馬鹿は当然いる
その後何事もなく授業を受けて、うっかり体育の時間グラウンド行って見学する事になった俺。
探索者も何人かいるけど、そいつらに混ざるわけにもいかずクラス混合体育ではぽつんと見学する事となった。
そして事件は起こった。
「お前か、この前のアレを理由にサボってるってのは」
確か隣のクラスのやんちゃなやつだ。
探索者でレベルも30となかなか高い。
俺よりも熱心にダンジョンに潜っているタイプだ。
というよりは深い階層に行ってレベリングしてるという感じかな。
普段は往復しやすい範囲でビッグボアっていう猪狩ってドロップアイテムの肉や金になる魔石集めてる俺とは違い将来も探索者になりたいというやつだった……かな?
入学初期のころ一度だけパーティ組んだけど、音楽性の違いで速攻解散になったのを覚えてる。
「サボってるというか教師公認だからな。何なら政府公認」
「はっ、俺だってあのアナウンスの恩恵受けてるんだぜ。これで国家お抱えよ。レベルだって今じゃ100超えたんだ」
「そりゃすごい」
素直な称賛、俺の場合ほとんどいかさまだからな。
こいつはアナウンスがあって、ライセンスも上がって泊まり込みのレベリングでもしたんだろう。
とはいえパワーレベリングの可能性が高いな。
政府もその方針には賛成で、積極的に探索者のレベルを上げたがっている。
それを断る奴らもいるし、個々人の裁量に任されている所は多いんだが……探索者やります、ライセンス取りますって言う人は積極的に戦力にしようとしている節はある。
大抵の場合2級以上をパワーレベリングに連れ出すけど、それを目指すというなら4級くらいでも金さえ積めば同行者を用意してくれるのだ。
一人でレベル上げするより楽だし安全だからな。
「で、お前は?」
「秘密」
「はっ、レベル17の雑魚だったもんな。見た目もこんな可愛らしくなっちまってよ」
髪を掴まれ引っ張られた。
……すげぇな、まるで痛くない。
「そのくらいにしておいた方がいいぞ。雑賀さんと、お前の護衛がこっち見てる」
「俺はじゃれてるだけだぜ?」
あぁ、もう無理だなこれ。
護衛が二人とも頷き合ってこっちに来た。
雑賀さんは素手のままだが、あっちの護衛はメリケンサック付けた。
そしてそのまま馬鹿の顔面をぶん殴った。
「失礼しました」
そのまま気絶した馬鹿を引きずっていく護衛さん、マジお疲れさまです。
「大丈夫でしたか?」
「痛くもかゆくもありませんでした。ちょっと髪が乱れただけです」
「救援が遅くなり申し訳ありません。必要とあらば……」
「あ、大丈夫です。あいつこの後酷い目に合うと思うので」
「……?」
「女子の結束力って恐ろしいんですよ」
俺がボッチになった理由の一つがこれだ。
まだ入学して間もない頃、陽キャ集団が親睦会しようという話を持ち出した。
みんなで数百円出して、飲み物とお菓子買って教室でどんちゃんしようぜという企画。
先生も許可したうえで、俺は金だけ出して辞退したところ付き合いが悪いとか、愛想がないとか翌日からボッチになった。
あのネットワークは侮れないし、女子でも探索者やってる奴はこっちに回されるので噂は即座に広がるだろう。
そうなればもう学年、下手したら学校単位でパーティを組んでくれる相手はいなくなる。
ついでに交友関係も冷めきっていく事だろう。
探索科の奴らもパワーレベリングそのものは否定しないが、レベルに物を言わせてヒャッハーする奴を嫌悪している。
まぁそういうのがいるから探索者は荒くれものってイメージもたれているのも事実だし、この前雑賀さんが言っていた反社にいる探索者もその類だ。
結果的に自浄作用が求められるので、探索者の起こす事件には滅茶苦茶敏感になっている。
なので今回は国の力を借りるまでもなく、学内の女子ネットワークだけで全て完結するのであった。
「という事ですよ。雑賀さんは覚えないですか? 学校でも社会でも女性のネットワーク特有の怖さ」
「あぁ、ありますね。昔係長が不倫しているという噂が広がって、その日のうちに裏取りされてました」
「探偵顔負けですね」
「まったくもって、女生徒は恐ろしい生き物だと痛感させられます。ですがそれで大人しくなりますか? 逆恨みなどもあり得ますが」
「それは向こうの護衛に任せましょう。最悪の場合足でも折ってやれば理解するでしょうし」
ちなみに探索者の骨はレベルが上がると金属よりも硬くなる。
レベル100なら鉄骨くらいの硬さかな。
レベル30もあれば鉄筋程度にはなるはずだけど。
「そのくらいで済むならいいですね」
「うっかり再起不能にしても怒られませんよね」
「大丈夫です、記録してありますので」
そっかぁ、この黒スーツのどっかにカメラ仕込まれてるのかな。
こわっ。




