2話:勝手に改造
海原 光明
それが俺の本当の名前だった。職業は軍人。
『世界最強の戦士』。
いつしかそんな誉れを賜った。
人を殺して誉れとなる唯一の職業だ。気が付けばそんなクソみたいな名で俺は語られるようになっていた。
コードネームは『O3』。
相棒にコードネームを尋ねられた。名前から付けた。
海原からOceanの『O』を。光明から『3』を連想して付けた。
司令塔にまで登り詰めた相棒からは『O3』と呼ばれていたが。
ひどい呼び方だ。何度、殴り合ったかわからない。人が一生懸命考えたコードネームなのに。
今回の目標はこの地下基地に潜む、狂科学者の捕縛及び施設、資料の制圧。
目的は知らされていない。命令があればそれで十分だ。
そのような事を無意識で喋らされていた。
「ふむふむ。まあ目的は僕の研究だろうねぇ」
その男は呟いた。髪はぼさぼさ。よれたジーンズにくたびれたTシャツ。胸には『障害一炉利魂!』の文字。上から白衣を纏っている。
「もう少し、余裕があるかと思ったけど思ったよりも進入されちゃったなぁ」
ボリボリと頭を掻きつつ男は続ける。
「もう少しテストしてみてもいいけど……。理想としては美人のクーデレ女軍人の方が萌えるんだけど……」
『DR胡椒』と書かれた狂喜の清涼飲料水を片手に啜りながら、培養液の中にいる左腕と両足のない屈強そうな男を見やる。
「あそこまで進入できる優秀な検体はまず現れないだろうからねぇ。まあ理想通りにはいかないか。」
カタカタとキーボードで操作を行いながら続ける。
「問題は男でおっさん。僕の嫌いなものワースト3に入る人種だって事だけど……。まあ中身はそんなに気にならなくなるかな。最悪、僕の記憶消せばいいし。」
O3と呼ばれた男の横から新たな培養カプセルが突き出してきた。
中には薄い桃色の髪をした白磁の肌を持つ少女。
「何度見ても、、、僕の創ったハートちゃんは素敵だ!絶対に中身がなんであっても萌えるね!」
ウィーンと男の前に真っ赤な一つのボタンが出現した。
「さあ。新たな歴史の始まりだ! 私は創造せし、来る新世界の神となる!!」
勢いよく拳を掲げ、振り下ろした。
「ぽちっとな」
真っ赤なボタンは押され『改造』が始まった。
障害一炉利魂の漢字はごばった訳じゃありません。生涯ではなくて障害だとわざとつけてます。
次回『3話:はじめてのお着替え』
ぽろりもあry