23話:VS 女教師
「明心さん? いきなり、危ないですね! HRが――」
問答無用。
蹴り出した足を引き、次の動作に繋げる。
こんな校舎裏に偶然いるわけがない。
普通の教師が、俺の不意打ちを難なくかわせるわけがない。
繰り出す手刀。
大暮担任教諭はその手刀を避ける。
だが、手刀はフェイント。
足に力を込め、体を軸にして掴みにかかる。
相手の袖口に触れた瞬間に、手首を掴み、極めにかかる。
大暮担任教諭が力を込めて抗おうとする瞬間に、相手の力を利用し、半身回転。後ろへと回り込み飛び膝を頚椎の部位に叩き込む――。
ばちっ
「ちっ」
そんな音と共に弾かれる。
手を離し、距離をとる。
今の攻撃は、見えていなかっただろう。消えたように感じたはずだ。それを、防がれた。
不自然な理で。
感覚的に、直感的に、分かる。
魔法だ。
視野を拡げる。周りを認識する。
まず、あの名も分からない少女を確認する。
まだ逃げていない。あいつは状況が飲み込めていない。雰囲気でそう判断する。
逃げ出さないように、そちらも意識しながら大暮担任教諭に対峙する。
こいつらは間違いなく仲間だ。
あまりにタイミングが良すぎる。少女が態勢を崩して膝をつく大暮担任教諭を心配している様からもそれが伺える。
意識を指先に集める。
集中。
――集中。
変身をしなければ、まともに魔法は使えない。
だが、軽度の魔法を扱えるように訓練した。最近の基地に戻ってからの日課だ。
少しづつ、出来ることが増えている。
今の俺は魔法少女になれば、武器の形態「Ⅴ」までの変形が可能になった。
大暮担任教諭と今、問答する意味はない。
捕まえてから聞けばいい。
大暮担任教諭に物理的な攻撃を弾かれた。
原理はわからん。が、それを貫くイメージ。
一点を集中し、打ち抜くイメージ。
指先に魔力を集中する。
『弾丸』
ただの刺突だがそう名付けた。
変身前のこの体でも、鉄板程度は軽く撃ち抜く。
威力は落ちるが、臨機応変に貯めた魔力を打ち出すことも可能だ。簡易だが、使い勝手がいい。修練を積めば、息をするように当たり前に扱える感触がある。名付けた理由は他にも発展性がある気がするのだ。
大暮担任教諭の一挙手一投足の挙動を注意深く観察する。
意識を一瞬で刈り取れる部位を狙い定める。
そして、大暮担任教諭が消えた。
「クソ!」
横に跳ぶ。勘だ。
俺が居た場所に拳を放つ、大暮担任教諭を確認する。
意識が逸らされた。観察していたのに、意識の外側に持っていかれた。
あの少女だ。思った以上に厄介な術だ。
追撃を避ける為に、指先の魔力を大暮担任教諭に向けて放つ。
「弾丸!!」
「!!」
ばちっという弾かれる。やはり、威力が下がる。
だが、追撃はない。距離を開く。
「……魔法……。貴方、やはり地下帝国の……」
大暮担任教諭から呟きがもれる。
そして、爆発的に高まる重圧。
今の俺なら感じ取れる。魔力が大暮担任教諭に集まっていく。
「おい! こんな所でやる気か!?」
流石に、目立ちすぎる。魔法による派手な攻防戦は。
「……問題ありません。この校舎裏の人払いと結界は既に起動しています。」
「ちっ」
呟きを聞く限り、地下帝国側の人間ではなさそうな気もする。判断するには材料が少ないが。
誤解を解くにも時間がない。
隙を見せた時点で、襲い掛ってくるだろう。
流石に、生身で相手にするには厳しい。今のままじゃ、あいつの魔力の壁を突破する術がない。
「――九米!!」
大暮担任教諭から視線を逸らさずに、俺が叫ぶ。
空から降ってくる白く丸い物体。その上に乗ったカルマを模した小型の人形。
「僕と契約して、魔法少女に――「いわせねえぇよ!」」
そんなやり取りをしながら空から降ってくる。
気にせず、腕を掲げて叫ぶ。
「起動! 転送!」
手の中に生まれる光を掴み、叫ぶ
「換装!!」
光が、杖に変わる。
杖を頭上に掲げたまま、円を描く。
そこに魔方陣が浮かび上がった。
「我、闇を撃ち抜く光とならん!」
魔方陣が俺のの頭上より落ちていく。
俺を包み込んでいく。
光に包まれながら俺が変身を遂げていく。
杖が銃へと変わる。
くるりと回って、銃を構えた。
「魔法少女キルマ☆カルマ! ハート推参!」
ひっさびさの変身回。
変身シーン最後に書いたの9話。
次回『24話:魔力値と魅惑値』




