表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン探索者だけど猫耳美少女になった件について  作者: 蒼井茜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/4

特措法

 それから3日が過ぎた。

 翌日には一般病棟へ移り、さらに翌日は家族との面会も許され何が起こったのかを滾々と説明された。

 俺が意識を失った時、要するにあのアナウンスを聞いた時に俺と同じように全身の痛みからもがき苦しんで救急搬送された人が多数、といっても世界規模で見ても100人に満たない恒例とのことで、スキルが増えたという報告が方々から上がってきているとの情報がギルドから一般に報じられた。

 また妹は成長痛で苦しんだらしいが今は落ち着いており、父のギルドカード備考欄に書かれていた【ヘルニア】や【痔】、【肥満】などの症状が消え去り肉体も健康体になったという。

 母も母で、そして祖父母たちも揃って備考欄にあった不調が諸々無くなったというので驚いた。

 しばらく病院が暇するんじゃねえかな……地域の診療所なんか老人会みたいになってたの思い出しながら、口にしなかったのは探索者がちょいちょい運び込まれてくるからだ。


 あと普通に子供が風邪ひくとかはあるから。

 ギルドカードの取得も年齢制限あるんだよな。

 うちじゃ長女がとったが、三つ子の次女三女はとってないので、この辺は個人の好みの問題だ。

 ただ一機に発育が良くなった長女を見て二人はハンカチを噛んでいるという……まぁ誰にも予見できないからしゃーなし。

 後は俺の事だが、衣類やら櫛やらについていた髪の毛と、今の俺の血液検査などで得たDNAを調べたらそっくりそのまま同じで本人に間違いないと断定された。

 祖父母は少々怪訝な顔をしつつも、俺が俺であるという事と、後遺症などなく無事だったことを喜んでくれた。

 なお妹たちは「お姉ちゃんができた!」と喜ばれたのは複雑な心境である。


 ……まぁね、お兄ちゃんだと共通の話題減るからね。

 でも中身はお兄ちゃんのままだし、DNAもそうなんだよ?

 そしてようやく飯にありつけるぞという日になって、昼食を口に運ぼうとしたその時だった。


「失礼します。三上幸助さんでお間違いないですね」


 スーツ姿の男性達がやってきた。

 ……顔は知らんが、あのピンバッチには見覚えがある。

 ギルドの上、つまり政府直轄ダンジョン省の人達の物だ。


「Dの方々がどのようなご用件で」


 苦手なニンジンが入っているスープを飲みながら訪ねる。

 ダンジョン省だと長いし言いにくいのでDで浸透している。

 ……あー、スープが五臓六腑に染み渡る。


「失礼しました。ダンジョン省職員、雑賀と申します。この度はいくつかお話を聞きたくてお邪魔させていただきました」


「これはご丁寧にどうも……雑賀、信二さん?」


「はい」


 手渡された名刺に書かれた名前を読み上げると返事をくれた。


「単刀直入にお伺いします。その姿、あなたが遊んでいたGG14のキャラクターでお間違いないでしょうか」


「はい」


 GG14、歴史のあるゲームでありギャラクシーグラビティというファンタジー作品の14作品目だ。

 ナンバリングの11番目で初のオンラインRPGとなり、14で一度こけたけど再建したという歴史のある作品。

 無料だった11も小学生の頃に少し遊んだが、14もこけたと言われた時から遊んでた古参である。

 というかなんで知ってるのかな?


「僭越ながら調べさせていただきました。緊急事態だったためIPなども含めて」


 緊急事態だとプライバシーは無視されるのかぁ……しりとうなかった。


「学校での評価は家族のために身を粉にしてダンジョンに潜る好青年、それでいて成績も落とさず遅刻や欠席も少ないと教師からは高評価。一方でダンジョンに潜り続けているという点を異端視されたことでクラスでは浮いているというのがご友人たちの評価ですが」


「それ、今関係あります?」


「はい、今回の一件でダンジョン省主導で特措法を用意する事となりました」


「特措法……それは俺が聞いても、というよりここで話してもいい事ですか?」


「問題ありません。既にニュースで報じられています。我々はあくまで当事者への報告と謝罪のために来たのです」


「通達はわかりますが……謝罪?」


「プライバシーの侵害、並びに訴えられれば確実に負ける違法捜査、そして特措法に関する内容についてです」


 前ふたつはわかる。

 そりゃ俺もお年頃だからまだ2年くらい早いサイトとかを見たりはするよ?

 だからと言ってそれを無断で捜査して、こっちのプライバシーをどうのこうのにはだいぶ弱い。

 というか法の強制力としては無理と言っていい。

 じゃあ特措法はなんだ。


「端的に申し上げますと、今回の一件でイレギュラーが発生しやすくなっています」


「イレギュラー……トレインとかですか?」


「それも含め、エリアボスの出現率やモンスターの強さが変わったなど様々です。それらを調査するには我々の腕は短すぎる。そこで特措法です」


「聞きましょう」


「はい、今回用意されたのは全部で5条。1条、探索者ライセンス所持者は国家、あるいはそれに付随する組織の要請にて緊急出動を求められることがある。これは強制ではありませんが、ライセンスが上がれば重要性も上がります。当然依頼料はお支払いしますが、あくまで公務員の賞与の範疇だと思ってください」


 それは……微妙に判断しにくいな。

 要するになんかあったら手伝え、公務員のボーナスくらいの金額は出すからって内容だろ。

 考えようによっては民間人の避難誘導だけでも数十万貰えるかもしれないし、逆に超危険な最前線に行っても同額が限度ってこともある。


「続けて2条、探索者としての実績を持ってライセンス所持者のランクを一つ上げるものとする。この場合年齢は問わない」


 あ、これは純粋にうれしい。

 探索者としてのライセンスが一つ上がるってことは、俺は2級探索者になれるわけだ。

 最低の5級に対して俺が持っていたのは年齢制限ギリギリで取得した3級。

 その違いは潜れるダンジョンの数と、未成年という点を除いて探索時間だ。

 5級だと泊まり込みは禁止されているけど3級から許されるんだよね。

 2級になると大抵のダンジョンには潜れるし、ギルドの系列店だと割引が聞いたりするようになる。


「3条、これが謝罪点ですが……2条の条件を満たした上で2級以上の探索者はダンジョンに関するあらゆる制限を無い物として扱える代わりに一定以上の要請には参加しなければいけない」


「……まぁ、喜び半分ってところですね」


「残り半分は憤りだと考えております」


「いえ、正直困惑です」


「具体的に言いますと要請には三種類あります。グリーンの民間人避難などの手伝い、並びに護衛。避難させるにあたって万が一の場合は護衛もしてほしいというもの。これがほぼ強制となります」


「まあその程度なら」


「次にイエロー、まだ日本では発生件数の少ないスタンピードなどの際に戦力として加担していただく。ダンジョン内の人物救援なども含まれていますが、端的に言えばダンジョンに入って行動する事、これは4条の1級以上の者に対しての強制です。なおこの要請に参加できるのも2級以上と定めています」


 その次に1級以上、正確に言うなら特級が対処に当たるレッドがありますが、と言いながら書類片手に説明をしてくれる。


「まぁ、5級に出てこられても足手纏いになるでしょうしね」


 探索者のライセンス条件の内レベルなども考慮されるので、基本的に5級は誰でも取得可能な物だ。

 河童の狩猟許可証と同じで持っているだけみたいなものであり、4級は1階層から3階層までの探索を許されるレベル5以上の人間と限定される。

 そして3級になるとレベル15以上を要求されるが、上層と言われる入口に近い階層なら好きに探索していい、中層は事前申請をしてなおかつ18歳以上であること、2級はレベル30以上で中層での経験がある事、また人格的に問題がなく面接を経て考慮されるが、ここまでくれば下層まで自由探索できる。


 実質2級以上がプロと言われる所以である。

 そして1級、もう好きなようにしてと投げやりな扱いだが、その取得はとてつもなく条件が厳しい。

 そして素行調査も厳しく、仮に昇級できても簡単に降格なりライセンスはく奪なりがされる。

 なので2級に留まるプロ探索者も多い。

 あとは国が特例で認めた特級だけど、これはもう等級じゃなくて国家お抱えと言った方がいいレベルだ。


「4条は先ほどの通り要請参加レベルの話です。そして5条、1条にて2級以上に昇格した者はダンジョン省の職員として扱うというものです」


「……それも具体的にお願いできますか?」


「はい、つまるところ三上さんは学生であると共にダンジョン省の職員としての立場も得たという事です。逆に言えば将来を奪ってしまった」


「いや、就職ができるならそれはいいんですけど……学業をおろそかにはしたくないんですが進学とか認められます?」


「無論です。というより今回はこちらが無理を言っている立場ですので、大学進学や高校における勉学、授業料などはダンジョン省の予算から支払われます」


 悪い話じゃない。

 向こうは若者の将来を奪ったと思っているようだが、俺からすれば国家公務員の内定が今から決まったようなものだ。


「ダンジョンに潜るのも今まで通り、そしてこれからもできるんですよね」


 ただ重要なのはここ、これからもという所だ。

 つまり職員になって、大学まで卒業してもダンジョンに行ってドロップアイテム売買していいんだよなという事だ。


「むしろ願ったりです。一つでも多くのサンプルを集めてほしいというのが我々の総意ですし、専門のチームが既に複数存在しています。それらのチームに所属するも、個人的な集まりで活動するのもご自由にしてくださって構いません」


「となると……問題は無いですねぇ」


「いえ、重大な物が一つ」


「どうぞ」


「……職員として、そして冒険者としての資格を持つ事になった方々には見張りがつきます。万が一の際に諫める役目、あるいは特級相当の力を持った方を怒らせぬよう先んじて相手を、乱暴に言ってしまえば殴り飛ばして黙らせる役割の者が」


 まーたプライバシー消失事件か。

 いや、もうエロサイトの事バレたならそれ以外はなにも困らないけどね?

 俺の学校生活って基本的に暇だったし、授業聞いてれば試験は問題なかった。

 友人も少ないながらにいたけど、そういうやつらは基本的に社交的だったから必然的に俺が浮いてただけで。

 そういう意味じゃマジで困る事ないな。


「じゃあ俺から質問良いですか?」


「なんでしょう」


「性別的に女になったけど、精神的には男のままなんですよ。行き過ぎたのは止めてもらうとしても軽口くらいなら問題ないと思うんです。ほら、学生でよくあるデッカみたいな話とか」


 まぁ俺のアバターは盛ってないから山とか谷とかじゃなく丘って感じだけどさ。

 具体的に言うなら貧ではないが美と呼ぶにはもう少し欲しいライン。


「そういう線引きはどこからですかね」


「……都度、確認させていただくという事で」


 多分それが一番面倒くせえなぁ……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ