14話:君の所為ではない
「や」
座り込んでた俺に、天凶院が声をかけてくる。
疲れてはいるが表情はまだ明るい。
「…………どうなった?」
無論、明の事だ。
「うん。なんとか一命はとりとめたよ。」
「…………っ」
泣き出しそうになる自分をなんとか堪える。
「ありが……とう」
搾り出すように伝える。
「はっはー。動いてるハートちゃんにお礼言われるとか。感慨深いね。」
疲れているのだろう。キレがない。
「ただね。問題もある」
「………………」
無言で先を促す。
「一命をとりとめたってだけだ。このままじゃ目覚めない。」
「なっ!?」
「あくまで応急処置にしかならなかった。死んではいない。けど、目覚めない。」
カッとなる自分を抑える。
俺は、この男の決意の顔を見た。
今度こそ、絶対に救ってみせると。
黙って続きを聞く。
「そこで、君に話したもう一つの手が必要になる。」
「…………癒し手か」
「そう。探し出さなきゃいけない。幸い、海原氏の心臓で時間は出来た。」
「そうか……。分かった。俺はどうすればいい?」
「もちろん、癒し手になる魔法少女を探してもらう。」
だけどと続ける。
「それはまた今度にしよう。今日はもう疲れた。」
致し方ないことだろう。俺の現実では、明の傷は助からなかった。
心臓があっても。それほどの。
「ああ。どんな手段を使っても見付けてみせよう」
「じゃあ、はい。」
そう言って、カードを一枚寄越す。
「スペードの部屋のキー。その部屋でスペードも寝かしてある。今は話を聞く気分じゃないけど、娘なんでしょ?見ときなよ。」
「…………ああ。感謝する。」
「…………柄じゃないけどさ。今回のは君の所為ではないよ。」
「…………はっ」
俺の選択が招いた結果だ。思わず乾いた声が出る。
「確信を持って、言える。君の所為ではない。」
真っ直ぐに言ってくる。少しだけ興味が湧いた。
「………………」
「僕の魔法少女は現在、スペード一人だけだった。だから、急いで君らを罠に嵌めたんだけど。まあ、それは今はいいか。つまり一人だった。」
「………………」
「遅かれ、早かれ、今日みたいになっていた可能性は高いんだ。その時にスペードしかいなかった場合、どうなると思う?」
ぞっとする。俺は娘の存在を知ることなく、娘は死ぬことになる。
「分かったかい? 運命とか確率を操作できるとは思っていなかったけど。スペードの『誘導』は君を引き寄せた。存在自体知らない父親を。」
魔法。
俺は知らなすぎる。
「正直にいうと『誘導』はまだ解析できてない。もっと違う力だと思っていたんだ。けど、これだって分かった。僕は最狂で最高の科学者だ。自分の直感を信じてる。」
だから。
「君の所為ではない。」
なんとも、あやふや。
だけど。
「気休めにはなった。」
信用していい相手ではない。
だけど。
「ありがとう。カルマ。」
俺は神よりもこいつを信じたのだ。
誠意と親愛を持って答えよう。
俺は笑顔で返答できた。
「………………っ!!」
カルマが真っ赤になった。
「じゃ、じゃあ僕は行くよ!」
そそくさと逃げるように行ってしまった。
「あ。おい………………」
ったく。明の部屋はどこだ。
俺は明の部屋を探して、歩き出す。
カルマルートに突入です。攻略難易度の設定は激甘です。ハイパーチョロインです。
まあ冗談ですよ?たぶん。
次回『15話:覚悟』