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悪役聖女は、目を覚ました瞬間に察した



 目を覚ました瞬間、わたしは理解してしまった。


 ――あ、これ、逃げられないやつだ。


 白い天蓋が視界いっぱいに広がっている。

 柔らかな光、澄んだ空気、かすかに香る薬草の匂い。どれもが、現実味を失わせるほど整いすぎていた。


 ここが普通の部屋じゃないことくらい、すぐに分かる。


(……神殿)


 嫌な予感は、だいたい当たる。


 上体を起こそうとした拍子に、肩から何かが滑り落ちた。

 指に絡んだのは、腰まである金色の髪だった。


(……長)


 自分のものとは思えないほど、手触りがいい。

 ぼんやりとした頭でそれを掴んだ瞬間、記憶が一気に流れ込んできた。


 聖女。

 光魔法。

 神殿。

 そして――。


(悪役……聖女)


 最悪の単語に、思わず眉をひそめる。


 最近流行っていた、あの小説。

 “悪役令嬢に転生する話”の中で、主人公を陰で追い詰める聖女がいた。


 偽善的で、計算高くて、最終的には自滅する。

 読んでいて、「こうはなりたくないな」と思った存在。


 それが、わたし。


(いや、無理でしょ)


 心の底からそう思った。


 だって、面倒くさい。


 誰かを陥れるために計算するくらいなら、昼寝をしたい。

 泣き真似をする労力があるなら、お菓子を食べたい。


 そんなわたしが、悪役?


「……起きてますか、聖女様」


 控えめな声に、思考が中断される。


 視線を向けると、白い神官服を着た女性が、静かに立っていた。


(あ、確定)


 逃げ道はない。


「……起きてます」


 返事をすると、彼女は安堵したように微笑んだ。


「三日前、光の啓示を受けられた際に倒れられました。本日、正式な聖女認定の儀が執り行われます」


 淡々と告げられる事実。


(今日なんだ……)


 心の準備というものが欲しかった。


 身支度を整えられ、白い法衣を纏わされる。

 軽くて、動きやすくて、やたらと似合う。


 鏡に映った自分の姿を見て、思わずため息が出た。


 金色の髪に、青い瞳。

 整いすぎた顔立ち。


(そりゃ、誤解されるよね)


 神殿の大広間は、静まり返っていた。

 貴族、神官、騎士。無数の視線が、わたし一人に集まる。


(視線、重……)


 前列に座る貴族の中で、ひときわ目を引く少女がいた。


 赤い髪、黄色の瞳。

 凛とした姿勢。


(……アリエル)


 悪役令嬢に転生した主人公。

 この世界では、彼女が“正しい側”の人間。


(関わらない、刺激しない、近づかない)


 それが、わたしの生存戦略だ。


 祈りの言葉が響き、光が降り注ぐ。

 胸の奥が熱を帯び、自然と魔力が溢れ出した。


 光魔法。

 思っていたより、ずっと心地いい。


(……嫌いじゃない)


 歓声とともに、儀式は終わった。


 その時。


「聖女殿」


 低く、落ち着いた声が響いた。


 振り向いた先に立っていたのは、黒髪の青年だった。

 センター分けの短髪、赤い瞳。軍服姿。


(……誰)


「帝国大公、カイエル・フォン・ルーヴェン様です」


 神官の囁きで、思い出す。


(神殿嫌いの人)


 彼は感情の読めない目で、わたしを見つめていた。


「あなたが、本当に聖女なのか。

 その在り方を、私は見極める」


 ざわめく広間。


 でも、不思議と怖くなかった。


(面倒そう……)


 そう思ったのに、目を逸らせなかった。


 こうしてわたしは、

 “悪役聖女”としての人生を歩み始めた。


 できれば、

 悪役にならずに済みますように。


 切実に。


読んで頂きありがとうございます。

初めて書いた小説なので矛盾しているところができるかもしれませんが遠慮なく教えてください。

次の話も読んで頂けますと嬉しいてす。

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