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プロローグ:あの時、全ては始まった


 むかしむかし。

 ある所に、それはそれは美しい姫がおりました。

 一国の王女ではありましたが、母親が庶民の出であり、尚且つその母も姫が幼い頃に儚くなってしまった為に、姫には後ろ楯となる存在がおらず、孤立していました。

 父王は母親譲りの美貌を持つ娘を可愛がりましたが、正妃である継母をはじめ、異母兄弟や周囲の人間達は、身分が低いからと皆姫を疎んじていたのです。

 そんな境遇から逃げ出してしまったのか、やがて、姫は行方知れずになってしまったのでした――。






「……くだらない」


 僅かに表情を歪めて、黒衣の魔法使いはそう呟いた。

 彼は、この国で一番強い魔法使いとして名高い存在である。

 ただし、その容貌が異相であるとして、公の場に駆り出されることは少なかった。

 人々は皆、彼の見た目を恐れるからだ。

 国王専属の『異形の』魔法使い。そんな蔑称を付け、その魔法の恩恵を受けながらも、王の周りで働く者達は皆、彼を見下し同時に忌避していたのだ。

 人に受け入れられる容姿ではないと知っていたが故に、彼は常に黒のローブに身を包み、そのフードで顔を覆い隠していた。そのまま辛うじて見えるのは、口元だけ。


「――本当に、くだらない…」


 国の一大事や大規模な災害が起きた場合は、すぐに彼が駆り出される。

けれど平時、国王付きの魔法使いとされている彼の元にやってくる命令は、国王の私的な用事に関するものばかりで、それも世間の裏、例えば誰かを暗殺しろだとか――綺麗とは言えない仕事ばかりであった。

 今回も、同じようにくだらなく汚い指令。

 曰く、逃げ出した隣国の王女を探し出し抹消すること、だった。王女とはいえ、妾の子で身分は低い。

 どうやら真の依頼主は、隣国の王の正妃であるようだ。

 隣国は同盟を結び、互いに利益を与えあっているお得意様だ。外交上、断れない依頼であったのだろう。

 その代わりに何かしらの大きな見返りを示され、国王はあっさりと受けたのだと思われる。

 隣国の現王は暫く前に病に倒れ、もう余命幾ばくもないと言われている。

愛しい娘のことを気にすることもできない為に、その正妃は夫に邪魔されることなく、忌々しい王女を殺すことができるというわけだ。

 急に倒れたというその背景にも、恐らく正妃の何かしらの関与があるのだろう。

 この国でも、つい何年か前に、国王の息子達が後継ぎの座を奪いあって殺し合うことがあった。

結局は相討ちとなり共に倒れ、今は、国王が何人もいる側妃の一人に産ませた赤子が、次の王位継承者と目されているが、どうなるかはわからない。

結局、どの国の王侯貴族も同じで、王宮では日々、他者を陥れ自分が這い上がろうとする者達の思惑が交差しているのだ。

 大いなる力を持つ魔法使いは、権力のせめぎ合いに辟易していた。

 くだらないことに付き合うのは気が進まない、と。

 それでも、彼は王家に仕えると誓約を立てさせられていた為に、逆らうことは出来ない。

 渋々ながらも、その仕事を受けざるを得なかったのだった。

HPで完結している話を加筆修正して載せていきます。展開がやや早めなのでつじつまが合わない所があるかもしれませんが、ご容赦ください。

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