第78話 リオの不調 ★リュー SIDE
リオ様がお休みになられてから日付も変わり、呼吸も荒くなり、熱が出て来た様なので、扉の外で待機しているサイラス殿に伝言を頼んだ。すると少ししてから奥方様と賢者様がお部屋にいらっしゃった。
「やっぱり熱が出ちゃったのねぇ……」
「ここ数日、本人は気づいていなかったみたいだが、かなり疲れておった様じゃったからのぉ」
「恐らく、10日前の賓客がいらした辺りから、無意識に緊張なさっていたのかと……表情や態度は本当に何でも無いって感じだったのですが、徐々にお顔の色が悪くなって来まして。リリアンヌが心配して休ませようとするのですが、休んだからと治る訳でも無くて……」
「そうかそうか、そなた達も頑張ってくれたんじゃのぉ。今日は嬢ちゃんにしては珍しく、甘える素振りをするから、とても弱っておったんじゃろう」
「はい。リリアンヌにも、弱ってるから抱き締めてあげて欲しいとこちらへ来る時に言われたのですが……奥方様の方が素直に甘えられると思いますので、お願いしてもよろしいでしょうか……」
困った顔で奥方様を見つめる。
「えぇ、えぇ、勿論良いわよぉ。リオちゃんは自分の事は後回しにしちゃう癖があるのよね。今回はカミルちゃんの事ばかり気になって、自分を顧みなかったのね」
なるほど、そうかも知れない。奥方様はリオ様の髪を撫でつつ、「良い子、良い子」と声を掛けていらした。まるで本当の祖母と孫の様だ。リオ様に足りないのは、甘えられる環境なのだろう。
「奥方様、無礼を承知でお願いしたいのですが」
「えぇ、どうしたの?言ってちょうだい」
「リオ様は、王宮の一室という、必ず人の目がある場所での生活に慣れていらっしゃらない。自分が落ち着ける空間がある環境から召喚されたそうなのです。ですのでもう少し……せめて御結婚されるまでは、こちらに頻繁に訪れる許可を頂けないでしょうか?」
「そうよね、普通は自分の部屋があって……王太子妃ともなれば、寝てる時にも護衛が付く事もあるものね。それがストレスになったのかもと、貴女は思ったのね?」
「はい。恐らく随分前から……下手すると召喚された日からストレスに晒されていらしたのでは、と。リリアンヌやマリー達には心を開いておりますが、他は殿方ばかりですし、色んな出来事に巻き込まれては解決なさっていらしたので……」
「気の休まる時間が無かったのね……確かに召喚されてからずっと何かしら起こってたみたいだものねぇ」
「そうじゃのぉ。カミルに相談して来るかの。このままじゃ、嬢ちゃんが潰れてしまうわい」
「本人は気づいていらっしゃいませんけどね……」
「恐らく、あちらの世界でも、無茶するのが当たり前の環境にいたのでしょうね。リオちゃんの性格から考えるとねぇ……」
「そうだと思います。ただ、たまに……女神様のお話しなどをポロッとなさるので……我々が聞いて良いものか迷い、困ってしまう事もあるのですが……」
「あぁ、デュークと話してる時もそうじゃった。スキルの内容が分からないという話しでな。女神様からは教えられない決まりだと仰っていたと……」
「何度かお会いした様な言い方なんですよね。間違い無いのは、女神様のお導きでこの世界にいらした事でしょうか……」
「えぇ、恐らくリオちゃんは、女神の愛し子で間違い無いと思うわ。ただ加護を与えられただけでは無く、ね」
「そうじゃのぉ。まぁ、女神の加護自体が滅多にお目にかかれないものじゃがのぉ?」
「そうねぇ。恐らくリオちゃんも『賢者』になる資格があるのだろうけど……」
んん??賢者になるには資格がいる?それも女神の加護?初耳である。聞いてはならない内容では?でも気になるよね……
「あの……女神の加護を持つ者が、『賢者』様になれる資格のある方なのですか?」
「そうじゃよ。ワシも女神の加護を持っておる。女神様と話した事は無いがのぉ。あぁ、加護の事は内緒じゃぞ?ホッホッホ」
「うわ……そんな大事な秘密、出来れば聞きたく無かったです……」
元々影だったから秘密を守る事は当たり前なのだが、知らなくて良い事は知らない方が、胃に優しいんだよね……知るたびに胃痛が……
「ふふっ、爺さんは貴女の事も気に入ったみたいね?そうねぇ……リオちゃんの侍女は2人?その子達も連れて来れるかしら?あまりに環境が変わると落ち着かないだろうから、リオちゃんが移動して来る時には、2人も呼んでちょうだい。隣の部屋は空いてるから、準備させましょうね」
「ありがとうございます!主が安心して過ごせる事が私の喜びです。どうぞ私の事もこき使ってください」
「ふふっ、ありがとうねぇ。婆も爺さんも、リオちゃんの為なら何でもするわぁ。一緒にリオちゃんを支えて行きましょうねぇ」
「はい!」
このお2人が味方でいてくれるだけで安心出来る。何と言っても『賢者』様と元皇女様なのだ。年の功もあり、知識も実力も申し分ないだろう。
「ホッホッホ。嬢ちゃんは着々と味方を増やしておるのぉ。幸せな時間を過ごせる様、ワシも一肌脱ぐかのぉ?ホッホッホ」
殿下が仰るには、『賢者』様は暴走しない限り、素晴らしい働きをしてくださると聞いている。どうか暴走はしないで欲しいと切に願うのであった。




