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1-3. 視界が染まる瞬間
翌日、父が後妻とその娘を連れて戻ってきた。
昨夜の話し合いは平行線で終わったが、父が強行突破をした形だ。
兄弟は不満を抱きつつも車の到着を待っていた。
車から降り立ったのは、蘭瑤と名乗る女性だった。
三兄弟が想像していたような「財産目当ての傲慢な女」ではなく、控えめで柔らかな物腰の女性というのが第一印象だった。
「無理をして母と呼ぶ必要はありません。よろしくお願いします」
丁寧にお辞儀をする彼女に、兄弟たちは毒気を抜かれたように立ち尽くす。
「……美玲、こちらへ」
父に促され、女性の陰から一人の少女が姿を現した。
李 美玲。
彼女が顔を上げ、龍一と視線がぶつかったその瞬間――。
龍一の世界から色が消え、代わりに鮮やかな「森の深い緑」が視界を埋め尽くした。
(――ああ、この瞳だ)
千年前の記憶。木漏れ日の中で、自分を真っ直ぐに見つめていた、あの潤んだ瞳。
心臓が耳障りなほど激しく打ち鳴らされる。
喉の奥が熱くなり、今すぐ彼女を抱きしめたい衝動が突き上げる。
しかし、口から出たのは、狂おしい執着を隠すための冷酷な拒絶だった。
「……私の視界に入るな。不愉快だ」




