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異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜  作者: 月城 蓮桜音
第二章

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第75話 侍女達の嫌がらせ ★リオ SIDE

 『立太子の儀』の朝を迎えた。早朝から念入りに磨かれ、すっかりクタクタだが、侍女達は更に早くから準備してくれているのだから我慢我慢。マッサージを受けながらウトウトしていると、腕に痛みが走った。大した痛みでは無かったから放置したのが失敗だった。


 磨かれた後、コルセットをつけるタイミングで不穏な空気を感じた。最近、防御膜を体に沿わせる様に纏えないか練習をしていたので、纏わせてみる事に。


 私は魔力を感知する能力が高いせいで、防御膜が薄っすらと見えちゃうのよね。それが鬱陶しくて、一層の事、体に沿わせれば見えないのでは?と思ったからやってみただけなんだけどね。こんな所で役に立つとは。


 コルセットをつける侍女が「うっ!」と小声で呻いたのが聞こえた。縛る紐が手に食い込んだらしく、他の侍女に変わって再度締められた。まぁ、いくら締めても私は痛くも痒くも無いんだけどね……


 コルセットだけで30分は経過しただろうか?いい加減に待ってるのも疲れたし、そろそろ文句を言っても良いかなぁ?


「まだ終わらないかしら?」


「も、もう少しで出来ます」


「そう…………」


 慌てたらしい侍女が紐を結ぶ。やっとドレスを着せられ、鏡台の前に座った。メイクと髪のセットはリリアンヌとマリーがやる事になっている。これで一安心と思ったのだが……


「パシャン」


 ドレスに何か液体をかけられてしまった様だ。はぁーとため息を吐く。


「申し訳ございません、替えのドレスはありますでしょうか?」


「ある訳無いでしょう。この日のために作って貰ったドレスなのだから……」


「しかし、これでは間に合いませんので……」


 仕方ないので、リューを呼ぶ。


「リュー、カミルの所へ行って来て貰える?」


 リューは頷くと、颯爽と部屋を出て行った。


「えぇっ!何故殿下を呼ばれるのですか?着替えの最中に殿方を入室させるなんてあり得ません!」


「このドレスはカミル殿下に贈って頂いた物なの。殿下の許可無く他のドレスに変えられない事ぐらい分かるわよね?」


「え?殿下は女性に贈り物はなされないと……」


 後ろでは、小声で「忙しいのに殿下がいらっしゃる訳無いわよ」なんて声が聞こえて来る。


「いつの話をなさってるのかしら?リオお嬢様はカミル殿下の寵愛を賜っていらっしゃるのに」


 我慢出来なくなったらしいリリアンヌが口を挟む。


「リリアンヌ、先にメイクと髪のセットを軽くで良いからして貰えるかしら?」


「はい、リオお嬢様。殿下がいらっしゃる前に終わらせましょう」


「そんな……嘘よ!」


「はぁ……何が嘘なの?貴女は私の準備を手伝いに来た侍女では無かったの?」


「手伝いたくなんて無いわよ!あんたみたいな性悪女の面倒なんて喜んでする訳無いじゃない!」


「ちょっとあなた、カミル殿下の婚約者様に向かって失礼じゃない!」


 マリーまで声を上げる。このタイミングであまり揉めたくは無いんだけどね……


「ねぇ、何故、私が性悪女なの?他人に迷惑をかけた記憶は無いんだけど?」


「カミル殿下の婚約者候補だった子から聞いたのよ!カミル殿下を無理矢理奪ったんでしょう!?」


「えぇ?どうしてそんな話になるのかしら……?」


「あんたがこの国に来てから、カミル殿下を独り占めするために仮病まで使ってパーティーに出れなくしたり、散々我が儘言って来たのは知ってるのよ!?」


「確かにこの世界に来てから2回……1回は熱を出して、2回目は刺されたから寝込んだけど、仮病じゃ無いわ」


「じゃあ1回目は何の病気だったのよ!?」


「魔力熱って言うらしいわ。初めて魔法の練習をしてから3日目に熱が出たのよ。そうだったわよね?リリアンヌ、マリー?」


「はい、その通りでございます。魘されるリオお嬢様を心配して、殿下は毎日御見舞いにいらっしゃいました」


「嘘よ!仮病に決まってるわ!」


 堂々巡りになりそうね……人の話を聞かないで、自分の主張ばかりして来る人と話すのって疲れるわね……


「何故そう言い切れるのかしら?貴女は見てないでしょう?」


「だから!私の知り合いが……」


「その知り合いとは誰だ?」


 カミルが扉から入って来る。カミルの纏っている空気がピリピリしてるから、余程頭に来てるのだろう。


「で、殿下……」


「ん?お前は確か……ラドン伯爵家の人間では?」


「えっ、我が一族をご存知で……?」


「あぁ、失礼な事をした女がラドン伯爵家の姪でな。何かあるといけないからと調べたのだ」


「カミル、ラドン伯爵って?」


 何となく察したけど一応聞いてみる。私に絡んで来た人間でちゃんと謝って無いのは彼女だけだからね……


「ほら、廊下で暴言を吐いた令嬢がいただろう?殴り掛かって来て手の骨を折った伯爵と一緒に執務室に突撃して来た」


「あぁ、確かエイミー……だったかしら?彼女のお知り合いで?」


「あの男がラドン伯爵だ。この侍女は伯爵の孫だな」


「えっと、伯爵がオジサンの年齢だから150歳以上だとして、娘か息子が80歳ぐらいであれば確かに孫は生まれるわね……?」


 この国は全体的に見た目が若いせいで、あのオジサンに子供と孫がいる事をパッと理解出来ないでいた。まぁ、日本でも50歳のお爺ちゃんがいてもおかしくは無いが、侍女は20歳ぐらいに見えるからね……


「あの時はリオが許すと言うから釈放したのに。こんな事なら処刑しておけば良かったな」


 カミルがわざと煽っている。


「そ、そんな!エイミーは悪く無いって……」


「誰が言ってたんだ?」


「エイミーと侍女長が……」


 後ろの方に居た侍女長をカミルが睨む。


「あぁ、侍女長。君はラドン伯爵の娘だったね」


「わ、私はエイミーが可哀想で!カミル殿下の婚約者候補だったのに無下にされると……」


「はぁ――、リオに誤解されたく無いから言っておくけど、僕には婚約者候補の打診が来たとしても3日以内に全て断りの手紙を出しているよ。僕に正式な婚約者候補が居た事は一度たりとも無いからね」


「えぇっ!そんな……」


「エイミーの御両親に聞けば日付入りで書類も残ってると思うけど?打診したのであれば、だけどね?」


「それが本当なら……た、大変な失礼を!も、申し訳ありませんでした!」


「君達はリオに何をしたんだい?」


「そ、その……コルセットをキツく締めました。ドレスも汚してしまいました……」


「リオ、コルセットは大丈夫だったの?痛く無い?」


「えぇ、大丈夫よ。防御膜を体に沿わせて纏ったから、怪我もしてないわ」


「防御膜を纏った……?また面白い事をしてたんだね」


 はははっ、とカミルが笑った。やっと空気が穏やかになったかと思われたが……


「リオは僕が居なくても、大体の事は対処出来るから安心はしてるんだけどね?まさかこんなに堂々と嫌がらせを受けてるとは思わなかったよ。痛めつけておいて、何故ドレスまで汚した訳?」


「そ、その……全く苦しんでいる素振りが無かったので焦ってしまって……それに、こんな綺麗なドレスを着れるなんて羨ましくて」


「このドレスは、僕の婚約者として相応しく居られる様に、リオがこの国に来た翌日に僕がオーダーして作ったドレスだと知ってる?」


「…………存じ上げませんでした…………」


「汚した君達は弁償出来るの?ラドン伯爵家の全財産を売り払っても足りないと思うけど?」


「も、申し訳ございませんでした!ラドン伯爵家では無く、私の一存でやりました!どうか家だけはお助けください!」


「そうなる事ぐらい分かってたよね?前回、リオが許していなければ潰した家なんだから、もういいでしょ?」


 カミルが冷たく言い放つ。どうにかしなきゃと思うが、カミルの怒りは収まらないようだ。


「カミル……ごめんなさいね?私が至らなかった所為でドレスが汚れてしまったわ。でも時間も無いし、どうするか考えないとね?」


「はぁ……リオは優し過ぎるんだよ。何度もラドン家からこれだけの仕打ちをされて、また許すのかい?」


「ドレスさえどうにかなれば良いのでしょう?ねぇ、侍女長。これは何の液体で汚したの?貴女達ならドレスの染み抜きも得意なんじゃないかしら?」


「は、はい!直ぐに染み抜き致します!誰か、道具を持って来て頂戴!」


「「はい!!」」


 私はドレスを着たまま染み抜きをしてもらいつつ、メイクや髪を整えて貰った。時間が無いから仕方ない。カミルは何か悩んでいる様だが、今日は大事な日なのに申し訳無い。


「カミル、大事な日にごめんなさいね?大丈夫?疲労回復魔法でもかけようか?」


「ふふっ、ありがとう。大丈夫だよ」


「カミルの邪魔になっていなければ良いんだけど……」


「リオ、相談してくれない方が僕は悲しいよ?どんな小さな事でも相談してって言ったでしょ?僕は今日、リオが頼ってくれたから、とてもハッピーな1日を送れそうだよ」


「ふふっ、そうなら良かったわ」


 染み抜きも無事終わり、見た目は特に問題無い様に思えた。濡れている場所が少し濃い色になっているが、後は自然と乾くのを待てば大丈夫だろう。


「あぁ、リオ。今日もとても美しいよ。ドレスもとても似合っている。僕の最愛の人」


 見つめ合い、微笑み合う。今日はドレスアップやお化粧をしっかりしているから抱きしめたりキスをするとリリアンヌに怒られるのを理解してか、カミルは私の手を取り、手の甲にキスをするにとどめた。


「カミルは準備の途中だったの?」


「あぁ、僕は後は髪をセットすれば終わりかな」


「キチンとはしてるけど、思ったより地味なのね?何を着てもカミルはカッコ良いから問題無いと思うけど……」


「あぁ、これは正装なんだ。この衣装に開催する直前になったら、色々と王子である事を示す飾りをつけるから、もう少し華やかになると思うよ。それらの装飾を目立たせる為に、正装は少し地味にしてあるらしい」


「そうなのね!それを見るのも楽しみだわ。時間は大丈夫?」


「そろそろ行かなければ……リオをもっとじっくり眺めていたいんだけどね」


「また後で、ね。カミルは今日が無事に終わる事が最優先でしょ?私もカミルの姿をしっかり目に焼き付けておくわね。カッコ良い姿を見せて?」


「ふふっ。リオにそう言われちゃうと頑張らなきゃだねぇ。準備して来るよ。また『立太子の儀』でね」


 カミルは嬉しそうに部屋を出て行った。リリアンヌやマリーが微笑んで見守ってくれていた。他の侍女達は呆気に取られている様だ。私とカミルが不仲だと噂になっているのかしら?後でしっかり調べておかなきゃね。

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