第72話 王子の不安 ★リオ SIDE
『立太子の儀』まであと10日。各国から続々と賓客が訪れている。カミルと私は対応に追われていた。
賓客に挨拶して回り、夕食は晩餐会が行われる。主役であるカミルは当然、あちこちから声をかけられて全てに答えているから凄いと思うけど、疲れが少し出て来ていた。
束の間の休憩時間。王族が休憩するための部屋で、カミルに疲労回復魔法をかけてあげる。
「リオ、ありがとう。今日は隣国の皇太子が到着したから周りには気を付けるんだよ?」
「えぇ、お迎えに出た時に直ぐに分かったわ。彼、精霊を連れて来ているのね」
ソラが私の前に現れた時のような、白い雲の形をしていてふわふわと浮かんでいた。あの精霊さんも動物の形も取れるのだろうか?
「えっ……あぁ、リオには見えるのか。精霊の加護が無いと姿も見えないんだよね……僕には全く見えないからなぁ。」
「出来るだけ目が合わない様に努力はしてるんだけど、さっき私の近くまで来て、小声で何か話しかけて行ったわ。周りの音で聞き取れなかったし、敢えてスルーして気付かないフリをしたけど……既に気付いてる気がするわね」
「それでも、知らないフリをしてくれるかい?」
「えぇ、勿論よ。こちらからは動かない、でしょ?」
「うん。リオが異世界人だから興味があるのか、精霊と繋がってるから興味があるのか見分けないとね……」
「そうね。他の異世界から来た子達の所にも精霊は向かっていたから、前者だと良いんだけどね」
「本当にね……精霊関係では断るのが難しいんだよね。あちらの国には大きな精霊信仰の教会もあるし……」
招待したいと言われたら断れないし、そのまま監禁でもされたら面倒な事になるだろう。まぁ、まだ悪い人達とは決まって無いんだけどね。
「争いの種になる事だけは避けたいわよね」
「早くリオと結婚してしまいたい……婚約者ではあるけど、それでは弱すぎる」
私を守りたいという気持ちが伝わって来る。何か気になる事があるのか、いつもより余裕が無いようにも感じられた。
「カミル、『立太子の儀』が終われば、結婚式の準備を始めるんでしょう?それまでは大変かも知れないけど、私も頑張るから……」
「うん、そうだね……10日後の『立太子の儀』が無事に終わり、賓客達を無事送り出すまでだね。リオ、ごめんね?少し不安になっちゃったみたいだ」
「ううん。話してくれて嬉しいわ。こんな時だからこそ、2人で考えを共有しておくべきだと思うし」
「そうだね。僕が言える事はただひとつ。リオが僕の隣に居ればそれで良い。王子に生まれたから現状を受け入れたけど、リオと一緒に生きて行けるなら、僕は臣下に下っても良いと思ってるからね」
「えぇ、私もカミルと生きて行けるだけで良いわ。さすがにお金は稼がないと生きて行けないのは分かってるから、その時は私が頑張って稼ぐわね」
「ぶふっ!リオが養ってくれるのかい?ははは!」
「えぇ、元の世界ではバリバリ働いていたんだもの。知識も経験もあるから、きっと新しい産業も発展させられると思うわ!」
「あははっ、そんな人生も良いね!そしたら僕は、リオの案を全て図に起こしてあげるね」
「そうね、適材適所よね。私が苦手な所をサポートしてくれたら嬉しいわ。最悪は森に籠って、狩りをして生きて行くのも良いわよね。2人とも剣を扱えるし、それなりに強いんだもの」
「ふふっ、そうだね。未来は沢山の可能性があるよね。うん、僕は目の前しか見てなかったみたいだ。リオ、ありがとう」
見つめ合って微笑み合い、優しいキスを落とされる。いつものようにカミルが隣に居て、お互いの存在を感じられるのがとても幸せな事なのだと、改めて噛み締めるのだった。




