53話:今日は学校を休みます
寝床に潜り込んで、俺はそのまま気を失った。
夜中に動く物音には気付けた。四葉の気配。あの葉葉葉とやらの気配ではない。元の四葉の気配だった。危険はなさそうだと判断して、そのまま眠りについた。
「っ!!」
翌日、起きると寝床に全裸の四葉がいた。
急いで、自分の状態を確認する。
……問題はないな……。
服も着ずに潜り込んできたようだ。こいつどうやって潜り込んだんだ?
これも魔法か? いくら疲れていたとはいえ、俺に悟られずに潜り込んでくるとは……。
「ふう……」
落ち着いて自分の状態を再度確認する。
随分、体が軽くなった。そして、魔力の操作が幾分スムーズになったような気がする。
そして、思い出す。昨日の風呂での攻防。
最後に放った技をもう一度思い出す。
『砲』
ずっと、なんとなくのイメージはあった。
弾丸の上位互換。
3点に魔力を込めての同時開放。
鰐との戦闘。そして四葉に追い詰められた事によって、段階をすっ飛ばして発動できた。
それについては四葉に感謝しよう。
まあ、でもだ。
「ぎゃん!」
デコピンに力を込めて、四葉を起こす。
「ふぇ!? な、なに? イタタ……。あ。鳩子ちゃんおはよう!」
「……おはよう。とりあえず服を着ろ。」
「ふぇ? え! なんで、裸!?」
「……」
昨日の記憶がないのか? 四葉自身には記憶は共有されていないのか?
「な、なんで? は、鳩子ちゃんなんかしたの……?」
「あ?」
流石に少し怒気がこもる。何かされたのは俺だ。
「ひぅ! ご、ごめん……」
「ああ。いや、すまん。別に四葉が悪いわけじゃないな……」
全てはカルマが悪い。帰ったら特訓だ。
後、九米。というより鳳凰院凶か。あいつは八つ裂きだ。封印装置? 知ったことか。あいつは八つ裂きだ。
「体は大丈夫か?」
「え? あ、うん。別に大丈夫。」
「そうか」
結構吹っ飛ばして、床に落ちたと思ったが……。
そういえば、四葉は魔力が高かったな。
「まあ、いい。服をさっさと着ろ。」
「うん」
四葉が服を探しに行ったのを見送って、俺も立ち上がって浴室前の洗面所に向かう。
そういえば下着を履いてなかった。ついでに顔を洗う。
準備を整えて、四葉に声をかける。
「四葉。俺は今日は学校をサボるぞ。基地に用がある。」
少し情報整理と今後の方針を固めておきたい。
『癒し手』がそもそもの目標だ。
現状、それらしい情報が入っていない。大暮先生の特性は雷。四葉は音と幻惑。
無関係だとは考え難いが、癒し手につながりそうな影が感じられない。
「え! そうなの? そっかー……」
「暇なら一緒にくるか?」
「え?」
「基地に一緒に行くか? 大暮先生が今日はどうするのかはわからんが……」
「いいの?」
「ん? 基地にか? ああ、問題ないな」
もう、大暮先生も行っているのだ。そもそもあの基地は少し特殊だ。
昨日は雑談になったが、今日はなにか情報があるか、四葉からも情報を集める必要があるかもしれない。
……それに、学校に行っても四葉は一人だ。
「そっか♪ じゃあ、一緒に行く!」
そう言って、笑った四葉の顔に昨日の影はない。
「そうか、では行くか」




