13話:悪魔に祈る魔法少女
俺は放心したように座り込んでいた。
眺めるのは扉。
祈る。
神に祈った事などなかった
祈る。
扉が開く。
そこには憔悴した天凶院がいた。
天凶院の顔を見て心を絶望が染め上げていく。
「………………血は止めた。傷も塞げるものは塞いだ。…………けど、良くて今日一日だ」
何が、一日なのだろう。
分かっている。明の命がだ。
いくつもの死を見てきた。
「………………手は二つある…………」
俺はその言葉で再び天凶院を見る。
「一つは魔法の癒し手を―――」
「それはどこにいる!!」
「わからないよ。探している時間もない。」
クソ。こいつが悪いわけではない。
が、殴り飛ばしてしまいそうになる。
手があると言ったじゃないかと。
俺が。あの時に。選択を間違えなければ。
後悔。思考を黒が染め上げていく。
「彼女の傷でまずいのが心臓。心臓を移植すれば、助かるかもしれない。けど…………」
これも時間がない。そんなものは探していられない。適合する心臓など。
ない。
ない?
―――――光が見えた。
ああ。だがしかし。
なにかが嵌る音がした。
「……スペードの血液型は?」
「…………A型の+だよ」
一致する。形になった。
魔法か。
奇跡を起こす法。
「俺の、海原光明の心臓は――」
「はは。何を言いたいかわかるけど。無理だよ。君の体の臓器は生きてるけど。血型あったくらいじゃ―――」
「スペードは。明は、海原光明の娘だ。」
「………………は? え? いやいやいや。流石にそんな偶然―――」
「………………」
俺の真剣な顔をじっと見る。
「え? マジなの? でも、そんな確率…………」
そこではっと気付いたようだ。
「『誘導』! そうか! そうゆうことか!! すごい! やっぱり魔法は最高だ!!」
天凶院が端末から情報を引き出して見ている。
「あははははは!! 本当だ! DNAが一致する!! すごい! これなら!」
そのまま駆け出していく天凶院に声をかける。
「天凶院! どうか頼む……いや。どうか、お願いします」
「はっはー。みなぎってきたー! 任せてよ。僕は狂気に染まった魔法少女の騎士さ! 絶対に救ってみせる。――――今度こそ、絶対に!!!」
決意を宿した顔で去っていく天凶院を眺める。
俺は何もできない。
なんと、無力なのだろう。
ただ祈る。
どうか。どうか。
神には祈らない。
戦場で神が俺を救ったことはない。
無慈悲で残酷。
それが世界。
どうか、助けてください。
俺は祈る。
天凶院に。
18:00に間話「13.5話:呪い」入れます。読まんでもいい程度の補足。気持ちいい内容でもないので。
そして明日。2014/10/28 10:00
次回『13.5話:呪い』
次々回『14話:君の所為ではない』