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第一話



「いーち、にー、さーん、しー、ごー、ろーく、しーち、はーち、きゅー、じゅう! もーいーかーい」


「……まーだだよ」


「いーち、にー、さーん……」


学校の帰り道、私はいつもと同じ時間、同じ場所を通っている。

近くの公園では小学生ぐらいの子供達がかくれんぼをしていた。

小さい頃はよくやったな、なんて思いながら私は家に帰った。




「ただいま」


そういうけれど、私の声は家の中で虚しく消えていく。

これもいつもの事だ。

靴を脱ぎリビングに向かうとテーブルの上に小さな紙と一緒に千円札が二枚置いてあった。


”今日も遅くなります”


これもいつもの事。

溜息すらもでないまま、私は冷蔵庫から牛乳を取り出し一息ついた。




部屋に戻り制服を脱ぎ捨てパソコンに電源をつける。

起動するまで時間が掛かるからその間に着替えを済ました。

着替えが終わる頃にはパソコンの画面はいつもと同じデスクトップで、

私はインターネットを開き、お気に入りに入っているチャット広場のサイトをクリックする。



チャットはいい。

顔も名前も本当の事はわからないのにたくさんの人が集まり、話をしたりお絵かきをしたり、

いろんな情報が交差する世界。

私はそこで”momo”と名乗っていた。

もちろんそれは偽名である。前に友達から本名は使わない方がいいと言われていた。

だから丁度始める前に食べていた桃をみてmomoとつけた。




<momoさんが入室しました>


momo>こん! やっと学校が終わったよ~

ナオ>こん! お疲れ様でしたぁ。今ね、子供の頃の遊びについて話してたんだぁ




ナオと言うのは、私が初めてこのサイトに来た時に出会った女の子だ。

もちろん彼女が女の子なのか……それが事実かはわからない。

だけど、少なくとも私は男女関係なくナオの事を友達だと思っている。

ちらりと入室者の欄を見ると今入室しているのは私を合わせて五人。

ナオを含めその他の二人の名前は知っているが、一人だけ初めてみた人がいた。

このチャットを始めてから半年以上経つが、きっと新しく来た人だろう。


(JUN……名前からして、男? でも女でも使えるか)


ログなど見て口調や性格をみたが、このJUNという人物は中性的というか……どちらかわからない。




ナオ>ねぇ、momoは子供の頃どんな遊びしてた?




ナオに話し掛けられ考えを一時中断した。

結局のところ、このチャットの世界では男女なんて関係ないのだ。

というか、真実などほんの一握りなんだし考えてもしかたない。

それこそ、砂漠で水を見つけるくらいの確立に等しい。

私はJUNについて考えるのを止め、先ほどのナオの質問について考える。


(子供の頃の遊び、か……)


子供の頃っていうと……鬼ごっこ、おままごと、缶けり……。

小さい時は難しい事なんて考えずにありのままを受け入れて、楽しく遊んでたっけ。

ふと先ほど子供達が公園でかくれんぼをしている事を思い出しそれでいいかとキーボードを打った。



momo>私はよくかくれんぼをしてたよ

花>かくれんぼか~。私もよくやってたなぁ

昌樹>俺なんかみつけるのがすっげえ苦手で、探すのに苦労してた



どちらかといえば、私も探すのが下手で最後まで探してた方。

隠れている間は凄く緊張してて見つかった時は凄く悔しかった気がする。

いつ見つかるか分からない、でも一人は嫌。

だけど捕まったら今度は自分が鬼になってしまう。

そんな緊張感が心の中で葛藤してて、しまいには意地になって隠れてた時もあった。


(……子供ながら怖い遊びだな)


だが所詮お遊びだ。

高校生になってまでやる遊びでもない。


その後、私たちは子供の遊びからゲーム、自分がハマっている事などずっと話し続けた。

しかし、JUNという人物は何一つ話さなかった。

ログを観ても私が入室する二十分前までは普通に話していたのに、急に何も話さなくなっている。


(まっ、席でも外してるんでしょ)


私はあんまり気に留めなかった。


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