第70話 『立太子の儀』の準備 ★カミル SIDE→リオ SIDE
第70話〜新しい章の始まりです。
立太子の儀を行うのは準備の都合もあり、半年後を予定していたが、第二王子アランのスタンピード中の暴走や暴言などの件と、リオを襲った件で捕まった侯爵と関係者達に対して、僕が沙汰を下す事となった為、急遽立太子する事になった。
国王陛下が直接沙汰を下すと、家族を簡単に切り捨てる国王と言われてしまう事を懸念した為だ。
僕であれば、婚約者を害した者という理由を以て、厳罰に処する事が可能だと考えた訳だ。
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「うー、立太子するのはカミルなのに、予定日が近づくにつれて、私の方が緊張してきちゃうわ……」
「はははっ、大丈夫だよ?リオ。僕は大勢の人前に出る事も多かったから、こういった行事にも慣れてるしね」
「それでも、国にとっても、カミルにとっても大事な日じゃないの……」
「そうだね、やっとだからね。王太子を巡る争いが終わってくれれば、少しは平穏に過ごせると良いのだけど」
「これまで大変だったのだものね。私も何か出来たら良かったのだけど……」
相変わらずリオは自分は何もしていないと思っているようだ。第二王子の問題は、殆どリオが解決したのにね?第二陣のスタンピードなんて、ほぼリオのみで殲滅させてたしね?何故『何もしていない』になるのか不思議だ。
「…………リオ?君のお陰で犯人も捕まったんだよ?」
「え?私、何もしてないわよ?」
「動画を撮ってくれただろう?第二陣のスタンピードの時に、二人組の男達が会話してたのを知らせてくれたよね?」
「えぇ。……あれが証拠になったの?」
「そうだよ。それまでは、尻尾すら掴めなくて困っていた所を、リオが一気に解決してくれたんだよ?」
「そうだったのね?陛下に恥ずかしい所を見られたって記憶しか無かったわ……じゃあ、カミルに貢献出来てるのかしら?」
あぁ、空から降って来て、僕がキャッチしたんだっけ。それも陛下の前だったから、確かにあれは恥ずかしい記憶の方が強烈に残ったのだろうね。
「うん、とっても貢献してくれてるよ。『練習装置』は今では騎士団にも設置されて、国の兵力が強化されてるし……リオのアイディアを形にするために興した商会も、車椅子の売れ行きが凄いらしいし?」
「『練習装置』はデューク達が面白がって色々と変化をつけたのを作っただけだし、『車椅子』だって、この2ヶ月でカミルとデュークが素材や設計図を見直して作り直したから貴族じゃ無くても手が届く値段に出来たのでしょう?確かに言い出したのは私だけど……まぁそれらが、カミルの役に立てているのなら良かったわ」
リオはふふっと微笑んで、大した事はしていないのにって顔をしている。リオのお陰で救われた人間が沢山いる事を知って欲しいんだけどなぁ?いつの日にか分かってくれると良いな。
「何より嬉しいのは、婆やが車椅子で立太子の儀に参加してくれる事かな。リオのお陰で、婆やにも僕が王太子になる所を見て貰えるんだよ。ありがとうね、リオ」
「そっか……婆やは外に出るのも迷惑をかけるからって控えてたのよね……もっと早くに出逢いたかったわね」
「リオは優しいね。リオが召喚されてからそんなに経ってないでしょ?数日は誤差だと思うけどね。80年もの間歩けなかったんだ。婆やにとっては、また歩けるって事が奇跡だったんだと思うよ。今では庭まで歩いて行けるらしいからね」
「それは良かった。私、もっと人の役に立ちたい」
「リオが王太子妃になったら、もっと大きな規模で行動する事が出来るから、きっとリオの願いも叶えられると思うよ」
「えぇ。そのためにも先ずは王太子妃教育を頑張るわ」
「宰相からは、ほぼ終わってると聞いたよ?『立太子の儀』に参加する各国の要人の詳細も覚えたんだって?」
「多くて大変だったけど、何とか覚えられたわ」
「さすがだね……アンタレス帝国は覚えてる?」
「精霊信仰が盛んな国で、精霊が沢山いるのでしょう?今回いらっしゃるのは皇太子殿下だと聞いてるわ」
「そうだね。アンタレス帝国は、この大陸で1番力を持っていると言っても過言では無いんだ。リオの力を見抜いて連れて行こうとするかも知れない……」
「カミル、私にそんな価値があるとは思えないけど、気を付けておくわね?」
「うん、そうしてくれると安心出来るよ。出来れば立太子の儀が終わるまでは、ソラも外に出さないで欲しいんだけど……」
「ソラに話してみるわ。お外に出たいなら、ソラの国へ帰って貰った方が安心でしょう?」
「うん、話してみてくれると助かるよ」
「ソラには全部話しても大丈夫よね?」
「大丈夫だよ。まぁ、ソラは全部分かってると思うけどね。精霊は気まぐれだけど、情報を集めるのも得意なんだよ」
「そうなのね。あまり無理強いはしたくないけど、話したら分かってくれるとは思うから、ソラはどうしたいのか聞いておくわ」
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★リオ SIDE
「ねぇ、ソラ。今度行われる『立太子の儀』に隣国の皇太子殿下がいらっしゃるんだけどね?その間はお部屋から出ないか、ソラのお家に一時的に戻って貰うのが良いのだけど、ソラはどうしたいかしら?」
「隣国?アンタレスかなぁ〜?あ〜、カミルが心配になっちゃった感じ?」
「…………話が早くて助かるんだけど、何か知ってるのね?」
ソラ達精霊が情報通だとは聞いていたけど、それ以上にソラは賢いわよね。カミルと同じで結果を知ってるかの様に先まで見越して話しをするところも賢いからこそだものね。
「あの国は、精霊信仰が盛んでしょ〜?だから、精霊の加護を持つ人間が数人生まれるんだけど、今回来る皇太子が加護持ちだった様な〜?」
「加護持ちだと、何かあるの?」
「精霊が見えるし話が出来るよ。オイラぐらい上位の精霊なら誰にでも見えるんだけどね〜?普通の精霊は見えないし、話も聞こえないよ〜。あぁ、リオは見えるし聞こえるから気を付けてね〜」
「気をつけるって?」
「リオには見えるから目で追ったら見えてるのがバレるし、声がしたからって振り返ったら〜?」
「あぁ、なるほどね。私が気をつけなきゃ駄目なのね」
「そう言う事〜。オイラはお外に出ないでお部屋に居るね〜。何かあった時にオイラを呼んでね?精霊は攻撃したりしないけど、魔法は使えるから〜」
魔法と言えば、ソラは飛行魔法を使ってるのかと思っていたら、精霊は皆浮いてるらしい。って事は、それは魔法では無いという事だよね?他に何か使ってたっけ?
「それってどんな魔法なの?」
「その精霊のランクによるよ〜。使い魔にしてるなら、それなりに強い精霊だけど、オイラより強い魔法を使える精霊は王様ぐらいだから、オイラを呼んでくれたら大丈夫だよ〜」
「さすが王子様ね。頼りにしてるわ、ソラ」
「えへへ〜、リオのためなら頑張るからね〜」
嬉しい事を言ってくれるのよね、可愛い猫ちゃんの姿をした私の使い魔は。カミルはとても心配していたけど、ソラもいるし何とかなると信じよう。不安に支配されていては、何も行動出来なくなるからね。




