42話:虎になったチキン 前編
カルマ視点です。久々にコメディ色ましまし。
え? いままでシリアスなんてあったですって?
はっはっは。
表でろやー!
いや。すんませんした。まあ、ほぼふざけてますな。
天狂院カルマ。29歳。年齢がイコール彼女いない歴。
僕は業が深い。故に、業と名付けた。
少女しか愛せない。
つまり。
ロリコン。
だが、『イエス・ロリータ・ノータッチ』。
僕はこれを信条にやってきた紳士だ。
はっはー。盗撮? 覗き?
……あれは、監視だ。断じて、そんな犯罪行為じゃない。
断じて、否だ!!
たまたま。そう偶然、着替えとかが映ったりしちゃうのは仕方ない。
そう、僕は紳士だ。
ゲロインでも、うんちでもない。
紳士だ!!
30歳の童貞になる覚悟もあった。
だけどだ。
だけど、そんなものになりたかったわけじゃない。
断じて、否だ!!
僕は男だ。男なんだ。それをすっかり忘れてふぬけていた。
牙と爪がなければ虎ではないのか。
違う。虎であろうとする、その心が虎で居続けさせてくれるのだ。
とは、言ったものの。
そんな自分の欲望だけで動くことは出来ない。
認めよう。僕は弱虫だ。
だけど、それを言い訳に使うわけじゃなくて、本当にそんな欲望だけで動きたくはなかった。
僕は、僕にこれだけ好意的な視線をくれる少女を、自分の欲望のままに傷つけたくはない。
いや。頭では分かってる。混乱はしているけど、分かってる。
彼女は少女ではない。女性だ。
確かに僕の守備範囲外。でも、僕の視界に入る情報と、頭の中の情報が一致しない。
僕の邪眼が、ゆうきちゃんを少女に変換する。
クソ。混乱する。
冷静になれ。
偉大なハート様の助言を思い出せ。
まずは慣れる。
落ち着こう。ハート様の指令はあるけど、それは二の次だ。
ハート様は偉大だ。元々のレベルが高い。あの方を倒せるのは南斗な聖拳のみだろう。いや。北斗で柔破斬でもいけるか? まあそんな話はどうでもいい。
あのお方の助言で色々気づけたのは事実だ。僕の武器は知性だ。そして白衣。か~ら~の~眼鏡。
僕だって、恋人は欲しい。
僕は間違っているかい? 童貞達よ。我が同胞達よ。
「……ゆうきちゃん。聞いてもいいかい?」
っぐ。駄目だ。目が見れない。汗が噴き出してくる。
「ええ! なんでも聞いてください」
すっごい笑顔。地味少女の笑顔。それそれで、すごい趣があっていい。可愛い。
抱きしめてしまおうか?
いや。そうゆう思考がいけない。慣れるんだ。
「じゃあ、集めた魔力ってどうしたの?」
「ああ。それはここに。」
そう言って、スーツの上着から飴玉サイズの塊のようなものを取り出した。
クソ。僕が混乱する理由の一つだ。地味眼鏡少女の背伸びした感じのスーツ姿。
少女なのに先生。
なんだ。この新しいジャンルは!
ただ惑わされるだけなら、僕も耐えられる。
可愛い少女はいっぱい見てきた。
この好意的な視線。そしてハート様が言ったあの言葉が離れない。
『合法』
合法ロリ!? みんなの憧れ!! クソ。
やっぱ抱きしめるか? いっそ、一旦席を離れて『賢者』になるか?
落ち着け。まずは慣れろ。
そうだ。
頑張れ、俺。
こんなさりげない動作一つで心を乱すな。
意識を無理やり飴玉サイズの魔力玉に向ける。興味あるのは事実だ。
「へえ。すごいな。凝縮されてる……」
意識の引きはがしには成功した。魔力玉から感じる力。濃密に固められたそれは美しかった。
「四葉が魔力を音で集められるようになってからは、それを凝縮して結界で固めました。」
その少し得意げな表情を見て、また揺らぎそうになるが我慢する。
僕は、我慢できる子だ。29年も『ノータッチ』をせずに、生きてこられた紳士だ。
「これをどうやって活用してるの?」
「口内より摂取します」
「え? 食べるの?」
こんな濃い魔力を一気にとれば、おかしくなりそうだ。
「いえ。少し結界を解いて少しづつです。コントロールが必要なので慎重にって感じです。……やってみせましょうか?」
「うん。見てみたい。」
興味が湧いた。魔力を食べるか。そうゆう発想はした事がなかった。
魔力は内から出すか、イメージとして気功みたいに外気を取り込むみたいなイメージしかなかった。
凄く見てみたい。研究者としての僕の顔が自然と出てくる。
「あ……う……」
ゆうきちゃんが目線を逸らす。僕は見たくて逸る気持ちを抑えてじっと見つめながら待つ。
「うぅ……。で、ではいきますね。」
そう言って魔力玉を唇に挟み込む。
少し唇を尖らせて、O型に開いた唇の中に納まる魔力玉。
あれ? なんか。
エロい。
おかしいな。エロくしか見えない。研究者の僕は死んだ。再び悪い僕が出てくる。俺、参上。
デンラ○ナーに乗って、「うん。見てみたい。」と言った過去の僕を殴ってやりたい。
取り返しのつかない失敗だ。
顔を赤く染め、上目遣い。唇に納まる魔力玉は、最早僕に口移しで食べさせる為のサクランボにしかみえない。
サクランボーイにサクランボを食べさせる、少女で眼鏡で先生。
けしからん!! 僕を錯乱させるつもりか!!
クソ。韻を踏んでる場合か僕。
聞こえる音は2つ。
僕の鼓動。うるさいくらいに鳴り響く。まずい。聞かれるかもしれない。そう思うほどにバクバクと鳴る。
それともう一つ。
……ぴちゃ。……ぺちゃ。っという濡れた水音。
エロゲでしか聞いた事のない擬音。
制御して溢れださないようにしている為だろう。頭では理解できるのだ。
時折、吸い出すようにしかめられる顔。唇から魔力玉を舐めとる時に聞こえる水音。
唾液の音。
ぞくぞくと、背筋が震える。
クソ。クソ。クソ!!
なんだこれは!?
拷問だ!!
僕はさり気無さを装って、白衣で股間の紳士を隠す。
見られる訳にはいかないっ!! 僕の股間が、沽券に関わる!!
僕は失敗した!! やはり不自然でも席を離れて、『賢者』にクラスチェンジしてくるんだった!!
だが、この攻撃は『賢者』でもいなせるか!? それほどの!!
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した!
僕は失敗した!
僕は、全てを置いておいてまず先に、タイムマシーンを作るべきだった!!
『デン○イナー』でも『電話レ○ジ』でもなんでもいい!! 僕はそれを作るべきだった!!
世界線でも越えなきゃヤってられない。
そうだ。ヤってやる!!
ヤってやんよ!!
僕は、一生懸命に魔力を吸い出しているゆうきちゃんにふらふらと近づく。
僕の理性? ここにいるのは一匹の虎だ。
虎だ。
虎になるのだ。
次回『43話:虎になったチキン 中編』




