33話:魔力と間欠泉と特異点2
彼女は元々、普通の生徒でした。
それまでは極めて普通に過ごしていました。
目立たない、ですが不思議と三堂さん達と一緒にいました。確かに、知り合っていくと変わった子なんですけどね。現在はグループで「一二三」と言われているみたいですが、最初は「四葉クローバー」って4人で呼ばれていました。表のボスは三堂さん。けど、裏のボスは四葉ってイメージだったみたいです。まあ、私も後で四葉に聞いた話ですが。
そして彼女は、ある日目覚めた。魔法に。
この場所は、魔力の影響を非常に受けやすい。四葉自身、素養が強かった高かったのでしょう。
記憶や視覚といったものに作用する魔法が非常に強力でした。
カルマ君はもう想像できているかもしれませんね。
地上の人は魔法なんて知りません。
使い方の知らない、四葉の力は暴走しました。
他人の四葉自身の存在そのものの記憶を消し去りました。
そして目にも映らない、ゴースト。
彼女は完全な孤独になりました。
誰にも気付いてもらえない。
クラスメイト。友達。そして、親にも。
当然、私も影響を受けました。彼女の存在を認識できなくなりました。存在自体も忘れ去りました。自分の受け持つ教室の生徒を。
私は、結界を張って、間欠泉から魔力の向上、そして湧き出てくる魔物の討伐。そして教師としての日常を過ごしていました。
え? どうやって教師になれたのかですか?
あはは……。簡潔に言うと、雷……電気って結構便利なんですよ? 今の世の中は特に。
それは置いておいて。
それで当時、噂が広がりました。学校の7不思議。まあ、どこにでもあるような噂です。
ただ、噂の広まり方が異常でした。流行りはあるのでしょうが、違和感がありました。
だから調べることにしたんです。念の為に。
もしかしたら、間欠泉から吹き出した魔物が潜んでいるんではないかと。
一つ、一つ噂を検証していきました。
噂はハズレばっかりだったんです。だから杞憂かなって思っていたんです。
ですが、『誰もいないの音楽室』の噂。誰もいない、音楽室から音楽が聞こえるっていう噂です。
聞こえる音楽は多種多様。ピアノからヴァイオリン。その他にも色々。
その噂を検証する為にも、受け持つ授業がない時間に何度か足を運んだり、夜に見回りしたりしていたんです。
そうして、噂通りの現象に出会いました。
誰もいない教室。そこから音楽が聞こえてくるんです。
中を見ても誰もいない。流石に少し、怖くなりました。
いままで、出会った間欠泉の魔物は直接的というか、こんな不可解な現象は起こしませんから。
けど、調べない訳にもいきません。なので、教室に入りました。
音の出処を探って、何もない空間から聞こえてくる事に気付いた私は、そこに『雷針』を投げました。
そして、出てきたのが気を失った、四葉。
当時の私から見ると、全く知らない少女が突然現れたように思いました。
そして、捕縛して話を聞くことにしました。
彼女に抱いた最初の感情は不審。だって、私の記憶にないのに知っているって言うんですから。
先生って。大暮先生って。
音楽を流していたのも、誰かに気付いてもらえるかも知れないと必死にやっていたようです。気付かれる事なく噂話を集めて、音楽室の7不思議は自分の事だってわかったみたいで。
まあ最初は音楽が元々好きで、気を紛らわせるのも半分あったらしいですが。
話を聞くうちに、大暮先生って泣きながら。
とても嘘を言っているようには見えなかった。
だから、きちんと調べてみる事にしたんです。彼女の身に起こっていることを。
正直、四葉の魔法は変わった系統でしたので戸惑いました。2人で過ごしながら少しづつ、調べていきました。
記憶や視覚に作用する魔法。そう、断定しました。
地上で発現した特異点だから、少し特殊なのかも?
なるほど。流石、カルマ君ですね!
だ、大丈夫ですか? ずいぶん顔色が、赤いですけど?
え? ほっといて大丈夫? いや、でも。
か、可愛いから? 私が? え? あ。 う。
ひゃひゃい! 明心さん! 私は見つめあってなんて!?
うっ。そうですね。話を進めましょう。
とにかく、断定してからは能力のコントロールを覚えるように指導を行いました。
彼女は戸惑いながらも、確実に上達していきました。
けど、彼女の存在を回復させるには至っていません。
視覚に現れる事は、可能なんです。
記憶の修復ができません。だから、彼女はいまだに隠れて過ごしているんです。
誰も知らない人がうろついてても不審なだけですから……。
記憶が戻せなければ、家に帰ることも……。
それから、私の間欠泉の魔物退治のサポートをお願いするようになって、一緒に訓練をするようになりました。
次回『34話:魔力と間欠泉と特異点3 そして戦闘開始』




