15.5話 カルマ編:賢者
読まなくても大丈夫な回。パート2。
カルマのネガティブキャンペーン。下ネタもあるヨ。
どふっっと自室のベッドにダイブした。
「………………っかれたー………………」
流石に疲労が濃い。
ずっと、スペードを救うのに集中していた。
ようやく落ち着いた。
しかし本当に危なかった。
心臓が破損している。
ハートちゃんにはこれが原因だと言ったけど。
これくらいの事ならば、まだ手はあった。
だが、スペードを撃ったあの魔女は周到だった。
心臓にかかる呪い。
これが極めて厄介だった。
彼女にこの辺りを説明するのは困難だった。
彼女は魔法に関して素人だ。
僕やスペードの様に魔法に触れて、過ごしてきた訳ではない。
だから難しくて、そして億劫だった。
どのみち助からない。その事実があの時はあった。
そんな事実の前に、僕は無力で、憔悴していた。正直、疲れていた。
彼女に、長々と魔法という知識を交えて話をする気力はなかった。
だから原因だけを簡潔に伝えた。
心臓。
あの魔女のかけた呪い。
あのまま、ただ癒せばスペードは変貌しただろう。
魔女化するか失敗作に堕ちるか。
魔女化するなら最悪まだ良い。
この場所が受ける被害は甚大で、僕らは全滅するケースもある。ハートちゃんはまだ弱い。
けど、スペードを救う可能性が1%でも残る。
昔の僕は。
魔法少女を救えなかった。
夢と希望に溢れて、笑顔に花咲く彼女達を。
打てる手は全て打ったと、自信を持って言える。
だけど。救えなかった。
殺したのはスペードの母らしい。
そして海原光明の妻。
殺してやりたい気持ちはある。
目の前にしたら、許せないだろう。
けど、彼女は被害者だ。拉致され、いいようにされている地下帝国の駒。
理由がわかっているから、僕の魔法少女の仇である女の肉親である、スペードにも、ハートちゃんにも思う所はない。全くとは言わないけれど。
アメルという女は理由はどうあれ、まだ許せそうにないが。
だから、スペード生存する確率が1%でも残るなら賭けてみても良かった。
魔女化に成功して修復されるスペード、そしてハートちゃんがスペードを捕縛、僕が魔女化を強制解除。
成功確率は1%をきるかもしれないけど、可能性はあった。
けど、失敗作に堕ちた場合の可能性。
それが、恐ろしかった。
堕ちた場合、可能性は潰える。僕がその可能性を潰えさす。そして、スペードをあの醜悪な姿にしてから、殺さなくてはならない。
だから決断できなかった。前に進めなかった。
あの魔女。スペードを撃ったあの魔女。
あいつは悪質だ。
ただ撃っただけじゃなくて、実験に使った。呪いの。
魔女の特性『呪い』
それだけでも厄介。
それだけじゃない。幹部クラスは化物だ。勝てる見通しがまだ立たない。
いや。少し、光が見えた。
ハートちゃん。
彼女は、感情に任せてこじ開けようとした。
ジョーカーへの扉を。
けど、今はまだ駄目だ。
ジャック、クイーン、キングも、もう一度封印する必要もあるだろう。
まだ使ってはいけない。
あの力は諸刃。彼女自身にも、世界にとっても。
…………でも、彼女には必要な力。さて…………どうしようか。
そしてもう一つ。
スペード。
『誘導』。
思った以上の特性だ。
僕はこの力を事象の方向性を誘導するものだと思っていた。
例えば、通常では不可逆のもの、川の流れを逆流させるとか。
そんな感じだと分析していた。
この分析も間違いじゃない。そうゆう側面も確かにある。
けど、それだけじゃない。
この広い世界で天文学的な数値の確率を結びつけた。
因果律の高い肉親ではあっても。見事に『誘導』して、点から線にしてみせた。
自身の死を見事に回避した。
呪いにまみれた心臓を捨て、海原氏の心臓によって生きながらえた。
目覚めはしない。確かに、目覚めない。自然に起きることは出来ないだろう。
けど、これは――――。
誘導はスペードが意識したことではないだろう。
だが、そこもまた素晴らしい。意識して出来るようになった時、どんな奇跡を起こせるのだろう。
もしかしたら僕を結ぶことだって。
あの、地下帝国の奥深く。僕の目的。いつか。
ひどく自分勝手で打算的だな。僕は。
スペードをなんとか死なさずに済んだ事。
それだけを喜ぶんじゃなくて、そんな事をつらつらと考えてしまう。
今日はもうよそう。
もっと別の事を考えよう。
明日から本気出す。今日はもう無理。悪いことばっか考えちゃう。
さて。何を考えようか。
そうだ。
ハートちゃん。
あの笑顔はやばかった。
ハートちゃんは僕の理想で創った。
「ありがとう。カルマ。」
そう言って、微笑んだ彼女。不覚にも泣きそうになった。
心臓を鷲掴みにされた気分だった。
だって僕の――――
ダメ、ダメ。今日はそれは考えない。
ときめいた理由は他にもある。
まず名前で呼ばれた。カルマと呼んだ。
それとスペードも含めて、みんな僕をゴミクズみたいに扱うからなー。
幼女、少女を愛でるのは男の性なのに。
あんなストレートにお礼を言われる経験はほとんどなかった。
キュンとした。
思い出すとハァハァしてくる。
あ。やばい。
なんか、ちょっと……。
ムクムクと湧き上がってくる欲求。
ムクムクと起き上がってくる股間の紳士。
股間の紳士が。
暴れる。
「ハァハァ(*´д`*)ハァハァ」
紳士がクレーマーだ。
超モンスターペアレントだ。
悪いことばっか考えちゃう。
疲れてるのにな〜。
致し方あるまい。
右手を掲げ、
「我、英知の扉を開き、賢者とならん――――」
股間に――――
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「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ………………うっ」
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――
「最低だ、俺って……」
事が済んで、賢者になった僕はお約束を口にした。
最後のお約束わかんない人は、昔のエヴァの劇場版を見るとよいです。新劇場版じゃないよ。Airでまごころを、君にくれるやつです。古いな。
ちょっちひどいネタなんで補足。下ネタすぎたんで。
どのあたりが下ネタにあたるのか、わからない君はそのままで問題ない。
ずっと綺麗なままの君でいてください。