3話:はじめてのお着替え
「っ!!?」
背筋に名状しがたい悪寒を感じて跳ね起きた。
辺りを見る。どこだ?ここは?
「やあ。起きたかい?」
声が聞こえた瞬間に背後にいた男の背後に跳躍して回り込み、首に爪を突き立てていた。
「おおっと。待ってよ。僕が死んだら君も死ぬよ?」
男が何か言っている。それよりも。ドクドクと心臓が鳴る。自身の異変に気が付いたのだ。
男に突き立てているこの腕は、、、誰の腕だ?
白磁の肌の細い…………少女のような腕だ。……我が意で動く。動かせる。
「君も状況知りたいだろうしさ。落ち着いて座ってよ」
混乱する。だが更に爪を男の首に食い込ませ問う。
「お前は誰だ?」
一つ一つ聞いていく。一度に質問しても相手が混乱するだけだ。耳に入る少女のような声のことは今は考えないようにする。
「おっと。怖いな。スペードも落ち着いて。大丈夫だって」
男の言葉で気が付いた。俺の背後から心臓を一突き出来る位置を剣で突きつけられていた。
不覚だ。混乱していたとはいえ、まったく気付けなかった。他にも人がいる気配を感じ取れなかった。
「まずは座ってよ。質問には答えるからさ。」
っち。このまま意地を張っても膠着するだけだ。
俺は男の首から手を離して近くの椅子に座った。
周囲から集められる情報を集めておく。
診療室のような場所だ。男ともう一人。俺の背後から剣を突きつけていたのは……黒に近い深い色の紫。そんな印象のロングヘアの少女だった。
こんな少女に遅れをとるとは……。しかし、少女と侮ってはいけない。佇まいで分かる。少女自身の技量が優れているのだ。
……それよりも。この少女どこかで……?
記憶を漁るが見たことはない。だが確かにどこかで会ったような……。
そして、俺自身の体だ。手足や胸。視界に入る、それらは少女の裸そのものだった。首に違和感がある。首輪……か?
「そうそう。ではまずは自己紹介からね。」
男はくるりとこっちを振り向こうとする。スペードと呼ばれた少女は男を蹴りつけた。
「ぶべらぁ」
「まずは着替えです。このゴミムシ……いえ、マスター」
そう言ってスペードは俺に服を渡してくれた。
……何だ?このハイカラな服は?
「おい! なんだこれは?」
「服です。そこのゴミ……マスターに視姦されない為にも早く着てください。……視姦に関しては手遅れですが。」
「しかし」
「それとも裸族ですか? 他人のいる、、、特に重度の疾患『ロリコン』を患ったマスターのいるこの空間で、それはあまりお勧めしませんが。」
っぐ……。確かに視界に映る体は少女のものだ。裸にを見られた程度で羞恥を感じるような歳ではないが……。何故か恥ずかしいと思っている自分もいる。なんだこれは……。
仕方がないので着替えを行う。小さなショーツに足を通すのはかなり躊躇われたが。
「うぇっうぇっうぇっ。後で録画した羞恥に染まる少女の生着替えシーンを堪能させてもらおうじゃないか。題して『はじめてのお着替え』」
「録画装置はここに来る前に破壊しました。」
スペードが答える。
「……ぇ? ……ぅおおおう! なんで! なんでそんなことするの!?」
「ゴミ・・・犯罪だろうが? ぁあ?」
スペードが凄む。歴戦の戦士である俺もこれ程の殺気を漲らせる戦士は数えるほどしか出会ったことがなかった。
「……はい。……すいませんでした……。つい出来心で……」
しゅんとして男が答える。
「まあいいか。さっきベットで寝る、首輪だけした全裸の少女を脳内メモリにインプットしたし。」
目覚める前に感じた悪寒はそれが原因か。
「おい。いい加減にしろ。」
俺が会話に割り込む。
「お前は誰だ?」
大体予想は出来ているが聞く。
「僕は天凶院カルマ。狂気の科学者さ!! つまり君達の捕縛目標。」
にちゃりと汚い笑みを浮かべて言った。
次回『4話:状況1』




