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ダンジョン探索者だけど猫耳美少女になった件について  作者: 蒼井茜


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TS!

 知らない天上だ……というネタを披露する機会に恵まれていたせいで、一目見ただけで病院だとわかった。

 何なら寝心地から一番近いそこそこ大きい病院のICUであることも理解できた。

 その上で身体を動かそうとすればギシッという音に阻まれた。

 拘束されている、それに気づくのにも時間はいらなかった。

 うん、ダンジョンなんて潜ってればいつか大怪我するし、俺は適当に集めたポーションでどうにかしのぎながらやってたけどたまに本当に死にかけたり、疲労でぶっ倒れる事もあったからね。

 そのたびに家族からは「もういい」と泣かれたけど、最早半分以上が趣味でもあるんだ。

 しかし……妙に入院着に余裕があるというか、モンスターと最前線でど付き合うような学生生活と、そのための鍛錬を続けていたから筋肉がそこそこついている俺にとって寝苦しかったそれが緩い。

 とりあえず手の届く範囲に置かれたナースコールを押せばすぐにナースさんが飛んできた。

 血圧を測ったり、採血したりあわただしそうにしているとお医者様もやってきた。


「いいですか、落ち着いて聞いてください」


 わぁ、聞き覚えのあるフレーズだ。


「まず、声は出せますか?」


「はい」


「名前と生年月日は答えられますか?」


「三上幸助、16歳、2009年の10月14日生まれです」


「はい……確かに」


 ……んー? 聞き覚えの無い声が出たぞ?


「では、心を静めて……君、鎮静剤を用意」


 え、なに? 何が起こってるの? 超怖いんですけど!


「これから鏡を見てもらいます。いいですか、何があっても落ち着いて」


「そこはまぁ、探索者やってるのでちょっとやそっとじゃ驚きませんが」


 不意打ちに驚く暇があれば攻撃しろがダンジョンの法則だからね。

 あそこ治外法権だからモンスターも人も平然と襲ってくるし、どっちも容赦してこないからぶっ殺す以外の手段がないんだよ。

 要するに驚いている余裕なんかすぐになくなるか、あるいは隙を晒して死ぬかの二択。

 俺は後者になる前に耐性をつけられたから生き残れた。

 走馬灯は見飽きたけどな!


「では……」


「……美少女ですね」


「はい」


 額から顎まで伸びる刺青が目立つが金髪碧眼の美少女だ。

 肩甲骨くらいまで伸びた金髪がサラサラである。


「猫耳ですね」


「尻尾もあります」


 耳の上でぴょこぴょこ動いている、触ってみればモフッとした感覚と、みょうにぞわぞわする感じだ。


「俺男だったと思うんですが」


「ですがこれが今のあなたとしか言いようがないのです」


 えーと、なんだ?

 つまりあの激痛の後俺は猫耳美少女になっていた?

 ……いや、これどっかで見おぼえあるな。


「ちょっと鏡動かしてもらっていいですか。画角変える感じで」


「はい」


 医者の動かす鏡を目で追うが……あぁ、やっぱりだ。

 これ俺が遊んでたオンラインゲームのキャラじゃねえか!

 月額料金最安値で800円、ダンジョンで手に入れた金の内万単位を家族に渡して、残った数千円以下の金額と睡眠時間つぎ込んで遊んでたやつ!

 他にも無料のオンゲやら、買い切りのゲームをセールで購入とかしてたけどさ……その中でもやり込んだ一つだ。

 プレイ時間なんか数えていないというか、サービス開始当初からやってたから数年単位で遊び続けてるやつ。

 そのアバター、つまりは俺が操作するキャラだ。


「……先生もアナウンス聞きました?」


「ダンジョンに関わる全てに恩恵を、でしたね」


「そうそれ、この姿ってやっぱりそっち方面ですかね」


「おそらく、ギルドカードの方が正確に記録していると思いますが」


「じゃあ俺のギルドカード、見せてもらっても?」


 ギルドカード、名前にこそギルドとついているがダンジョンに潜って敵を一体でも倒せばダンジョンがプレゼントしてくれる物。

 国や地域で呼び方は違うが、おおむねギルドカードで伝わる程度には浸透している。

 なにせクレカとか個人情報確認にも使える万能身分証だからな。

 どうして現代技術に対応しているのかはすべて謎だが、それを利用してギルドではカードの情報を読み込む機械なんかも作られて設置されている。

 なんならクレカをこつんと当てるだけでその機能が移るのだ。

 もちろん本人名義じゃないとだめだけど。


「こちらを……その前に、もう拘束は不要ですね」


「まぁ、驚きはしましたけど」


 探索者としては驚きより好奇心、そして面白い事が起きたぞという感覚の方が強い。

 もしも、というのを考え出したら多くの人は最強の俺というのを夢見るはずだ。

 そしてその願望をかなえるべく、非現実のゲームなどで欲求を満たす事もある。

 もちろんそうじゃない人もいるだろうけど、それでもどこかで理想を持ったキャラクターを作り上げる。

 その姿になった以上、俺は期待せざるを得ない。


「えーと……これ、バグってませんよね」


「ギルドの方が何名もこちらに来ましてね。確認した限り平常だそうです」


 手に取ったギルドカード、万能身分証であるだけでなく所有者というか、そこに記録されている人物の状態も教えてくれる優れものだ。

 ちなみにこれを取得するだけの、ライセンスを持たずにカードだけ欲しいですって言う人のためのツアーも用意されている。

 お値段一回3000円。

 祖父母は自前で取ってきていたが、両親はこのコースで取得したし、妹なんかも早々に自分の小遣いで取得した。

 書いてあるのは名前とレベル、つまりはどれだけ強いですよという指針になるものだがレベル1が一般人なのに対してレベル2がその倍、3で3倍という感じになっていく。

 そして俺のレベルは17だった。


 学生にしては高い方、という評価を得られる程度に頑張っていたがそれでも専門の学校に行っている連中には勝てないような数字だったのが今は1817と書かれていた。

 更にスキルという欄があり、これはパッシブ、常に発動している能力向上などの効果やアクティブ、意図して発動する魔法などの攻撃などがずらりと並んでいる。

 中には俺には敵性の無かった魔法の類も、どころか瀕死の重傷車を一瞬で癒せるような回復魔法も並んでいるのだ。

 なお備考には【進化中】【アップデート中】と書かれている。

 普段は体調について書いてあるんだがなぁ……【風邪】とか、【癌】とかの病気だったり、女性だったら【生理中】とか書かれてたり。

 デリカシー? そんなもんダンジョンに求めるな。


 カードはとにかく不調があれば備考に書かれる程度の認識しかないのだ。

 もっと詳しくと考えながら備考を見れば『いまだその真価は途上、しかして努力は実を結ぶだろう』という文言。

 アップデート中に関しては『ただいまアップデート中です、しばらくお待ちください』というどっかで見た文言だった。

 ……これ、詳細がわかるとかそういうの今までのカードには無かったな。


「あの、まぁ色々聞きたい事ありますけど家族は」


「今は面会謝絶とさせていただいておりますが、一度お顔を見られて驚いてから入院の準備にと」


「あ、俺と認識してくれたんですね」


「搬送中に人相が変わっていったのはお母様が確認済みです。それに合わせて肉体の変化などはご家族皆様が見ていましたので」


「……ちなみに他に同じ症例の人はいます? というか妹もギルドカード持っているんですが、なにかありませんでした?」


「前者に関しては守秘義務がありますので」


 つまりいるんだな。

 いないならそう答えればいいのに、守秘義務を持ち出すあたり俺がユニークというわけじゃなさそうだ。


「妹さんに関しましては髪の毛が少し伸びて、背丈なども少々といった所でしょうか。急に成長したように見えた、としかご家族様は言っていませんでしたが念のため検査だけ受けていきましたよ。異常はありませんでしたが。ちなみに三上さんはほぼ丸一日寝ていました。いえ、気絶しながらも悶えていたと言った方がいいでしょう」


 悶えてた……まぁあの激痛はなぁ。

 無意識だろうと神経が反応して動くには十分だろうよ。

 怪我したところを咄嗟におさえるようなもんだ。

 その反射神経も麻痺させて久しかったが……ありゃ無理だわ。


「そうですか……じゃあ最後に」


「はい、なんでも聞いてください」


「聞くというか……腹減ったんですけどいつから食事可能ですか?」


「とりあえず3日は点滴です」


 ……青椒肉絲、食べたかったなぁ。


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