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俺、この戦いが終わったら魔法少女になるんだ  作者: 虹ぱぱ
二章:癒し手の魔法少女
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41話:ホットケーキ

 四葉の手にした料理はホットケーキだ。


 ……甘そうだ。


 シロップにバター。生クリームで盛り付けされている。

 軽く果物が添えてある。


「はい! どうぞ!」

 実に嬉しそうに差し出してくる。


 好意を無下にも出来ないか。


「……ありがとう。いただきます」


 両手を合わせて、いただくことにする。四葉も食べ始める。


 ナイフで切りだし、欠片を口に入れる。

 

 やはり甘い。


 だが、口当たりがふわりとしてバターの風味が広がる。


「……どう?」


 四葉が上目遣いで聞いてくる。


「ああ。うまいよ」

 正直に答える。甘いが上手い。


 海原光明の時と味覚が随分違う気もする。


「でしょう!? よかった!」

 そう言って、四葉も嬉しそうに続きを頬張っていく。


「よく作るのか?」


「ん? うん。先生も甘いの好きだし。……お母さんも……」

 何気ない会話のつもりだったが、なにか思い出させたようだ。


「……すまんな……」

 この辺りの配慮の仕方がわからない。少女と接する機会はほとんどなかった。


 

「……ははっ」


「ん? どうしたの?」


「ああ。いや、すまない。少し思い出してな。」

 配慮の仕方、接する方法がわからないか。さっきのカルマを思い出して、少しだけ、ほんの少しだけだが気持ちが理解できた。


「カルマの事を大暮先生から多少は聞いてるのか?」


「え? 天狂院さん? うん。聞いてるよ。」


「そうか。そいつの事でちょっと思い出してな。」


「……そうなんだ。そうだ。鳩子ちゃんと天狂院さんってどんな関係? あの人が言ってた大切な人?」


「あ? いや。違う。あんなのに惚れるのはよほどの物好きだ。あいつはそもそも36歳じゃない。大暮先生と同じ歳だ。」


「物好きか……。あー。まあ確かに。」


 まあ誰を思い浮かべてるのかは大体想像がつく。


「まあ、大暮先生には悪いが、あれはない」


「ふひひ! 先生にはね。けど、先生の話だとすっごいかっこよかったけどなー。」


「地下帝国から逃げ出した時の話か?」


「うん。そう。その時の話。同じ『地底人』だけど魔力が弱くても、勇敢だったって。」


 ん?


「同じ『地底人』?」


「え? 先生がそう言ってたよ? 違うの?」


 ……あー。まあ、あまりカルマの情報は持ってない。

 ありえなくはないのか。むしろ、地下帝国の存在に気付けている時点で、地底人であった方が自然か。

 どこの国にも反対勢力と言うのはいる。例え、平和な国であったとしても。そういった存在か。『機関』は。まあ、詳しい話はいつか聞けばいい。


「でも、良かった!」


「ん? 何がだ?」


「天狂院さんが鳩子ちゃんの大切な人じゃなくて! だって、天狂院さんは先生の王子様なんだから。」


「……王子様ね……」

 あれが、か……。失礼だが、大暮先生の眼は節穴だと思う。


「どういった経緯でカルマに惚れたんだ? なにか知ってるか?」


「うん。聞いてるよ」

 にぱっとして答えてくれる。


「えっとねー。教えてくれたのは、私の力が暴走して、先生に見つけてもらってからかな。暫くはやっぱり落ち込んでて……。その時に色々教えてくれたの。」


「……」


「あ。気にしないでね? まだつらいけど、今は寂しくはないから。……今の方が寂しくないくらいかな。」


「?」


 気になる言い方だ。


「でね、信じられないような先生の生い立ちや、魔法について。それと、先生が頑張れる理由。それが王子様。」


 気になったところを問う前に、四葉が続けたので聴き手に回る。


「逃げてた人は先生以外にも何人かいたんだって。地下帝国からあてもなく逃げ回ってる時に、追手に見つかったんだって。その時に助けてくれたのが天狂院さんだって言ってたよ」


「どんな風に助けたんだ?」


「んー。追手に追われて、『機関』の人が助けに来てくれたんだって。で、逃げてる最中に先導してくれてる人とはぐれちゃって。途中で転んだらしいよ? 先生らしいよね。追われながら一人で逃げてたらしいよ。それで、もう駄目だ! って思った時に、戻ってきて手を引いてくれたのが天狂院さんなんだって。」


「へえ」

 あいつにも男らしいとこがあるじゃないか。


 小学生の着替えをオーバーテクノロジーを駆使して、観るただの犯罪者にしか見えないが。

 あいつに記憶がないのが残念だ。


 そんなに男らしい所があるならあんなに歪まなかっただろう。


「手を引かれて、追手を撒くために物陰に隠れたんだって。で、その時に先生は壁を背にして、天狂院さんが壁に手をついて、体の影に隠されて。天狂院さんの胸に顔を埋めてる時に、「こんな状況だけど、人生で一番ドキドキした!」って言ってたよ。心臓の音で見つかるって。」


「なるほど。……吊橋効果か。」

 有名な心理現象だ。戦場にいれば似たような体験は何度か経験する。


 それに、カルマが男らしさを見せたのも事実だろう。

 

 逆に惚れた理由がしっかりあって驚いたくらいだ。

 大暮先生の眼が節穴とか言った前言は撤回しよう。


 今のカルマしか知らない、俺には言えた事ではない。

 

 現在しか知らないと、やっぱりあいつはあり得ないのだが。


「だから、王子様か……」


「うん! だから、鳩子ちゃんの好きな人が天狂院さんじゃなくて良かった。」

 そう言って、笑った。


 認識が今まで出来なかった所為か、もっと暗い娘だと思っていた。

 四葉は笑顔がよく似合う。





次回『42話:虎になったチキン 前編』


間話じゃなくてカルマサイドの視点を話数に入れます。もしかしたら編集するかもしれないですが。思う所あって一応。

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