第69話 キースの独り言 ★キース SIDE
69話目まででひと段落です。
私が仕える主は、デュルギス王国の第三王子カミル殿下だ。カミル殿下は王位継承権1位だが、王妃の子と言うだけで3男坊。
争いを避ける為、いつもほのぼのとした雰囲気を纏ってはいるが、実は負けず嫌いで完璧主義者だ。未だに朝から鍛錬していて、着痩せするから痩身に見えるが、実はかなり立派な体つきをしている。ムキムキというよりはしなやかな筋肉で、汗を拭う姿は色っぽい。
魔剣士だが文武両道を目指しており、図書館の本もほぼ読み切っている。大陸の言語は殆ど話せるし書ける。家庭教師達が揃って天才だと褒め称える程であった。
幼い頃から陛下に期待され「お前が王になる可能性が高いのだから、国民に尊敬される人間となれ」と散々言われて来た結果が、王子としての在り方や行動に反映されたからだと思われる。
近くでずっと見て来た私やデュークはいつか壊れるのでは無いかとしょっちゅう心配していた。王子としての勉強も、後継者教育も同時に幼少期からやっていたのに、魔法が使える様になった年には、年長のデュークに負けたく無い一心で魔法の練習までやり始めたのだ。
そんな殿下は女性が苦手で。リズ以外はデュークの妹であるニーナぐらいしかまともに話しをしている場面を見た事が無かった。あぁ、婆やも一応女性か……
真面目さは仕事にも現れる。王子は補佐官が付くので、そこまで忙しくは無いが、カミル殿下は全てを把握しておきたいからと、回って来る全ての書類に目を通し、自分のサインや回答が必要な物だけ書く。補佐官は書類を運び、振り分けて殿下へ渡し、不必要と仕分けされた書類に不可のハンコを押し、各大臣へ提出するだけだ。
殿下は文字を読むのも早く、仕分けされた書類を読みながら不要な書類をどんどん渡されるのであっという間に終わる。書類が届く度に直ぐ終わってしまうので、仕事が滞る事は無かった。
出来上がった書類も完璧で、カミル殿下に仕えられる事を幸せに感じていた。カミル殿下の補佐官は2人しかいないが、殿下が有能で教えるのも上手い為、少数精鋭で仕事も早いと皆から言われていた。
各大臣に書類を提出すれば、第三王子の所はミスがほぼ無いから助かると、重要な書類も多く任されている。
本来ならば、第一王子から順番に書類は多い筈なのだが、全ての書類を10とすると、第三王子が6、第一王子が3、第二王子が1の割合となっていた。有能さが書類の量に比例するのは仕方ない事だろう。
カミル殿下は見た目は18歳ぐらいだが、それぐらいで成長がゆっくりになるので若く見えるが中身は50歳だ。まぁ、この大陸の人間は皆がそうなんだけどね。
この国の平均寿命は300歳だが、人口は増え難い。その理由として、子供が中々生まれないのだ。我が国だけでは無く、大陸全体でそうであるため、王子が3人も生まれたこの国は大国なのだ。
勿論、強い魔力を持っていたりと他の理由もあるのだが、後継者が生まれにくい世の中で、王子が3人も居る時点で、国の今後が安泰である事を示しているのだ。
そんな我が国では、王位継承権争いは表向きには行われていない事になっていた。第一王子は陛下にカミル殿下に継承権を譲るとはっきり伝えてあるし、第二王子は書類仕事すらまともに出来ないと大臣達が嘆いているからだ。
しかし、どこの国でもあるのかも知れないが、国を牛耳ろうとする阿保な輩が第二王子を傀儡にしようと策略していた。カミル殿下の婚約者であるリオ様が、あっという間に……長年悩まされて来た問題をいとも簡単に解決してしまわれたのだが。これで第二王子は失脚する事になってしまったが、国内での問題は解決したと言えるだろう。
どうやら陛下もリオ様の事は気に入っておられるらしく、『練習装置』や『車椅子』の話しを良くなさるらしい。寿命が長いこともあって、退屈していらっしゃると聞いてはいたが、リオ様の行動は『面白い』らしい。
私もそのリオ様にとても振り回されている1人だと言えるだろう。婚約者のリズはデートの度にリオ様の事ばかり聞いて来るし、先日は仕事を奪われる所だったのだから。
「カミル、最近やる事も無いから、私も仕事を手伝いたいわ」
「ん?やってみるかい?リオならそんなに難しくは無いと思うよ」
そんな気軽な会話でほんの少しだけ手伝って貰う予定だったのに……
「カミル、こちらがサインが必要な書類、こっちは企画書、これが嘆願書ね。重要だと思うものから順に並べておいたわ」
「凄いねリオ!とても分かりやすいよ」
たったお二人で、普段は3時間はかかる量の書類仕事を、たったの1時間半で終わらせてしまわれたのだ……僕は恥を忍んでリオ様に頼んだ。
「リオ様!私に仕事を教えてください!」と……
私の分類の仕方では不十分であったと分かり、言われた通りにやっただけの仕事だと気がついたのだ。このままでは補佐官としての立場が危うい!もう1人の補佐官であるクリスはのほほんとお2人を眺めていたが。
「キース、大した事はしてないわよ?優先順位をつけて並び替えただけだもの。国や国民を優先順位の上位に持ってくれば、後は貴族の我が儘が目立つでしょう?そういうのを後ろに回せば良いのよ」
なるほど……前に師匠が仰っていた、物事の考え方がお2人は近いというアレだろう。カミル殿下も国や民を優先なさるから、言わなくても何を重要視しているか分かるからこそ、書類も上手く仕分けられたのだ。
「参考にさせて頂きます!ありがとうございました!」
私は丁寧に頭を下げた。仕事を取られない為でもあるが、リオ様に勝てる気がしないのだ。このお二人が次期王と王妃であれば、国は間違い無く安泰だろう。
第二王子が失脚し、今の所は書類仕事がほんの少し増えたぐらいしか変化は無いけれど、今後どうなるかは分からない。これからもカミル殿下とリオ様を支えるために、私が変わらなければと強く思ったのでした。




