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三章 姫巫女の涙の夕暮れ

 シェラは、共同部屋のバルコニーで、歌っていた。

夜風に歌声が溶ける。この歌声は、幽霊の歌と言われて宮殿の怪談話になっている。しかし、美しい歌声をどこからともなく聞こえるというだけのもので、どんな綺麗な歌なのかと、その怪談話を聞いた者は聞きたがり、連日肝試しツアーをしているらしい。

シェラが歌っていることを知っているカザフサは何も言わず、シェラもあえて何を言わない。リティルの事で、沈みがちな心を隠しているシェラは、幽霊の声を聞きたいと笑っている皆の姿を見て、和んでいたのだった。

 2回戦の結果を見上げるリティルの背中が、呆然として見えたのは、シェラの気のせいだろうか。ショックを受けて見えてしまったから、声をかけてしまったのだろうか。

「当然の結果ね」

「はは、厳しいなお姫様。けど、俄然燃えるぜ?けどな、3回戦はオレ達がもらうぜ!そしたらシェラ」

冷ややかに言えばリティルは、いつも通り勝ち気な笑みを浮かべて、瞳を見返してきた。

「祝福のキス、してくれよ」

「何を言っているの?なぜわたしがあなたにそんなことをしなければならないの?」

平静は保てたと思う。

「なぜって、そりゃ、オレが君のこと好きだからだぜ?」

斜め後ろに控えていたカザフサが、思わず吹き出して、慌てて顔をそらしていた。

「な――何を、言って……」

挑戦的な瞳で笑うリティルに、シェラは顔の温度が上がるのを止められなかった。

「ハハ、君は最高に可愛いよな!約束だぜ?シェラ」

赤面するシェラにリティルは満足そうに笑うと、驚く人々を置き去りに、走り出すと一度だけ振り向いた。

「約束だからな!」

……念を押さないで……唖然としてしまったシェラは、皆の視線が集まるのを感じて、威厳など忘れてその場から逃れるように走ってしまった。

 忘れていた。歌い終わったシェラは、昼間のことを思い出して、バルコニーの手すりに額を置いた。

忘れていた。リティルは、シェラを手放す気はないのだ。どんなことをしても、取り戻そうとするだろう。何者にもなびかないと有名な風の王に見初められるということは、そういうことだ。

「わたしは、偽りの姫でしょう?」例え、そう言ったとしても、彼はキョトンとして言うだろう「ああ?偽り?オレが好きなのは、君だけだぜ?」と。

そうではないと言っても、だからなんだよ?と取り合わないだろう。

何をやっているの?クローディア。本物の姫があまりに不甲斐なくて、イライラする。戦闘でも役に立たなくて、努力してそれなら、騎士が騎士だからと同情も買えるが、努力している素振りも見えない。

そして、自分の騎士が、他の巫女を堂々と口説いたというのに、その行動に物申すこともしなかった。完全に空気だ。いないのと同じだ。すでに、人々の中から忘れ去られ始めている。わかっているのだろうか。あの娘は、生きる場所すら失っていっているということに、まだ気がつかないのだろうか。

ちなみに、面と向かって宣戦布告された形になったカザフサは、その場では何も言わなかったが「悔しくないのか?」と問われ、「3回戦もリティルに勝てば、問題ないだろう?」とシレッと返していた。カザフサがそう言ったことは、瞬く間に広まり、カザフサはヘタレの汚名を着ずにすんだ。汚名を着たとしても、3回戦を勝ち抜けば、カザフサは態度で示したこととなり、ヘタレ疑惑は払拭されることだろう。

 シェラは、そっと唇を指でなぞった。

『君を離さねーよ。君だけだ。シェラ』

わたしにも、あなただけよ。どんな結末が待っていたとしても、あなただけよ?リティル。あの日のリティルの言葉に、シェラは返す。

もしも、風の王の妻となる姫だと言われて育っていなかったとしても、シェラは、リティルを選んだと思っている。そしてリティルは、シェラを得ようと努力してくれたと思う。

そういう人だ。どんなに困難でも、決して諦めない。でも……

「偽りより、本物の方がいいでしょう?リティル……」

15代目風の王・リティルの傍らに立つため、シェラも努力を怠ったことはない。

不老不死である精霊の王が、15代も代替わりしたのは、風の王という世界の刃には常に命の危険が付きまとうからだ。戦う事が宿命の精霊なのだから。花の姫は、風の王を守る為に生まれる精霊だ。しかし、死を導く者が命を育む者には触れられないと、花の姫を娶った王はこれまでに2人だけ。そうして、封印された初代とリティル以外の風の王は、戦いの末命を散らせた。

シェラは、リティルを守るため自らも、戦場に立ち戦ってきた。

それはすべて、リティルと共に生きたいが為だった。例え、リティルが風の王として予定より早く目覚め、本来出会わないはずだったシェラと出会ったために、運命を曲げてしまったのだとしても。花の姫として精霊の異界・イシュラースに渡り、精霊としての知識を得ていく中で、ふと、シェラは思ってしまったのだ。本来、15代目風の王と出会うはずだった花の姫の魂は、どうなったのだろう?と。そうしてシェラは知ってしまった。花の姫になるはずだった魂は、まだこの世にあるということを。

その魂は、覚醒せずに衰退と繁栄の異界・グロウタースで人知れず輪廻転生している。

リティルに話したことがあったが、彼は「はあ?本来オレの番になるはずだった花の姫の魂が、グロウタースで輪廻転生してるって?……いや、君がいるのに、覚醒するわけねーだろ?オレが死んで、16代目が目覚めたら、神樹に帰ってくるんじゃねーか?」とまったく取り合ってはくれなかった。だから、救われていたのだ。リティルが「彼女」を捜す素振りを見せなかったから。

「シェラ、ちょっといいか?」

 部屋の中に戻り、扉を閉めていたシェラは、いつの間にこちらに来ていたのか、カザフサに呼ばれた。振り返ると、彼は少し戸惑っているようだったが、やがて口を開いた。

「2回戦の前の日、リティルと話す機会があったんだ」

2回戦の前日。それは確か、カザフサが決闘を申し込んではどうかと言ってきて、動揺して彼を部屋から追い出してしまった日かと、シェラは記憶を呼び起こした。

あの日、リティルも1人だった?珍しい事ねと、シェラは暗く思った。

「最終戦、リティルがオレ達に勝ったら、君を賭けて決闘を申し込むと言われたよ」

「!?」

シェラが言葉を紡げないでいると、カザフサは言葉を続けた。

「受けるよ。君が嫌だと言っても」

「カザフサ……」

「オレは、君を愛せるよ。でも、君の心はきっとずっと、リティルのモノなんだろう。諦めないでくれないか?相手があのリティルなら、あなたは諦めなくていい」

「カザフサ、でも――」

「そうなった場合、オレも全力を尽くす。君は王妃にふさわしいから、オレだって惜しいんだ。だけどシェラ、王族が望んだ相手を得られる可能性は低い。だからこそ、望んでほしいんだ。わかってるだろう?リティルとなら、望んだ未来が手に入る」

カザフサの言葉が、優しすぎてシェラは傷ついた。

シェラの望む幸せは、リティルにしか運べない。事実であるだけに、突きつけられたシェラは泣くしかなかった。

「了承してくれたととっていいね?想い続けるんだ、シェラ」

「カザフサ……だったら、あなたも望むべきよ!」

掃き出し窓を背に、シェラは叫んでいた。シェラの叫びに、カザフサは力なく笑った。

「望んでるよ。クローディアにオレを望んでほしいと、ずっと。でも、無理強いはできない。戦う気のない者に、オレの隣は務まらないんだ。オレは、王になることが決まっているから」

「!」

――オレは風の王を正式に継ぐ。そうすれば、もう後戻りはできない

かつて、グロウタースの民をやめ、風の王という過酷な精霊になることを決めたリティルと、王になると宣言するカザフサの姿が重なった。

シェラには、まだリティルの傍らに立つ力も精神もなかったシェラを、支えてくれる人達がいた。皆に励まされ、シェラはリティルの隣へ押し上げられた。

クローディアを、わたしが育てろというの?育てた結果が、カザフサの為ではなく、リティルの為となってしまうとしたら、そんな皮肉なことはないわね。シェラの涙は止まらなかった。

クローディアには、導きが必要だ。

それがわかった。わかってしまった。だが、彼女を導くことは、シェラの命を自ら断つことに等しかった。だって彼女は、本物の花の姫。リティルが出会うはずだった、シェラの血を引く、シェラの娘となるはずだった魂を持つ娘なのだから。

 運命が、運命のままだったなら、母となったシェラが風の王と結ばれる娘を見て、何を思っただろうか。素直に祝福できたのだろうか。それとも、どうしてわたしを選んでくれなかったの?と、娘とリティルの前に立ちはだかる存在となったのだろうか。今、クローディアと関わらなければならないとしたら、シェラの辿る道は、後者だと言える。

受け入れられるはずがない。

受け入れられるものか!愛するあの人のために育て、あの人の愛を失って、2人して去るその背に「幸せに」とはとても言えない。

顔を上げたシェラはカザフサを見た。

かつてのリティルと同じように、王という道を行くと宣言する彼はきっと、精霊ではなくなるシェラの為に世界が用意した存在だ。

「カザフサ、約束してほしいの」

「なに?」

「リティルが失敗したら、あの人のことを……忘れさせて……」

「わかった」

おやすみと、カザフサは泣いているシェラをそのままに、部屋を去った。


 乾いた風に、薬草の香りが溶けている。

「いやはや、研究所というか吸血鬼量産工場というか、その施設が闇の力で封じられているとは厄介ですな」

2回戦目、リュカ組とインファ組は適当に討伐数を稼いだあと、件の施設を捜して敷地内を歩き回った。大まかな地図はリュカが持っており、それを頼りに歩いたのだが、ある場所だけ意図的に避けさせられる場所があることがわかったのだ。その場所は強力な闇の力で封じられていて、インファの持つ雷光ではこじ開けることはできなかった。ひとまず規模だけを調べて今回は引き上げたのだった。

「オレは、あなたの優秀さが恐ろしいですね」

インファはリュカと密会していた。

薬草園は、この宮殿で1番人気のない場所だろう。デートなら、季節の花が咲き乱れる庭園の方が華やかで美しいからだ。

「お褒め預かり光栄ですなぁ。しかし、それもこれも、インファさんの助力あってのことですよ。いやぁ、わたしなんぞ、まだまだ」

「百年ちょっとで、オレを越えてもらっても困ります。しかし、案外大規模でしたね。ただ造っているというだけではなさそうですね」

調子のいいリュカにインファは苦笑した。彼を協力者にして本当によかった。適度に腹黒く大人で魔導バカのリュカに遠慮はいらず、両親のことでイライラしがちだったインファは救われていた。ストレスが減れば頭も冴える。当初の目的は難なく達成できそうだ。

「はあ、常時産み出せば、10日のうちに数は揃えられますからな。研究施設が併設されてるとみて、間違いないでしょう。さて、あれ、どうやって破りましょうねぇ」

リュカの雷魔法と合わせてみたが、破るまでには届かなかった。

「闇を打ち払うだけの光が必要ですね……。シェラ姫に矢を1本もらっておきますよ」

 シェラと聞いて、リュカは面白そうに小さく笑った。

「シェラ姫と言えば、やりますなぁ、リティル様は!」

「頭が痛いですよ」

ご褒美のキス?父は何をふざけているのだろうか。ダメだ。風の城では許せることが、ここではいちいち癇にさわる。

「いいじゃないですか!こちらは、大いに楽しませてもらってますよ。しかしインファさん、精霊は別の精霊の肩代わりなんてできるんですかな?偽りの花の姫、とは、いったい?」

偽りの花の姫。リュカは本当に優秀だ。どんな話術を使ったのか、シェラの秘密を暴いてきた。それが「偽りの花の姫」だ。インファも何のことなのかまったくわからない。

「わかりません。ただ、シェラは人間からの転成精霊なんです。本来花の姫の力を受け継ぐべき者ではないのだと、言いたいのかもしれません。しかし、王が手の平を返すはずがありません。それがこの間の騒ぎです」

あれでも父は、何とか母に取り入ろうとしているのだと、インファは何とか溜飲を下げた。だが、イライラが治まらない。このままあの娘の行いを許そうものなら、2人とも槍の錆にしてしまいそうだ。

「いやはや、すでに何百年も夫婦をやっているとは思われない初々しさでしたなぁ。カザフサ様はどうやら、お2人が両思いだと知っておられるご様子。そのうち決闘して、あるべき形にするのでは?」

「であるなら、3回戦の後でいいはずです。シャーナは上手くやれそうですか?」

「大丈夫ですよ。未来の宰相夫人です。可愛い顔してなかなかやる女性です。必ずや、クローディアにすり寄ってみせますよ」

「まったく……無害な顔をしてどんな魔物なのか、見物ですよ」

さっさとカザフサに引き取ってもらいたい。だが、それではリュカも困るだろう。あれに1国の王妃は務まらない。小説『ワイルドウインド』に描かれているシェラの姿とは雲泥の差だ。シェラはいつだってリティルを想い、そして立ち向かった。治癒の魔法しか持たないただの人間の娘だったというのに、母は本の中でも今と変わらずに気高く勇ましかった。それに引き換えクローディアは。あれが継母になる?冗談じゃない!

「インファさん……それはなかなか辛辣な。曲がりなりにも、カザフサ様が見初めた女性ですよ?せめて悪女と言ってくださいな」

「それもどうかと思いますよ?」

「ははは、今回も見事なまでに、リティル様におんぶに抱っこでしたからなぁ。そろそろ実力を知りたいところですな」

実力……そんなものがあればいいが……。とインファは再びため息を付いた。

インファは、あんな娘を懐に入れ、無理をしていることが丸わかりなシェラを放っておくリティルの神経を疑っていた。

「リュカ」

 険しい顔のインファとお気楽な顔のリュカ。2人のいる東屋に、神妙な顔のシャーナが戻ってきた。

「おや、失敗しましたか?愛しい人」

愛しい人?わざと甘い言い方をしているリュカに、一瞥をくれ、インファもシャーナを見た。失敗したととれる、浮かない顔だった。

「それが……クローディアに魔法の手ほどきを持ちかけて、その気にさせたまでは順調だったのです」

その気にさせた?あの、精霊なら今にも消滅しそうな、どんどん影の薄くなっているあの娘を?インファは思わず先を促していた。

「それは、すごい成果ですね。しかし、その浮かない顔はどうしたんですか?彼女の魔法は、壊滅的でしたか?」

「いやはや、インファさんは毒舌がビリビリきますな。シャーナ、こちらにおいで」

リュカはシャーナを隣へ座らせると、先を促した。

「シェラが現れまして、クローディアへの指南役を取られてしまいましたのよ!」

「……どういう風の吹き回しですか?」

シェラがクローディアに魔法指南?薄ら寒さしか感じないと、インファは顔をしかめてしまった。

「優しげな微笑みも素敵ですけど、絶対零度の眼差しも素敵です!」

「あまり和やかではなかったんですね」

楽しそうなシャーナとは対照的に、インファは身震いしてしまった。

「あまりに的確で、わたしの出番はありませんでした……。明日も頼まれているのですけれど、なんと!シェラも来るのですわ!わたし、感激です!」

野生の勘で魔法を使うリティルと違い、シェラは研究熱心だ。智の精霊とも魔法談義に花を咲かせられる魔導士なのだ。エフラの民とはいえ、若すぎるシャーナでは太刀打ちできなかっただろう。

「的確なのはさすがですが、カザフサとリティルはどんな反応を示すんでしょうか?」

「セリアさんが偵察してますわ。騎士お二人の反応がワクワクものですわね」

シャーナは嬉々として観戦するようだ。フワフワとして見えるが、確かに肝の据わった女性のようだ。

 絶対零度の眼差しだったというシェラと、恋敵といっても過言ではないクローディアの間でも、始終こんな雰囲気でいたのだろうなと、インファはシャーナをマジマジと見てしまった。その後、喉が渇いたというシャーナのために、インファ組付きのメイドを呼び、3人でお茶していると、セリアが戻ってきた。

その顔は、シャーナが戻ってきた時と同じく浮かない。

「どうでしたか?セリア」

「リティル様は、思い切ったなって笑ってたわ。カザフサは、シェラ様を気遣ってたわね。それはそれは大切そうに!思わず、シェラ様をお願いしますって思っちゃったわよ!」

カザフサは不器用そうだが紳士だ。シェラに気を使う様は、まさに騎士だ。そこは、リティルではそうはいかない。リティルはあんな容姿だが、オレについてこい!というタイプだ。ガッチリ手を握ることを忘れないが。

「母さんが人間に下るなら、オレも一緒に下りますよ」

「おや、インファさんは、王子様でしたか。それにしてもクローディア、嫌われてらっしゃる」

「今更、シェラ以外の誰を母と呼べますか?母を裏切る父なら、これ以上仕えられません」

シェラの位置にクローディアが納まるということは、そういうことだ。歴史が長い分、すげ替えればいいというそんな単純な問題ではない。問題ではないのに、何かおかしい。おかしいと思うのだが、明確な形を捕らえられない。

「インファ、早まっちゃダメよ?」

「今回のこと、許す気はありません。明日、その魔法修行にオレも行きます」

「なんて豪華!リュカ、わたし、生きていられるかしら……」

「ははは、わたしの腕の中で以外、死んではいけませんよ?」

シャーナはリュカに抱き寄せられ、ポッと頬を赤く染めた。そんなやり取りを見せられたインファは、大きなため息を付いた。

その夜「偽りの花の姫」という言葉をインジュに訪ねたインファは、とんでもない仮説を聞かされる事となった。

それは、クローディアが本物の15代目風の王・リティルの花の姫ではないか?というものだった。


 ボンヤリ、訓練場の回廊の低い壁の上に腰を下ろしていたクローディアは、名を呼ばれ、ハッとして顔を上げた。

皆には、クローディアの事が見えていないかのように、リティルしか見ていなくて、そんな自分に声をかけてくる者がいるとは思わなかったのだ。そのリティルは、数人の騎士に囲まれ、忙しそうだ。顔を上げれば、そこにいたのは長身をかがめた、エフラの民の女性だった。

「シャーナです。クローディア」

「……こ、こんにちは……」

挙動不審に答えれば、シャーナは困ったように笑った。

「何もしません。ただ、あなたはこのままでいいのか?と聞きたくって」

一見するとおっとり見える彼女の瞳は、笑っていなかった。

「リティルに……ふさわしく、ない……?」

「自覚あるんですか?わかってるのに、行動しないのはなぜですか?」

遠慮のない言葉に、クローディアは息が詰まった。

「魔法を、教えてあげましょうか?」

「え?」

クローディアは瞳を見開いて、シャーナを見返した。その視線をうけて、シャーナは優しく微笑んだ。

「思った通りです。あなたは、どう学べばいいのかわからないのですわ。大丈夫です。巫女に選ばれたのですもの、才能はありますわ。あとは、やる気だけです」

やりますか?シャーナに問われ、クローディアは頷いていた。

 シャーナは、訓練場の隅っこにクローディアを誘った。

「得意魔法は何ですか?」

「えっと……治癒と防御系……しか……」

シャーナはなるほどと頷いた。

「攻撃系を持っていないから、そんな弱腰だったのですね?大丈夫です。あなたの騎士は素早いですから、下手にこちらが攻撃してしまうと、巻き込んでしまいます。バランスはとれていますよ」

彼に合わせられる攻撃系の巫女は、シェラくらいだとシャーナは言った。

「しかし……カザフサ・シェラ組に勝とうと思うと、手数がほしいですわね」

シャーナがどうしたモノかと悩み出した所だった。

「わたし達に勝つつもりなの?」

周りの温度が、2度は下がったかと思った。声にそちらを見れば、やはりシェラが立っていた。

冷たい眼差し……クローディアはこんな眼差しの人のどこがそんなにいいのかと、頭をよぎってしまった。しかし、カザフサと親密な様子を、リティルは痛そうに見つめていた。

普段底なしに明るいリティルの、そんな切ない顔を見る度、クローディアは胸が痛くなった。リティルにそんな瞳をさせるシェラを、クローディアは嫌いだった。

「リティルは、怪我もお構いなしよ。2回戦ではかなり無茶をしていたわね」

「見てたの?」

「見ていなかったの?」

そう返されて、クローディアは押し黙った。そんなクローディアに、シェラはため息を付いた。

確かに、戻ってきたリティルの服が所々破れていた。けれども、傷はなかった。故に、リティルに怪我はなかったのだと思い込んでいたのだ。クローディアは、いたたまれなくて、俯いてしまった。

 そんなクローディアの上に、声が降ってきた。

「攻撃を跳ね返しなさい」

「え?」

「見えないならば、彼が受ける攻撃のすべてを3倍返しすれば、あなたでも討伐数を稼げるわ」

「3倍返し?なんて魅力的な言葉!」

ずっと黙っていたシャーナが目を輝かせて食いついた。あまりの食いつきに、シェラは若干引いていた。

「あなたはシャーナね?わたしに攻撃して。防御魔法をかけるのを忘れてはダメよ?」

「はい!行きます!ファラミュール!」

シャーナの声とともに、炎の球が産み出され、1直線にシェラを襲った。シェラはスッと片手の平を火球に向けた。

バチンッと一瞬、シェラの手の平と火球の間に透明な壁のような物が見えたかと思うと、バラバラになった火球がシャーナに跳ね返っていた。

「攻撃反射の障壁よ。これは相手に跳ね返るものだけど――シャーナ、もう一度攻撃してみて」

「はい。何度でも!」

シャーナは嬉々として再び火球をシェラに放った。バチンッとシェラの張った障壁に火球が当たったところまでは同じだったが、今度はシャーナに跳ね返らず、シェラの周りに花火のように散った。

「体の周りに攻撃を無差別に跳ね返す障壁よ。これをマスターすれば、少しはリティルの助けになるでしょうね」

シェラは、教えてあげてとシャーナに構築式を手渡した。

魔法は、魔道書を読んで構築式を学ぶほか、こうやって、直接魔力で書いた構築式をもらって覚える方法がある。

「なんて綺麗な構築式!しかも物理も跳ね返すなんて、ああ……そんなことが……!ありがとうございます!シェラ!」

小躍りするほど喜ぶシャーナに「大袈裟ね」とクスクスとシェラは笑った。その、温度のある微笑みに、クローディアは釘付けになった。同い年とは思われないほど大人びた彼女が、愛らしく年相応に見えたのだ。

「明日また同じ時間に。クローディア、シャーナ」

そう言ってシェラは、微笑みを浮かべて去って行った。彼女が訓練場を出るのを見計らっていたのだろう、リティルが駆けてきた。

「今のシェラだよな?あいつに魔法習ったのか?思い切ったな」

「また明日も教えてくれるって」

「へえ?そっか。これは、キスしてくれる気なんだな?」

リティルは、茶化すような嬉しそうな笑みを浮かべた。それから、クローディアはシャーナから構築式を学び、それをひたすら思い描く訓練をするように宿題を言い渡されて、シャーナと別れた。

短いシェラとシャーナとの会合が、クローディアが先を指し示す光を見た瞬間だった。


 共同部屋でひたすら練習していると、風呂を済ませたリティルがヒョッコリやってきた。

「楽しそうな顔、してるな」

「え?そう、かな?」

「ああ。君、ずっと張り詰めた顔してたからな。何にもしてやれなくて、ごめんな」

「ううん。リティルはずっと守ってくれてたよ。わたしが、何もできなかっただけで……」

リティルは隣に腰を下ろしてきた。

「しっかし、3倍返し?障壁魔法で?そんな発想なかったぜ」

「リティル、攻撃特化だもんね」

「はは、防御考えろよって怒られるんだけどな。超回復能力持ちだからな。あんまり気にならねーんだよ」

超回復能力は、たしか、傷の治りが異様に早い能力?とクローディアは思い出した。その能力は、ウルフ族が基本的に持っている。混血のクローディアには受け継がれなかったが、ウルフ族のカザフサが持っていた。

以前、怪我したカザフサを治療しようとしたら、必要ないと言われ、目の前で傷が塞がるのを見たことがあったのだ。

「……怪我、してたんだね」

「はは、悪い」

言わなかった理由はわかる。クローディアは怯えてばかりだった。見せるまでもなく治ってしまうこともあり、怖がらせないために、リティルは言わなかったのだ。

「クローディア、カザフサが何者なのか、知ってるか?」

え?と顔を上げれば、神妙な顔のリティルと目が合った。

「あいつ、王子だぜ?それも、次期王だ」

クローディアは、開けるだけ瞳を開いていた。何か言おうとしたが、声が出ずにパクパクと口がバカみたいに開閉するのみだった。

「許してやれよ?シェラに鞍替えしたわけじゃねーんだ。王妃ってなると、いらねー苦労させるって、それで君に近づけなかったんだ」

嘘……だって、カザフサは、うちの臨時従業員で、亜人の王城よりずっと遠い国境に住んでて、わたしの恋人で――クローディアの頭の中で、果樹園で仕事していたカザフサの姿が闇に沈んでいった。とても近くで笑っていたその顔がひび割れて砕け散る。

嘘……嘘うそウソ!全部嘘だった?

初めから手の届かない人だったんだ!

どうしてどうして?だったら、どうして!

わたしとは――

「遊びじゃないぜ?あいつは君に、安らぎを感じてた。オレも同じだからわかるんだ。クローディア、あいつがほしいなら、君が変わらねーとダメなんだ。君があいつをほしいっていうなら、オレが全力で手を届かせてやる。どうしたい?」

泣きじゃくりそうになったクローディアは、リティルに両肩を掴まれその瞳を覗き込まれた。心の中はグチャグチャだった。

「リ、ティ――ル……わ、わた、し……」

「うん」

「カザフサ、が――」

「うん」

「カザフサ――いい――ごめ、ごめんなさい!」

「ああ、わかった。今は泣けよ。でも明日からは、生まれ変わってもらうぜ?あいつの理想は高いからな。弱音吐いてる暇なんかないぜ?」

「う、うんうん!」

抱きしめられて、クローディアは、リティルの肩で泣き続けた。

 わかった。やっとわかった。

シェラが氷のような瞳をしていたわけ。

リティルに守られて、何もしないクローディアに怒っていたのだ。

シェラは、カザフサの事を知り、王子と姫という立場から、リティルを切り捨てようとしたのだとやっとわかった。

お互いに、誰がふさわしいのかわかっているからだ。

リティルは、どんな苦労もするつもりで、貴族的な立ち居振る舞いを身につけたのだろう。だが、選定の儀で、望んだ相手に手が届かなかった。決闘という手段があるが、クローディアがカザフサの隣にふさわしいとシェラが思わなければ、彼女は了承しないだろう。

この宮殿を出れば、リティルの今期最強の騎士という肩書きは、隣国の王子という肩書きに敵わない。シェラは、王子を袖にして、リティルを選ぶことで彼の受ける、悪意という耐えるしかない攻撃から愛する人を守ろうとしたのだ。

カザフサも同じだった。今のクローディアでは、亜人の国の王の隣には立てない。クローディアは、自分のせいで、シェラとリティルまでをも引き裂いてしまっていたなんて知らなかった。それを知ったからと言って、たった1年でカザフサの隣にふさわしい自分になれるとは思えない。けれども、今こうやって想い人でない者を抱きしめてくれるこの人を、不幸にしたくないと思った。

せめて、シェラがリティルを選べるように、足掻こう。クローディアはそう決めた。

リティルの巫女に選ばれた自分を、信じようと思った。


 翌日、訓練場に出向いたクローディアは驚いた。

シェラとシャーナの他に、冷たい眼差しのインファがいたからだ。

「怖えーなー。どうして、おまえまでいるんだよ?セリアどうしたんだよ?」

問われたセリアは、曖昧に微笑んだ。「インファが行くって言うから」と答えたのみだった。

「シェラ姫が、あなたの巫女に稽古をつけるというので、監視に来たんですよ」

「監視いるか?シェラはゴツいお姫様だぜ?オレのこともいらねーって可愛げねーこと言うんだぜ?」

「浮気者は黙ってくれませんか?」

冷たい瞳で、インファはリティルを見下ろした。あまりの恐ろしさにクローディアは震え上がってしまい、自分のせいなのだとリティルを庇うことができなかった。リティルはというと、インファを真っ向から睨み付けた。

「……言ってくれるぜ。顔貸せ!インファ」

リティルの雰囲気が一変するのを感じて、クローディアはオロオロして、インファと連れだって行ってしまうリティルと、何も言わないシェラを交互に見ていることしかできなかった。シェラは小さくため息を付くと、言った。

「放っておけばいいわ。始めましょう?クローディア」

「はい!」

シェラは、クローディアの歯切れいい返事に、僅かに瞳を見開き、フフと優しげに微笑んだ。クローディアは、その母親のような眼差しに戸惑ったが、すぐに気持ちを引き締めた。壁際に、影のように佇むカザフサに気がつかないまま。

 リティルに連れられてシェラ達から離れたインファは、間合いを取ってリティルに対した。

「どんな魔法を使ったんですか?」

インファも、クローディアの中で何かが変わったことはわかった。これでも、魂を導く風の精霊だ。努力する者、足掻く者を祝福する心を持っているのだ。

「ああ?クローディアか?愛の力なんじゃねーか?」

浮気者と罵ったことを、演技なく本気で怒っているらしい。リティルが風の中から双剣を抜くのを見て、インファは槍を構えた。

オレとて、ほとほと頭にきてるんですよ!インファはイティルを睨んでいた。

「あなたの行いは、裏切りですよ。オレも、許すつもりはありません」

「オレにはあいつだけだ。カザフサを選んだのはシェラだろ!」

グッと地を蹴ったリティルの姿が、一瞬でインファの目の前にあった。インファは驚いた様子なく僅かな動きで、リティルの一刀を躱していた。

「偽りだと、そんな古いことを持ち出して悩んでいますよ?」

「はあ?」

斬りつけた剣を槍の柄で受けられたリティルは、眉根を潜めた。

「クローディアは何者なんですか?あの人を惑わせる者を、オレは許しません」

グンと槍の柄がしなった。力任せに弾き飛ばされ、リティルは空中で一回転すると足から着地した。僅かに動揺したリティルは、着地点をインファに狙われ、鋭く突きを見舞ってくる彼の攻撃に逃げの一手しかなかった。

「失いますよ?いいんですか!」

リティルは足を踏ん張ると、インファの突きをギリギリで躱し、槍を脇に挟み止めた。突きつければ、そんな危機感は持っていたらしいなとインファは少しだけホッとした。

顔を上げたリティルの表情は、怒りと苦渋に満ちていた。

「放さねーよ……オレはあいつの親父に、誓ってるんだ!必ず、幸せにするってな!」

 思い出してほしいのは、リティルの方だ。

オレに恋い焦がれて、体当たりの告白繰り返したくせに、偽り?今更、今更何言ってんだよ!とリティルは怒りが湧いていた。

「オレから離れるなんて、許さねーよ……。とんでもねーヤツを選んだんだって、あいつに、思い出させてやるさ!」

容姿も背も、可憐で美しいシェラに釣り合わない。加えて風の王は過酷だ。不老不死なのに、死を眼前に突きつけられる毎日だ。そんな自分が夫でいいのか?シェラにはもっと、別の幸せがあったのではないのか?とリティルは確かに迷ってきた。愛の言葉を惜しまないシェラに甘えていたことも確かだ。だが、手放せない。手放してはやれないのだ!

「では、実践してください。あの人の想いは、溺れるほど深いです。もうすでに、定められた終わりに向かって、走り始めていますよ。止めてください。あなたにしか、止められませんよ!」

睨むインファの瞳に必死さを見て、リティルは訝しがった。

まだリティルは、シェラを失う事になる結末を、思い描けてはいなかった。それが、ずっとリティルとインファの間にある危機感の相違だった。

「インファ?」

インファは、槍から手を放した。槍を手にしたリティルは、インファに返す為に近づいた。槍を受け取りながらインファは、堂々と副官の顔をしてリティルを見下ろしていた。その瞳に、リティルはホッとしていた。ここへ来てずっと、インファはリティルをダメな父親としか見てくれなかった。そんなことは初めてだ。仕事に来ていて、王と副官でない間柄なんてあり得ない。何を演じていようが、インファが私的なことを仕事中に持ち込むことはなかった。

「オレ達はこの茶番から降ります。誰が嵌めたのか、もうそろそろわかると思いますよ。……忘れていましたよね?」

忘れていた。シェラの事で頭がいっぱいだった。そう言えば、闇の精霊に嵌められたんだったと、リティルはやっと思い出した。

「はは」

笑うしかなかった。風の王が聞いて呆れる。インファは盛大にため息を付くと、気を取り直すように言った。

「まったく、あなたという人は。今回はいいです。あなたは、引き続きあの人達から目を離さないでください」

あの人達――クローディアとカザフサか。リティルは、この茶番の中心にいる2人を、2人を見ずに脳裏に浮かべた。関わってしまった。というか、こちらが入り込んでしまった為に運命が拗れてしまった2人だ。このままというわけにはいかないが、闇の精霊が本命なのだが……。

「……いいのかよ?」

「戦力外は戦力外らしく、敷かれたレールに乗っていてください。見届けるんでしょう?途中下車は許されませんよ」

「だな。あいつのことは心配するなよ。逃げるなら、地の果てまで追いかけて捕まえてやるからな」

そう言ってやればインファは、小さく息を吐いて苦笑した。いつものインファだ。よかった。副官に見限られる王になるわけにはいかない。ただでさえ、精霊的年齢がリティルの方がインファよりも遙かに下なのだから。

「この世界でケリをつけてくださいよ?オレもあまり長い休暇は好みません」

「はは。わかったよ。あいつが相手じゃ、どこまでやれるかわからねーけどな」

「しっかりしてください。3戦目、負けたら承知しませんよ?」

「ああ、それは絶対勝つから任せとけ」

ぜってーどこからそんな自信が湧くのかわからねーって、呆れてるな。と思ったが、それでいい。暗い顔をしていては導かれる者が不安にしかならない。だからリティルは笑うのだ。

 そして迎えた3戦目。

リティル組は見事首位に返り咲いたのだった。

「シェラ!約束だぜ?祝福のキス、くれよ!」

「こんな公衆の面前で言わないで」とシェラの瞳が言っていた。その狼狽えた瞳が、リティルの知っているシェラで嬉しくなる。

「――!」

嬉しすぎて、周りに人がいることを失念した。

気がついたら、シェラの腕を捕らえてグイと引き寄せていた。無防備にリティルの方へ数歩よろめき距離の縮まった彼女の頬に手の平を滑り込ませて固定すると、リティルはシェラの唇をいつものように奪っていた。

「――そういえば、人前だったな。ごめん」

そう言った瞬間、シェラの紅茶色の瞳が羞恥に潤んだ。そして、高い音を立てて、リティルは平手打ちを食らっていた。


 茶番から降りると風の王に宣言したインファは、リュカを伴ってこの宮殿を取り仕切る執事のセバスを捕まえていた。今回はセリアと別行動だ。彼女には魔法の修行をしているクローディアの様子を監視してもらっている。

表情を崩さない人間の執事は、インファの訪問の理由を知っているようだった。ならば、細かい説明は不要だろう。インファは少しだけ、力の封印を解いた。

「セバス、すでにユリアナからだいたいのことは聞いていると思いますので、単刀直入に言います。オレとセリアの両名は精霊です。そして彼はオレの契約者です。今後、自由に動く許可をください」

この宮殿には、使用人エリアがあり、そこへは客である騎士と巫女は入れない。

玄関ホールにいたセバスと接触すると、中年の紳士はインファとリュカを迷わずそのエリアへ誘った。

 シンプルながら豪華な造りをしているインファ達が生活していたエリアと異なり、こちらは魔導研究所の体をなし実用的な造りになっていた。重々しいダークブラウンの木製の家具が並び、白が基調で明るく浮かれるような雰囲気の客人エリアとは異なり、重厚で落ち着いた、仕事がはかどりそうな雰囲気だった。

「ほほう?さすがは獅子王ですな。素晴らしい研究所です。宰相なぞやめてこちらに就職したいですな」

リュカは備え付けられた巨大な水晶の結晶が乗った、ただのランプにしか見えないそれを眺めて感心していた。その、台座に乗った光を宿した水晶の結晶は、どうやらこの宮殿にいる人数と同じだけあり、それぞれが異なる光、光の強さをしていた。

「何ですか?」

フムフム、ほほうと、魔導具を凝視するリュカに、インファは問うた。

「おや?インファ様には馴染みがないですかな?これは、感情――とりわけ愛情を計る魔導具ですよ。ここは集団見合いの場ですからな、誰がどれだけの想いを誰に寄せているかを計っているんです」

それを聞いてインファは苦笑いした。人の恋愛事情を視覚化されてモニタリングされていたなんて、悪趣味にもほどがある。しかし、そんなものを可視化できるとは、いったいどんな魔法だろうかと、そちらに興味を惹かれた。……リュカとは本当に趣味が合う。

「すべての騎士、巫女に相手を宛がうのが目的ですので」

セバスは当然の様な声色で、感情なく言い放った。

「……知れば知るほど、オレ達が入ってはいけない儀式でしたね……」

インファは引きつった笑みを浮かべるしかなかった。

翳りの女帝、許すまじ。インファは闇の王と全面戦争を決めたのだった。さっそくインジュに報告して、閉ざされた闇の領域を探ってもらわねばならない。攻め入るにしても、敵の姿を知らなさすぎる。

「皆、何かしらに色づいてますな。今回も順調ですかな?」

「インファ様とセリア様が見せつけてくれたおかげで、皆様すんなりと恋愛してくれております」

そういう場だと早々に知ったインファは、セリアに手を出すなと牽制のつもりだったが、思惑に加担する形になっていたらしい。それはそれで、少し悔しい。

「リュカ、どれが誰の物かわかりますか?」

「研究員ではないのでわかりかねますな。セバス、明かしてはくれませんかね?」

リュカの言葉に、セバスは鷹揚に頷いた。

「その前に1つ伺っても構いませんか?」

動き出した足を止め、セバスはインファを振り返った。

「何でしょう?」

「リティル様は風の王ですか?」

「そうですよ?そして人間の国の第4王女・シェラは、風の王・リティルの妃です。まったく、大変な事をしてくれましたよ」

インファは抑えていた力の一部をさらに開放し、イヌワシの雄々しい翼を出現させた。

リュカとセバスは、息を飲むと思わず膝をついていた。インファはかしこまる必要はないと告げ、2人を立たせた。

「オレが知りたいのは、シェラの心模様です。彼女の心は誰にあるんですか?」

シェラが風の王の妃だと知ってからのこの問いは、セバスにとって言いにくいことであったらしい。これまで平然としていた彼が、視線を外した。

「申し訳ありません。王妃様のお心を惑わすつもりはなかったのです」

カザフサに傾いていると!?インファは蹌踉めきそうになるのを押し止め、表情も取り繕った。見た目には彼が動揺したとは見えなかっただろう。

「あなた方のせいではありませんよ。精霊の心もグロウタースの民と同じです。燃え上がることもあれば冷めることもあります。しかし、それは本人にもどうしようもないものです。心を失いたくない、盗られたくないと思うのであれば、繋ぎ止める努力をするしかないんです。母の心は、カザフサに傾いているんですか?」

「半々、といったところです。しかし、どんな愛情なのかは細かく計れません。そして、同じような状態にある者がもう1人」

「クローディアですか?」

インファは嫌そうに眉根を潜めた。

「申し訳ありません」

「謝罪はいりません。あの風の王に、惚れない女性がいることのほうがおかしいんです。父の態度によるモノで、彼女のせいではありません」

「ほほう?この、金色の一際輝いてるのがリティル様ですか?一途ですなぁ。感心するくらい、シェラ様にむいておられる」

「そうでなければ困ります。王妃の心を繋ぎ止める為に必死なんでしょう。遅すぎますけどね」

インファは忌々しげにピシャリと言った。

「此度の儀式に、闇の精霊が干渉しています。オレ達は力を大幅に制限されていて、隠れている闇の精霊をあぶり出せません。心当たりはありませんか?」

「あなた方の見つけた、不干渉領域の奥に定期的に現れる精霊がおります。記録では、影法師の精霊となっております」

「定期的?常ではないんですね」

囚われていると言っていましたよね?嘘ばかりだとわかってはいたが、それでもフツフツと湧き上がる怒りはどうしようもない。インファは噴出しないように冷静を装った。

「そのようです。不干渉領域は吸血鬼を産み出している場所なのですが、先代の獅子王と精霊との間の取り決めにより、我々も手が出せません」

それは完全に理違反だ。精霊は長期にわたり異界に干渉してはいけない。精霊は不老不死だ。寿命のあるグロウタースの民では、絶対に太刀打ちできない。故に、世界は干渉できる精霊を、風の王と風の王の息のかかった協力精霊に限定している。グロウタースの繁栄と衰退を守る為だ。

厳密に言えば、神の祠も理に違反している。インファはイシュラースへ戻ったら、花の王を交えて話し合いをしなければならない。

「精霊がいいようにしている領域ということですね。了解しました。どうやら、影法師の精霊を叩く材料が見つかったようです」

「暴くんですかな?」

精霊が関わっている以上、危険だとわかっているだろうに、リュカは楽しそうに目を輝かせていた。大丈夫だろうかこの男。こんな男の妻となって、シャーナは本当にいいのだろうかと、インファは一抹の不安を覚えた。けれども、オレも大概でしたね。と、セリアを想って思い直したのだった。

「中を改めなければなりませんからね。セバス、どうしても確かめなければならないことがあります」

「というと?」

「ここで強制見合いをさせられて婚姻を結んだ者達は、皆幸せになれましたか?」

「これまでに離縁した者はいないと、記録されております。ですが、今回、すでに想いのある者が引き裂かれてしまった事態を重く受け止め、魔力の相性だけでない選定基準を設ける所存です」

「それには1つ考えがあります。問題を平らげたあと、また来ますよ。セバス、オレとリュカ組は討伐には参加しません。適当に順位操作をお願いします。安心してください。悪いようにはしませんよ。オレも妻と子がある身ですから、魔力量が多く、精霊に近づいてしまったという理由だけで、グロウタースの民らしい営みから遠ざかってしまうというのは、勿体なく感じます。恋愛事情に適任がいますから、改良しましょう」

「ありがとうございます」セバスは深々とインファに頭を下げたのだった。

 それから、セバスは別の部屋へインファとリュカを案内した。

「ふおおおおお?これはこれは!」

その部屋にも、先の部屋にあった魔導具と似たような物が並んでいた。この部屋にあるのは、球の形をした水晶だった。リュカはそれを見るや否や、目の色を変えて駆け寄っていく。

「いやあ素晴らしいですなぁ!これは魔力量を量る魔導具ですよ。ふむふむ、なるほどなるほど。?おや?これは誰の物ですかな?」

リュカは興奮気味に、様々な色で光る水晶球を確かめながら、これが誰であれが誰と確認していた。

「クローディア様です」

リュカの指さした水晶球には、ホンノリ白く色づいた透明な光が灯り、眩しいほどではないが、存在を主張するくらいには光り輝いていた。

「光魔法の使い手なのでしょうが……白が弱いですな。しかし、この輝き……魔力量が少ないというのではない……この色は、これいかに?」

その輝きは、白い光の波の間に金粉を纏い、時折透明になる光を発するシェラの霊力の輝きに似て見えた。

それを見つめていたインファは、胸騒ぎを感じた。

グロウタースの民が、透明な力を扱えるはずがない。透明な力は、別名源の力とも呼ばれ、世界を繋ぐ次元の大樹・神樹が吸い上げて幹の中を通る、精霊達に届けられる前の真っ新な力だ。それを使える精霊は、神樹に由来する精霊、花の姫・シェラと、智の精霊・リャリス、煌帝・インジュだけだ。精霊にとっても特別な力で、精霊達が色づけした力を供給される、グロウタースの民が扱える物ではない。

「まさか……あなたの仮説は正しかったというんですか……?」

――クローディアが、本物の15代目風の王・リティルの花の姫って事じゃないですかぁ?

『偽りの花の姫』という言葉を口にしたインファに、インジュが零した言葉だ。彼はすぐさま、変な事言ってすみません!と謝ってきたが、インファの心に引っかかり続けていたことは確かだ。リティルとシェラが、互いをあんなに想っている両親が道を分かつなんてあり得ないと思っていたが、言い知れない不安がずっと付きまとっていた。それが、クローディアが、神樹の力を持っているという事だったのかもしれない。それが、風の王家族にとってどんな意味があるのか。

精霊とは、理に縛られる種族。風の精霊が、反属性の大地の力を絶対に扱う事ができないように、番と定められてしまえば抗うことはほぼできない。覆せるとするならば、それは相当に強い意志と想い、認められるまで正そうとする流れに逆らい続けなければならない。

もし、もしも、クローディアが本物だと、風の王妃の場所を明け渡せという力が働いているとするならば。本物と結ばれた方が父の幸せだと、母が思い込んでいるとしたら――

「どうしました?インファさん」

考え込んでしまったインファを、訝しげにリュカが伺っていた。

「いいえ。これは、オレの手がける問題ではありません。リュカ、この力の事は詮索しないでください。この世界には、命と引き換えでしか手にできない知識があります。それがこれです。シャーナと添い遂げたいなら、忘れてください」

「なるほど、神樹由来ということですな」

「リュカ」

「心得ておりますとも。魔導士の暗黙の了解ですよ。神樹に触れる事なかれ。禁忌のことを神樹由来というんですな。いやはや、クローディアにそんな秘密がおありとは。どうするおつもりで?」

「風の王に任せます。王妃にも関わることでしょうね。情報は流しますが、判断は王に任せます」

 上級以上の意志を持つ持つ精霊は、1人として同じ力を司る者はいない。

インファの推測が正しければ、リティルの判断が、シェラとクローディアの未来を決めることになる。

漠然と、シェラが何かをしようとしていることには気がついていたが、それが、クローディアを花の姫にして、自身は身を引こうとしているとは思わなかった。

風の王なら、精霊をグロウタースの民に、グロウタースの民を精霊にできる。シェラの心が、リティルとカザフサに半々あることは、インファにとって衝撃的だったが、愛情深い人だ。先のことを考えて、カザフサを愛そうとしているのだろう。カザフサはどこまで知って――いや、彼は王族だ。シェラととっくに、利害が一致しているのだろう。

リティルとシェラの口づけ騒ぎの際、困った顔で笑っていたカザフサの様子が、インファの脳裏に蘇る。カザフサは、リティルとシェラが両思いであることを知っていて、結末いかんでシェラを受け入れる気なのだ。クローディアに未練があるというのに……。

 なんてことをさせようとしているのか。我が母ながら、恐ろしい人だ。愛する夫のために、本物の花の姫を目覚めさせ、身を引こうというのだ。そして、その先まで考えている。

父さん、母さんはあなたに捨てられる気満々ですよ?どうするんですか?

花の姫・シェラの風の王・リティルへの愛は深い。

愛する王を守るためなら、文字通りなんだってしてしまうのがシェラだ。リティルはそんな妻を警戒していた。

しかし、油断してしまったことは確かだ。

シェラは19年間人間の国の姫君だった。風の王が現れなければ、心があるないに関わらず政略結婚していたはずだ。そんな王族貴族のことを、リティルは完全には理解できない。シェラが、リティルを想ったまま誰かを選べることに気がついていないのだ。

シェラの指導のもと、クローディアはメキメキ頭角を現している。リュカが作法の指導まで行っている。クローディアは優秀な生徒とは言えないが、いい生徒だと底辺だった評価を上方修正しているほどだ。カザフサの隣に立てるためだと思っていたが、シェラは、風の王の隣にふさわしくするためにクローディアを育てているのかもしれない。

 インファには、どうすることもできない。クローディアが成長することは、花の姫としての覚醒を促す事だとしても、カザフサに押しつけるためにも成長してもらわねばならない。彼女の成長を妨害することはできないのだ。

こんな情けない報告を、父王にする羽目になるとは思わなかった。


 リティルは、教えを請いに来た騎士の1人と刃を交えたあと、休憩のために回廊の低い壁に腰を下ろした。

「なぜ、わたしのところに来るの?」

すかさず隣のシェラから、冷ややかな声が浴びせられた。

「はは、いいだろ?カザフサには、口説いてもいいって許可もらってるんだよ」

カザフサはヘンリーと試合していた。さすがはウルフ族だ。巨体の割には素早いヘンリーの攻撃を、よく見て対処している。リティルは、昔の自分を見てるみてーだなと思ってしまった。リティルも彼くらいの歳には、大人にだって負けない剣の腕を手に入れていた。あの頃はまだ、風の王なのだということも知らずにいたが。

「クローディアはいいの?」

「あいつは、シャーナとマナーの勉強するって言ってたぜ?」

シェラが魔法指導するようになって、クローディアは、あんなにベッタリだったリティルから離れて行動することが増えていた。俯きがちだった視線を前に向け、胸を張るようになった。その姿は、シェラがかつて、リティルを守ろうと花の姫になることを決めた頃の姿に似ていた。

精霊には役目がある。

クローディアを育てること。それが、シェラの精霊としての最後の仕事なのだと、今は受け入れられた。絶望でしかないと思っていたのに、今では心穏やかだ。

「シェラ、オレは君の物だぜ?」

「そうね」

シェラは曖昧に答えた。

「これからもずっと、君の物だぜ?」

「……本物の騎士にでもなるつもり?」

亜人の国に嫁ぐわたしについてくるの?そう言われて、リティルは口を噤んだ。

「あなたはこれまで、たくさんの運命を見てきたわよね?抗うことはできないわ」

「シェラ、それでもオレは足掻くんだよ。知ってるだろ?」

「ええ、知っているわ」

カザフサがこちらに歩いてくるのが見える。シェラは出迎えるために立ち上がった。

「リティル、幸せだったわ。約束を、あなたは果たしてくれたわ」

「待てよ!なんだよ?それ」

「なんでもないわ。幸せだと言ったのよ」

だったらどうして、そんな水底みたいな顔で笑うんだよ?シェラはリティルに背を向けた。手を伸ばせばそこにあったぬくもりが、手を伸ばしてもそこになくなるような不安に、リティルも立ち上がっていた。

「リティル」

追いすがろうとしたリティルを、インファが固い声で呼び止めた。振り向いたリティルは、急いで来たのだろう僅かに息の上がったインファの姿を見た。シェラを追いたかったが、彼女はすでにカザフサと合流してしまっていた。リティルは、表情を硬くすると、インファに促されて訓練場を後にした。

 そして通された、インファ達の部屋で、リティルはシェラの計画を知るのだった。  


 嘘だと思った。

クローディアが花の姫の魂を持っていて、シェラが身を引こうとしているなんて、悪い冗談だと思った。だが、それを踏まえて考えれば、彼女の行動の辻褄が合うことは確かだった。

「オレが……君以外を選ぶって思ってるのかよ!」

形振りなんて構ってられなかった。

気がつけば、インファの部屋を飛びだし、カザフサと廊下を歩いていたシェラを追いかけ、リティルはその腕を乱暴に掴んでこちらを向かせていた。怒りに燃えるリティルの剣幕に、カザフサでさえ割っては入れなかった。

「選定の儀で、あなたの巫女に選ばれなかったとき、わたしは運命を知ったのよ」

冷ややかな感情の浮かんでいない瞳で、シェラはリティルを拒絶するように見つめていた。

「だからって!覆す方法があるじゃねーか!どうして、逃げようとするんだよ!」

「逃げているのはあなただわ」

感情の浮かんでいないその瞳。リティルの知らない瞳だった。

拒絶を感じて、リティルは愕然とした。だが、ギリッと奥歯を噛むと、シェラを睨んでいた。退けなかった。ここで退いたら、失う事くらいわかっていた。

「シェラ!もういい!もう、何も言うな」

もう、手遅れなのか?リティルはぎゅうっとシェラの体を抱きしめていた。

「いつから我慢してたんだよ?最初から、最初から知ってたのか?どうして……言ってくれなかったんだよ!君が……君以上に大切なモノなんて、オレにはないんだぜ?」

 シェラはリティルの背に、腕を回すことができなかった。彼の剣幕に、クローディアの正体が知られたことがわかった。1年もの間、隠し通すことは不可能だと思っていたが、こんなに早く、クローディアの正体が暴かれるとは思っていなかった。

優秀ね。さすがだわインファ。インファはずっと、リティルの態度に怒ってくれていた。彼には珍しい、害のない女性に対しての嫌悪。インファは本能的に、クローディアをシェラの地位を脅かす敵だと気がついていたのだ。そして、彼は暴いた。そして気がついた。リティルがクローディアに構う理由を。シェラを愛するあまり、盲目となっているリティルに、インファは教えたのだ。クローディアの正体を。

そしてリティルは、怒り狂ってここへ来てくれたのだ。彼の行動など、手に取るようにわかる。本物を知ってなお、偽りを選んでくれる、積み重ねられた愛を。

「幸せだったわ。リティル」

そう呟けば、リティルはビクリと身を振るわせた。背中に回された腕に、痛いくらいに力がこもった。

「あなたと、カザフサの賭けには乗ってあげるわ」

シェラはリティルの腕を解いた。

リティルのこの勢いでは、クローディアという精霊の魂を持った娘を犠牲にしてでも、シェラを守るほうを選んでしまいかねない。

たまに混じってしまう迷い子を回収することも、風の王の仕事の1つだ。私情に流され犠牲にすれば、15代目風の王・リティルの、風の王としての信頼に傷が付く。これはもう、引けない戦いだ。

「あなたが勝てばいいのよ?そうすれば、わたしはあなたの物よ」

これでリティルは、この事案を強制終了して、シェラを無理矢理連れ帰ることはできなくなった。王としての職務を思い出すくらいには冷静になったリティルなら、決闘にすべてを賭けてくれる。それは、シェラを黙らせる手段ではない。シェラに、準備させる為の時間稼ぎなのだと、リティルが気がつくことはないだろう。

 シェラは踵を返した。

早足にならないように努めて冷静さを装い、何とか部屋に帰り着く。

「――っ!」

声なく泣き崩れたシェラの肩を、カザフサが触れた。

「リティルは勝つよ。羨ましいくらいに真っ直ぐで、あなたを想ってる。オレに気兼ねしなくていい。リティルの所へ、行くんだ」

「できない……あの人が……誰よりも何よりも大切なの……!」

「だったら、せめて、距離を置こう?クローディアにももう関わらなくていい。リティルが接触しないように、何とか守るよ」

「なぜ?あなたはなぜ、こんな我が儘を聞いてくれるの?わたしは、酷い女でしょう?」

ボロボロと涙を流すシェラが顔を上げた。カザフサは困ったように笑った。

「今はまだ、あなたの騎士だから。それに、リティルが失敗したら、あなたの夫になるからだよ」

「カザフサ……」

カザフサの指が、シェラの涙を拭う。視線をあげたシェラの瞳が、カザフサのそれと重なった。

誘われるように、2人の距離が縮まっていた。近づく距離に比例して、瞳が閉じられる。

「――」

2人は同時に、互いの唇に指を押し当てていた。

「危なかった」

「本当に」

おでこを合わせ、互いの唇に指で触れたまま、2人はクスクスと笑い合った。


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