ルルの好きなもの
ルルが好きなしらす干し。キャットフードも食べるけれど何故かしらす干しがお気に入りだ。
いつものキャットフードにちょっぴりトッピングすると頭をプルプルッと時々震わせながらしらす干しを上手に食べていく。
そんな姿がたまらなく可愛い。
そういえばしらす干し、誰かも好きだったなぁ。
誰だっけ?
しばらく考えるが、思い出せない。
ルルが来てから小説の進み具合いも順調で編集担当者も喜んでいる。
小説の中で黒猫に導かれて入った古本屋で付き合っている彼に出くわした主人公。
何故二人は普段も人目を忍んでこっそりと会わなければいけないのか……。
そのあたりの事情もそろそろ明かしていかなくてはと絢香は思っていた。
ルルは何で夢の中にまで出てくるのか不思議だが、普段は全く普通の猫に見える。
ただ音楽が好きなようで絢香が音楽を聞いているとすっと近寄ってきてスピーカーの前に座る。
特にある映画音楽をかけると長い尻尾をぴんと立ててミャアーと鳴いた。
「この曲好きなの?
私も好きだけどルルも好きなんてね。」
ルルに話しかけながら、一緒に音楽を楽しんだ。
ルルが膝に乗ってきたので背中を撫でてやるとゴロゴロとまた、体が鳴った。
そういえば、夫と暮らし始めたばかりの頃、道端に段ボールに入った子猫が捨てられていたことがあったのをふいに思い出した。
可哀想に思って、夫と一緒に子猫を家に連れて帰ってミルクを飲ませた後、1週間ほど一緒に暮らした。
情が移ってしまっては手放すのが辛くなると夫が言い……その後、預け先を探してもらえるよう動物病院にお願いしに行ったように思う。
その子猫も確か……黒猫?
でも、このルルと関係があるのかは、わからない。
まさか、あの子猫じゃないよね。
そんな偶然が起こるはずがないと自分の考えを打ち消して絢香は、ルルを膝から下ろした。
気晴らしにルルを連れて外に出てみようと思った。
いつも使っている大きなキャリーバックにルルを入れて玄関の扉を押した。
外気が冷やっとするが、それも心地好い。
今は2月。
そろそろ梅の花がほころび始める頃だ。
日差しは明るく、自然と足は近所の公園に向かった。