再開その2
「恵ちゃん」
会社を出たところで恵ちゃんを捕まえた僕は、声をかけた。
「久しぶりだね、きょうちゃん」
そういった恵ちゃんの笑顔はあの日と変わらなかった。
「偶然だね、まさか同じ会社になるなんて」
車に向かいながら、僕たちは話していた。
「そうだね」
君はそういったっきり、恥ずかしそうに微笑んだだけだった。
あの時感じた高揚感は何だったのだろう。その原因を今一探り切れないまま、僕は自分の車の前に立った。
「あの、送ってもらえませんか?」
すごく、消えそうなほど小声で彼女は言った。周りの目を警戒していたのだろう。
僕はうなずき、彼女を車にのせた。
これがのちの騒乱の原因となるなんて、夢にも思わずに。
車の中で、会えなかった時間を埋めるように僕たちは話した。高校のこと、大学のこと、そしてこの会社を受けるまでのこと。
驚いたことに、彼女は今も実家から通っているという。
「家まで送っていった方がいい?」
そう聞くと、また彼女は恥ずかしそうにうなずいた。家の前まで来ると、ここでいい、というのでそこで彼女を降ろして車を発進させようとしたのだが、彼女のお母さんに見つかった。
「あらまあきょうちゃん久しぶりじゃない」
おばさんはいかにもこの間まであってたかのような口ぶりで僕に話しかける。
「ちょっとお母さん、きょうちゃんが困ってるじゃない」
そういった彼女の声も聞かず、寄っていきなさいな、とおばさんは僕に行った。当然それを断れるはずもなく、導かれるまま、家の中に入っていった。
「お邪魔します」
誰にともなくそういうと、彼女のお父さんが正座していた。
「おじさん、お久しぶりです」
そういって軽く会釈をする。僕は昔からおじさんが苦手だった。なんとなく口数が少なくて、とっつきにくい感じがしていたのだ。