれ? ゆうきちゃん? どこ? え? 誰? え? なんで、僕を抱きしめるの? ……あ、なんかいい香り……」
夢がジャックされていく。上映される映像は明先生の小説を元に作り出した作品だ。
そっと、カルマの足を掴む。
俺の仕事は簡単だ。映像に合わせて足ツボをマッサージ。人体構造というかツボの位置は把握している。
夢は所詮、夢だ。痛みはない。
「あ、あれ? 動けない!? ちょ、ちょっと? なんか硬いのが? え? 嘘でしょ!? そんな大きいのは!!」
さあ、狂気の宴の始まりだ。
「弾丸!!」
ごりぃ。手の感触からそんな擬音が頭に響く。
「ひぎぃっ!! ぁ。ァ。 アーッ!」
ごりぃ、ごりぃと圧す。
「い、痛い!! い、たいよぉっ!!」
足ツボは圧しようによっては「世界一痛い」と呼ばれるような場所もある。
足先から、頭の天辺まで、一気に痛みが駆け上がった事だろう。
夢の映像と重なって、実にリアルに。俺はリズミカルに、そして緩急をつけて力強く圧していく。
「弾丸!! 弾丸!! んー……………… 弾丸!! 弾丸!! 砲!! 弾丸ォオ!!」
「うぎぃっ!! ひぎぃ!! ら、らめぇ!! ぅぎっ!! 痛い!! いたいよぉ!! アーッ!」
夢の中でもがき苦しむカルマ。
そろそろだ。
俺はこいつを殺す。
しかし明の為にもこいつの頭はまだ必要だ。
だから、尊厳を壊す。大人になったカルマが初めて見る夢。
きっと素敵な心の傷になってくれるであろう。
俺は、こいつを明側に堕とす。
俺はそれまで、痛みだけしかなかった足ツボ圧しを緩やかにしていく。
痛みと安らぎ。緩急をつけて、安らぎを与えていく。
「ぇ? そ、そんな? な、なんで? あ、ああ? いやだ。 いやだ!! 優しくしないで!? き、気持いい……そ、そんな、嘘だ!! き、気持よくなんて……ん、んあ? ぁ。アーッ!」
俺は嗤う。昨日受けたストレスをこいつで晴らしていく。
九米は俺のその顔を見て震えていた。
お風呂回の後の誰得回でしたね。
物語進めるかもって言ってからのネタに走る。作者ならみんな分かる真理ですよね?
・・・言い訳じゃないよ?
まあ、次回からはちょっと進みます。2章をはやく終わらせよう・・・。
次回『55話:踏みにじられた尊厳』




