突然の手紙
どれぐらい時間が経っただろう?
とめどなく涙が溢れてくる絢香。
いったい私はどうしてしまったのか?
こんなに泣いたのは夫と別れてから初めてかもしれない……。
別れた頃は心が渇いていて涙も出なかった。
別れ話を切り出した時の寂しそうな夫の顔が目に浮かぶ。
「もう、君には僕が必要ないんだね。」
「違う!」
と言いたかったけれど声が出なかった。
何であの時、私はもっと素直になれなかったんだろう?
後悔ばかり…。
「ルル、私は馬鹿だね?」
「ミャー。」
とルルは鳴き、私の腕からスルリと抜け出て、バックの中に自分から入っていった。
ルルとはこれからもずっと一緒にいたいと切に思う。
絢香がルルと自宅に戻ると一通の手紙がポストに投函されていた。
差出人の名前はない。
誰からの手紙?
開けても大丈夫かな?
不安になりながらも手紙の封を開けた。
そこには懐かしい筆跡が並んでいた。
久しぶり。元気にしてるかな?
僕は海辺の街で今は闘病生活を送っています。
君の作品は欠かさず読んでいるよ。
最近はすごく調子が良さそうだね。
文体もみずみずしいし、君らしさが出ている。
忘れないで。
別れても僕は君の一番の読者だよ。
闘病生活?
どうしたの?
夫はどうしているのか……。
絢香は言葉を失った。
ルルはちょこんとソファーに座ってこちらを見ている。
その目は絢香の気持ちを察しているかのように少し潤んで見えた。