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有対無 その百度目の戦い

 何も無い荒涼とした平原が、そこに有った。

 草一つ、木一つ、生命の一つすらもそこには無い。それは終末を迎えた後の世界を表現しているかの様な光景であり、見る者に不安と苦しみを呼び寄せるだろう。

 だが、最も恐ろしいのは大地ではなく、空だ。その空は一面に『何か』が広がっていて、どうしようもない強大さを見せつけている。

 その空には、全てが有った。全てだ。誰もが認識する事の出来る物品から、誰も知る事が叶わない現象まで、ありとあらゆる全てが有った。

 だから、それは決して空ではない。いや、そもそもこの大地は宇宙に漂っているのだろうか。何らかの空間上に存在する場所とは思えぬ程に、上空のそれは奇妙だった。


「はっ……やっぱり、お前は凄いな」


 その空を見上げて笑う男が一人、大地の上に立っている。

 だが、それは生命ではない。男は確かに人類と呼ばれる生物だが、その身体に纏う物は生物のそれでは無かった。

 誰が想像するだろう。彼は自らをより高次元の存在へと移し、人間としての自分のまま先へと進んだのだ。

 誰が想像するだろうか。彼は人間でありながら人間ではなく、その身体は世界を破滅させる事すら可能となるのである。

 そして、そんな男が感嘆の声を上げている。上空の彼方へと、声を向けている。

 答えなど有る筈がない。有って良い筈がない。あの様な異質な物から答えなど。


「ありがとう、カイム君。君がそれを言ったのは、今回で百回目だ」


 いや、答えは有った。

 それは明らかに人語である。その時点で、上空に広がるおぞましき混沌は自我を持ち、思考を行っている事が分かる。

 これほどに狂おしい物が意志を持つという事実は認めるのも辛い物だろうが、男――カイム・アールハンドゥーロは、口元に不敵な笑みを浮かべるだけだ。


「ああそうだ、百回目だ。一度も、勝っていない」

「そうだね、私が九十九戦九十九勝零敗零分で、君はその逆だ。ふふ、諦めの悪い」

「諦めの悪さには評判が良くてな。ガキの頃からずっと、この道だ。これからも、この道を行き続ける。例え死んでも生き方は変えない」


 強固な感情を表しながら、カイムがその全身から溢れる虚無な力を更に強める。

 それは彼自身を飲み込んでいる様でいながらも、カイムの所有物として制御されていた。


「今回が記念すべき百回目だ。何か、特典は?」

「無い。いや……お前に、一敗くれてやりたいね」

「それは楽しみにしなきゃね。おっと、君と戦うなら、一応の礼儀という物が有るかな」


 天空を埋め尽くしていた異質かつ言語化不能の『何か』が、視認可能な虹色を帯びる。その時だった、虹色が歪みを生み出して、上空から水滴の様に何かが滴り落ちたのは。

 その巨大な水滴は虹色で、丁度カイムから二十歩ほど離れた場所に落ちる。

 瞬く間に出来た水溜まりが何故かどんどんと沸き上がっていき、人と同じ高さにまで持ち上がった。目に悪い虹色は更に輝いて、蠢いた。

 だが、カイムは静かに状況を観察していて、動揺しない。何故なら、これもまた同じ物を百回も見ているからだ。

 水溜まりの塊が膨れ上がっていき、その中から一人の人間で現れてくる。

 それは虹色の髪をしていて、白と黒の軽装で身を固めた青年――明確な性別は分からない――だった。背はカイムより少し低く、線の細い人物だ。筋肉質なカイムとは大違いである。

 それも、狙った上での姿なのだろう。


「はい、完了。どうかな?」

「相変わらずだ」


 何も変わっていない。最初に二人が会い、戦った時から、青年の形をしたエィストの姿は何一つ変わらなかった。

 無論、カイム自身の容姿にも変化はない。最早時間などという物は彼を縛る物では無いのだ。


「相変わらず、かぁー。気づいてくれないんだね、もう」

「何だと?」

「だって今の私は、女の子だよ?」


 そう言うと、エィストは身体をふわりと一回転させた。すると彼の服装は純白のドレスに変わり、その顔は優しく微笑んでいる風に見える。

 男とも女とも感じられた顔つきは服装の為にとても女性寄りに見えて、朗らかな笑みがまたそれらしい。


「ああ……成る程な」

「どうかな? どうかな?」


 納得するカイムの顔を覗き込み、エィストは感想を求めている。

 そんな気持ちに答える形でカイムは軽く腕を前に出して、吐き捨てる様に声を出した。


「美人だよ、だがそれだけだ――俺がお前を倒すのに、外見は関係無い」


 エィストの身体が、爆発したと同時に破裂する。肉片が飛び散り、眼球が地面へ落ちた。

 言い終わる寸前、カイムは動き出していたのだ。今のカイムはただ、立っているだけだ。だが、同時に巨大な力を行使していた。

 間違いなく、即死だ。


「そうだね、外見なんて私達の間じゃ関係ない」


 死んでいるというのに、エィストの声が響く。何故か、簡単だ。そもそも生きていないのである。

 散り去った肉体が消滅し、一体の存在へと変貌する。それはまた怪物とした呼べぬ身体であった。顔が無く、頭部と思わしき位置には一本の触手と思わしき物が天まで伸びていた。

 一応は人型と呼べるシルエットをしていたが、その足は三本有った。体色は人語の知らぬ物であり、そのおぞましき形は見るだけで人を狂気へ誘う。何時の間にか上空に現れた月らしき丸い物体に向かって睨む、いや吠える姿は、まさしく怪物であった。

 が、それを見たカイムはあっさりと笑い飛ばす。


「好きだなそれ!」

「憧れさ! 素敵な姿だろう、私も這い寄ってみたいんだ!」

「お前が好きなのは這い寄る事じゃなくて、ハイになる事だと思うがな!」


 大笑いしながらカイムはただ、その月に吠える何かを睨む。それだけで対象はとてつもない錘を乗せられたかの様にひしゃげて潰れ、粉々に砕けた。


「ひどい! この造形を完成させるのにどれだけ努力したか知ってる癖に!」

「知りたくもねえな」

「答えは……特に努力していない、でしたー!」


 喜色満面の青年が虚空より姿を現すと同時に、カイムの全身が弾け飛んだ。体中を構成する全てが無限の数によって飽和し、限界を突破したのだ。

 だがカイムは崩壊する自分の身体を無視して、自己の存在を『無』と同化させる。膨れ上がった自己は一瞬で零に戻り、その姿が再び空間上に出現した。

 それだけではない、口笛を吹いて賞賛するエィストという個から『エィスト』という全にかけてを全て『無』にして、完全に消し去る。しかし、消し去った対象は絶対的な『有』であり、滅ばずのものなのだ。

 だが、そんな事も無視して『無』にする。全てが白紙になり、消えた。カイムが居た空間も、世界も、それ以上の概念も無い物となってしまった。


「その使い方は戴けないな。嫌いじゃないけど、何もかも無い物にしてしまおうというのは、君の目的に反するだろう」


 全てが元に戻り、無は有になった。

 カイムの耳元で囁く声が聞こえる。だがそれはあくまで便宜的な物で、声の主なりに個という概念に対して敬意を払っているという意思表示でしか無い。

 全く効いていなかった。

 防御も回避も出来ぬ最悪の概念を叩きつけたにも関わらず、虹色の髪をした青年にしておぞましき空、『有なるもの』エィスト。それは圧倒的に大々的に自分という存在を示していた。


「お返しだ」


 虚空に意志が伝播するよりも早く、『全て』がカイムに向かって落ちる。物理的に、ではない。概念的に落下していた。

 やはりカイムという存在に許された肉体は砕けたが、今更騒ぐ程の事でもない。意志を動かすまでもなくその身体は『無』の恩恵によって復活し、青年を睨む。

 睨む瞳は相手の全てを一瞬で『無』としたが、存在の土台から消しても『有』は無限のままで、決して消える事はなかった。

 圧倒的な無限と、荒涼たる無。二つのあり得ざる概念が互いの存在を食い合い、消しては増え増えては消していく。

 ここまでが、戦闘開始から一瞬の出来事である。少なくとも常人であればそう感じるだろう。

 一瞬――もはや時間による影響すら都合の悪い部分は無視している者達にとって、その表現が正しいのかは不明だが――その間に、二つの概念は互いを衝突させ合ったのだ。


「うんうん、凄いよ。九十九回目よりずっと自由に『無』を使いこなしてる。さっきから色々と操作して君を倒そうとしていたんだけど、気づいていたかな?」

「気づかなかったな、弱すぎて」


 嘘である。本当はあらゆる概念から来る罠や直接的な攻撃の数々を受けていた。今も自分という存在を崩す為に精神、存在、魂、肉体などの要素を崩壊させる様に概念が操作されていて、『無』によって何とか防御を成功させている状況だ。

 なら、何故そんな事を言うのか。拍手をしながら笑顔で称える言葉を口にする相手に、不屈の精神がより強く沸き上がったというだけの話だ。

 ただ、同時にこの存在から笑顔を奪う事は不可能である、という結論も出している。

 何時でも何処でも、それが例えどんな事であっても楽しみ、喜び、笑う。そんな化け物が相手では、どれほど追い詰めても、どれほど辛い仕打ちをしたとしても、それもまた享楽として全力で笑われるのが良い所だ。

 例え自分に負ける時が来たとしても、このエィストと呼ばれる怪異は笑うのだろう。うんざりするが、カイムにとっては容易に想像出来る事だ。

 だが……


「鬱陶しいっっ!」


 自分の全てを攻撃していた様々な要素を、『無』の放出によって無かった事とする。

 あらゆる影響から解放されたカイムの姿は人でありながら圧倒的な存在感を見せつけ、即座にエィストの顔を殴り飛ばした。


「わあ、凄い」

「お前に比べれば塵にもならねえがな!」

「でも、本当に凄いよ! 『有』に抵抗するなんて、壊されないなんて!」

「『無』は消えない。なぜなら、『無』いのだからな」

「あはは、そうだねぇー」


 頭が物理的に破裂し、カイムの拳から直接受けた『無』によって存在単位で崩壊したエィストだったが、その口振りは暢気な物だ。

 そして崩壊は止まり、そこに居たのは普段通りのエィストである。


「お返しかな、お返しだよ。優しく痛くしない様にぶっ飛ばすから歯を食い縛ってぇぇー……くたばっちまえ!」


 エィストの指が至近距離に居たカイムの頬をつつく。

 それだけで、カイムは地平の彼方まで吹き飛んだ。

 ただ小突かれただけで吹き飛ぶ。それは明確な実力差だった。


「畜生が、この、野郎!」


 だが、彼は悪態一つと同時に飛ばされているという事実を『無』にして身体を安定させ、あらゆる概念を無視してエィストの居る方へと戻った。


「お帰り。やっぱり強くなったね、いや、凄くなったかな?」


 エィストが惜しみない拍手を送り込んでくる。からかいの意図は見えず、あくまで純粋な賞賛をしているのだと分かる。返って馬鹿にしている様にも聞こえるが、それはそれだ。

 内心で舌打ちをしながらも、カイムは落ち着いた様子を保った。こんな程度の言葉で乱されるのなら、最初からエィストに挑まない。


「ああ、この力の使い方も完全に掴めた。が……お前にはまだ、届きそうにも無いな」

「でもね、本体じゃない私に負け続けなのはどうかと思うんだ、流石に」


 青年の姿をした概念の怪物が口にしたのは、少々同情的な言葉だった。そして、それは事実だ。天空を支配する巨大な何かも、目の前に居る青年も、所詮は『エィスト』の細かな端末に過ぎない。

 そんな存在にも勝てないのだから、真なる『エィスト』に勝てる筈がない。


「……分かってるよ、だが、端末のお前を倒さなければ何も進まないだろうが」

「まあね」


 エィストは頷き、カイムの言葉を肯定した。

 そういう反応もまた、カイムは予想していた。だが、返す言葉に迷ってしまい、沈黙する。少し黙っているだけでエィストの表情が異様に楽しげになっていく。

 業腹だったので、カイムは無理矢理に不敵に笑って口を開いた。


「大体、俺が生き方を変えると思うか? 絶対に変えないさ、お前が何を言おうがな」

「生き方は変えない、ね……ふふ、彼女は親に似たんだね」

「何だと?」

「先の話だから、気にしなくて良いよ。それより……さて、百回目も私の勝ちで行こうか?」


 既に決まった事を確認する口調で尋ねてくる青年に対し、カイムは強烈に闘争心を燃やし、拳が潰れる程に強く握った。


「冗談じゃない。やってみるまで俺は負けを認めないぞ」


 もう敵意も抱かず、カイムはただ自分という存在の奥に潜む『無』を可能な限り引き出す。精神を一つの極地へと到達させ、静かな心のままで相手の全てを認識する。

 広大だ。ひたすらに巨大で、戦える相手だとは思えない。ただ、それで諦める男であれば、彼は既に戦う事を止めていただろう。

 本当に諦めの悪い男だ。カイム自身がそう感じているのと同じ様に、エィストもまた似たような顔をしていた。


「今回はまだ勝てない、って分かってる癖に」


 青年の形をした存在はそっと目を瞑ると、強く見開いた。


「……やって見ると良い!」


 言葉が来るよりも早く、カイムの全てに攻撃が仕掛けられる。無限の大穴に無限の質量が注ぎ込まれて、埋まった側から消えていくのだ。

 だが、先程までとは攻撃の勢いが段違いだった。とにかく早く、とにかく凄まじいのだ。

 圧倒的過ぎて、カイムは防御に集中しなければならない。ただ笑いながら立っているエィストに一撃を与える事も出来ず、その場でじっと攻撃から身を守らざるを得なくなる。


「ぐ、おおおぉっ……」


 自分の存在が焼き切れそうだ。今にも壊れきって消し飛んでしまいかねない。必死に守る事を続けなければ、どうにもならない。

 しかしながら、空から恐ろしい存在が落ちてくる。防御で動けないカイムに向かって、『上空のエィスト』が降下しているのだ。それは青年のエィストより大きなおぞましさに溢れていて、カイムの『無』では絶対に届かないという絶望を感じさせた。

 動けない、避けられない。ならば。


「おぉおおおっ!」


 自分の身に落ちてくる『有』を無理矢理に弾き飛ばし、大地を全力で蹴る。

 自分という存在を『無』としてあらゆる防御を無視して、拳に強く強く力を籠めた。距離も時間も意味の無い相手だが、その一撃は人型の青年では大きく動かなければ回避はまず難しい物だ。

 あくまで本体や上空の『エィスト』ではなく、人型のエィストを倒す、カイムの目的は、つまりそれだった。

 その腕は勢い良くエィストの顔に迫り――少し顔の位置をずらすだけで、避けられてしまった。

 だが避けきれなかった拳は青年の頬と耳を掠めていて、少しだけ出血させている。ここに来て初の損害を与える事に成功したが、カイムは気力を使いきってしまう。

 少しだけ傷を受けたエィストは、その傷口から覗く異常な世界を現しながらも、軽く軽く、自分へ倒れ込むカイムの背中へ手を回した。


「どうだ……一矢報いてやったぞ?」

「……ふふっ、よく頑張ったね。いいこいいこ」


 自分という存在がボロボロに壊れても不敵に笑うカイムを、エィストが抱き締める。今のエィストは何時の間にか女性となって、慈母すら感じさせる顔をしていた。

 屈強な男であるカイムがまるで子供扱いだ。頭を撫でられて腹立たしい気持ちになる所だろうが、全力を振り絞った彼に抵抗する気力はない。

 いや、厳密にはまだ戦う事は可能だ。


「ダメージも損害も気力も『無』にすればもう一度戦えるだろうけど……どうする?」

「……いやあ、今回は俺の負けだな」

「どうして?」

「答えは分かっているだろうが。俺はお前に最大の攻撃を打ち込み、ちょっとした傷を負わせた、が……避けられた。負けだよ、負け」


 声だけで「お手上げ」という意志を現して、カイムはエィストに身を委ねる。

 百回目の負けを認めた事で大人しくなった事をエィストは確認して、さらに優しげな様子で相手の頬と自分の頬を合わせた。


「よく頑張ったね」

「次は……勝つさ」


 カイムのそれは、弱々しくも決意に溢れた声である。そう、百度の敗北など彼の意志を何一つ変える事は無い。

 そんな凄絶とも無謀とも表現出来る意志の強さを、エィストは明らかに面白がっていた。人型として意志を持つこの怪物は『享楽』という感情を軸に自我を構成しているのだから、当然の事である。

 エィストはしばらくの間自分に挑み続ける無茶な男の背や頬を撫で、笑っていた。それを済ませると、彼、あるいは彼女は笑みの中に真剣な色を乗せて、提案を口にした。


「そうだ。あのね、物は相談なんだけど……」

「……断る」

「百回目だし、記念に何かプレゼントしたいんだ。良いよね?」


 即座に断った相手の声など聞こえぬと言いたげに、エィストは強引に話を続けた。


「君に、ちょっと楽しんで貰おうと思って」

「だから要らないと言ってるんだけどな」


 絶対にろくでもない事を考えている。その意志に乗ってしまえば人生が終わってもおかしくは無い。百度の戦いによって相手の人格を理解したカイムは、絶対に提案を飲むまいとしている。

 一方で、何をどう断ろうと敗者であるカイムには完全な拒絶は出来ないのだ。

 それ故か、エィストは喉から響く様な笑い声を唸らせて、そっとカイムを突き放した。


「ふふ、これは確定事項なんだけどね……君は、私に感謝をするよ。間違いなく、ね」


 上空と人型がふわりと微笑んだ瞬間、大地が消えた。

 完全に消滅した空間の上に人が立つという矛盾は許されず、カイムの身体が落ちる。空間を制御しようと彼は力を入れたが、エィストによる無形の妨害によって失敗してしまう。


「お、おまえなぁぁぁぁっ……!」


 虚空に浮く人型へ手を伸ばしながら、カイムは落ちていった。

 すぐに彼の姿は消えて、後には異常な上空と異常な人型だけが残される。どちらも同じエィストだが、意志を持つのは明確な形を持っている方だけだ。

 よって、おぞましく蠢く空の混沌は何の意味も関心も無くひたすらに存在を続け、ラメ入り虹色の髪の青年は祝福に満ちた表情をしていた。


「いってらっしゃい。素敵な出会いを楽しんできてね、カイム君……ふぁふ……くふぅ……」


 青年の顔に有るのは嘲笑や冷笑などではなく、本心からの優しさである。当然の様に大きなお世話だろうが、知った事ではないのだろう。

 空間が閉じて、その場は何処かの応接間に戻る。その有王部分に座ったエィストはただ目を瞑り、寝息を立て始めた。


次の話から異世界です。


ちなみに、このエィストが取った姿の一つはお馴染みクトゥルー神話のナイアーラトテップの化身『月に吼える者』です。

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