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俺、この戦いが終わったら魔法少女になるんだ  作者: 虹ぱぱ
二章:癒し手の魔法少女
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51話:よっつのかお2

『もう……私が、大丈夫だったのはカルマ君が一番分かってるでしょ……?』


 …………。


『ええ……私も……』


 …………。


 殺す。


 人が大変な時に。


 寄越す情報は古い。人が疲れているこの状況下で。浮かれてうっかり。そしていちゃつく。


 あいつらの仲を望んだのは俺だ。


 だが。


 怒りがふつふつと込み上げる。


 映像が途切れる。


 九米がじっとこっちを見下ろす。

 

 あいつだけだ。俺の味方は。海原光明(おれ)をたやすく屠ったあの超生命体。


 今、俺の味方はあいつだけだ。


「僕と契約して、魔法少女に――「いわせねえぇよ!」」


 あの鬱陶しい掛け合いも癒しの音色だ。


「九米」


 俺は九米に声をかけた。とっととこの状況から脱出しなければ。

 

「…………」


 ただじっと状況を見つめる。


 なにか、様子がおかしい?


「おい……九米?」


 すると上にいるカルマ風人形が喋る。


「僕は「僕と契約して、魔法少女に――「いわせねえぇよ! てか、言わせろよ!!」」」


 カルマ風人形(あいつ)……喋れたのか……


 九米が口を『ω』にして噤む。カルマ風人形が口を開く。


「……僕は封印の使徒、鳳凰院凶――「いわせねえぇよ!」」


 九米がツッコム。九米(あいつ)……喋れたのか!! 衝撃だった。


「……じゃあ、僕は鳳凰院凶(ほうおういんきょう)でいいや。なんかちょっとかっこいいし。」


 同じことしか言えない九米と違って、柔軟性があるようだ。


「僕は鳳凰院凶(ほうおういんきょう)。封印の使徒だ。」


「……ああ……」

 俺が答える。

 四葉はただ「はあ、はあ、はあ」している。ただじっと俺の裸を眺めている。ぞわぞわする。


「で、それがなんだ? とっとと助けろ」


「だが、断る!!」


「あ?」

 あいつ、断るとか言ったか?


「だって、僕は続きが見たい」


「あぁ?」


「僕と契約して、魔法少女に――「いわせねえぇよ!」」


「ま、じゃあそうゆう事で。行くぞ、九米」


「ガッテンダー」


 そう言ってどこかへ走り去って行った。


「……あ?」


 訳がわからない。夢か? 九米も喋ったし。


 いや。感じるお湯の熱さは本物だ。


 つまりなんだ。俺は、あの人形と丸いボールに裏切られたのか。あのカルマを模した人形と白いまんじゅうに。


 カルマ。


 カルマ。


 怒りの全て、カルマ。


 カルマ。


「……カルマァァアアア!!」


 九米! お前もか!!


 お前も俺を……。


 クソ! 最悪だ。あいつら。


 あいつら来たのになにも状況が変わらない。


 分かったのは四葉が多重人格。そんな情報がわかったところでクソの役にも立たない。俺の心を折りにきただけだ。


 クソが。


 疲れで、怒りと苛立ちが爆発的に高まる。


「ふひ。ふひひ。なんか知らないけど行っちゃった。やっと二人っきり♪」


「っく!?」


 どうする? どうすればいい!?


 鰐型の魔物との戦闘でも感じなかった焦燥感。


 10歳の少女に貞操を奪われる。


 ありえない。大人の階段昇ったカルマ。かたや犯罪者に成り下がった俺。どんな顔して会えばいいのだ!!


 10歳。あれで10歳。


 妖艶。


 ぴったりと嵌るその言葉。


「はあ……はあ……はあ……♪」


 荒い息遣いすらも艶を帯びる。


 目を見ていると、意識の合間を縫って入り込んでくるもの。


 ドクンと鼓動が鳴る。


 クソが!! ふざけるな!!


 気合いで幻惑を弾き飛ばす。


「はあ……はあ……すごいなー……鳩子ちゃん……素敵……」


 ちょっとづつ、ちょっとづつ、近づいてくる。



次回『52話:よっつのかお3』

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