20話:麗葉ちゃんと愉快な仲間たち2
「……男の事なら……わかる?」
「ん? ああ」
俺は、元々男だ。わからないわけがない。
……そうだな。こうゆう山堂麗葉みたいな子供らしいやつを知るのもいいかもしれない。
いつか明とコミュニケーションをとる時の指針になるかもしれない。
明はちょっと変わってるからな。山堂麗葉の嫌がらせも鬱陶しいのは確かだ。これを機に付き合い方を変えてもいいかもしれない。
所詮、朝の張り込みは惰性になりつつある。ちょっと、違うことをしてみてもいいかもしれない。
「ふむ、山堂麗葉。男について、わからないなら俺に聞くといい。」
「うえぇ?」
「男の事なら、大体わかる。気持ちや、体の仕組みについてもな。」
「か、体!?」
「別に、勇者の事をどうこう思っているわけじゃない。子供だしな」
俺は、カルマや明の妄想の中にいるような残念な性癖ではない。子供で、男の勇者に情動は感じない。
「が、子供……。それって、つまり大人にしか……」
「ああ。大人(の女)にしか興味はないな。」
「「「「!!」」」」
取り巻きを含めた4人が息を飲む。
「俺達は出会いが悪かったのだ。ボタンのかけ間違いだ。俺達は、決して勇者を取り合うライバルにはなりえない」
「……え?」
「さっきも言ったが、俺は子供に興味がない。ただ、俺もつい大人気なかったが、覚えておくといい。人に対して、何かをするのなら、何かをされる覚悟が必要だ。人を呪わば穴二つ、だ。」
「…………」
「俺も悪かったのだろう。すまなかった。」
「「「「…………」」」」
全員が沈黙し、思考する。
俺も暫く、待つ。
やがて、一人がおずおずと口を開く。
「あの……麗葉ちゃん?やっぱり、明心は悪い子じゃないんだよ。だから、もうああゆう事は……ね?」
この娘はグループの唯一の良心だ。その良心が効いているとは思えないが、暴走気味の山堂麗葉を止めようとはしてくれている。他の二人は山堂麗葉を同調し、煽るのが役目だ。その中で、止められないとはいえ、角も立てず、あまり目立たない存在だ。
存在感が希薄なやつというのは警戒してしまう。それゆえに、俺はこの娘を特に注意深く視ていた。
この娘の名前は……なんだったか……。ド忘れしてしまった。注意はしていたが、話した事もない。
上等な暗殺者というものは、存在感が希薄なものだ。内に秘めるのだ。
一般人に紛れて、さりげない動作で息するように当たり前に、殺す。
いくら屈強でも急所に受ける一撃は致命となる。
ゆえに、警戒する。
まあ、こんな子供に何を警戒しているんだと思うが。
身に染み付いた『常在戦場』の心構えは抜けるものではない。これからも、『地下帝国』とやり合う事になるのだ。心構えを変える気もないが。
「…………わかりましたわ。私も、突っ走りすぎた気がします。謝罪しますわ」
若干、尊大な態度だが謝罪するとは思っていなかった。
やっぱり、子供らしい、正直なやつだ。
「ああ。謝罪を受け入れよう」
「ええ。ありがとうございます。…………た、ただし!」
顔を真っ赤にしながら、続ける。
「いくつか聞きたいことがございますわ!」
「ん? なんだ?」
「「「「明心さんは、付き合ってる人がいるの!?」」」」
4人が鼻息を荒くしながら聞いてきた。
次回『21話:麗葉ちゃんと愉快な仲間たち3 そしてチェイス』




