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女友達からのメール

作者: 陸 理明

 女友達からスマホにメールが来た。

 俺にとっては一番仲のいい異性の友達だ。

 内容は、『最近どう? うまくやってる?』と素っ気ないご機嫌伺いレベルのつまんないものだった。

 だが、普段はこんなメールを出す奴ではないし、出すとしたらもう少し長くだらだらとしたものを寄越すだろう。

 あいつの考えなど手に取るようにわかる。

 少し考えてから俺は、


『結婚でも決まったか、おめでとう』

『いい彼氏でもできたんだ。よかったな』


 あたりの定型文的な内容のレスを作った。

 おそらくそういった出来事が、あいつに起きたのだろうと予想がついたからだ。

 ただ、確証もないのに決め付けるのもよくないので、俺は思案してから、こうメールに記して送った。


『何かあったのか?』


 ちょっと逃げた感じだが、あまり深入りするのもよくないので、まあまあの対応だと自負してみた。

 すると、すぐにまたレスが来た。

 どうやら俺がすぐに返すものと見越して、ずっと自分のスマホとにらめっこしていたのだろう。

 そんなことならもっと早く返してやったのに。


『よく、わかったね。あんたはホントに私のことが何でもわかるんだ』

『つきあい長いからな。で、何があったんだ?』


 さりげなく水を向けたのだが、返ってきたのは煮え切らないものだった。


『いや、別に大したことじゃないんだ。気になることがあって、あんたに愚痴りたかっただけ。それだけ』


 それだけというには、やたらと察して欲しがっているんだけど。

 俺に細かく聞いてもらいたいというのか?

 いや、無理だな、俺にそこまでする権利はない。

 俺は自分のことで手一杯なんだ。

 一度打ち込んだ文面から、五文字だけ削除して、


『なら良かった。気にせずに頑張れ。おまえの好きなようにしろ』


 それだけを素っ気なく文面にして、また送り返した。

 もうあいつからのメールはこなくなった。


 俺が削除したのは、『気にせず』の前に何気なく書いてしまった、


『俺のことは』


 という、たったそれだけの五文字だった。


 ……自分の夢などをしつこく追い続けて、彼女を女友達にまで格下げした男のことなどもう忘れるべきだ。

 わざわざお伺いなんか立てなくてもいいよ。

 俺にはおまえの考えなんてなんでもわかっているんだから。


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― 新着の感想 ―
[一言] すごい短編なのに切ないですね...。
[一言] 鵜狩さんのご感想欄でお名前を拝見してこちらの作品を拝読しました。 冒頭の文で語り手と女友達が恋愛感情の絡む関係なのだろうとは察しが付きましたが、結末で想像以上に切ない間柄だと分かりました。…
[良い点] ずっしりとした目の細かい文を書く人だなぁと思っていましたが、こういうサラッとしたのも書ける両刀ぶり。 [一言] 何かあったのですか…?(゜゜;)
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