第63話 陛下への報告 ★カミル SIDE
時間は既に普段僕が寝る時間を過ぎていた。しかし、デュークがこれから作るのであろう『車椅子』を出来上がる前に報告しなければならないので、遅いのを承知で陛下の下を訪れた。
「陛下、カミルです」
「お?入れ」
「失礼します」
「こんな遅くにどうした?」
僕がこんなに遅くに来る事は珍しいからか、少し不安そうな顔をしている。不安を拭うためにも、先ずは嬉しいお知らせからかな。
「婆やが歩ける様になる可能性があると耳にしました」
「何だと!もう50年以上歩けなかっただろう?」
「えぇ、僕が生まれる前からですので。それが……リオが精霊のカケラ?が刺さってるのを見つけたらしく、精霊のソラと治した様なのです」
「あぁ、なるほど……」
「陛下はそれで分かるのですね……?」
陛下は何か知っている様だとは思っていたが、敢えて深くまで聞く気も無い。
「これは、私と爺さんと宰相しか知らんからな……」
「そうでしたか。まぁ、僕は報告に来ただけですので」
「悪いな。ただ、本当に良かった……」
おっと、肝心の報告をしていないや。これが本題なのだから、早めに終わらせよう。
「それだけではありません。またリオが発明したのですが、許可を頂きたく」
「何をだ?」
「『車椅子』と言う乗り物です。あちらの世界では、歩けない足の不自由な者が使うそうで、椅子に車輪がついていて、後ろから人が押して移動する事も、自分の腕の力で移動する事も出来るそうです」
「ほぉ!それは凄いな。足に怪我を負って歩けない者達が欲しがるだろう」
「えぇ。婆やの物より簡易的で、材料費も安く済む物が作れるなら、一般に発売する事も視野に入れて研究したいのですが」
「許可する!勿論だ。庶民だけで無く、行動を制限されていた者達の光となるだろう」
「同感です。既にデュークが設計図を持って、やる気になっておりますが……」
「婆さんのはデュークに作らせてやれ。見本があった方が、技術者達も分かりやすくて良いだろうしな」
「御理解、ありがとうございます」
「彼女は本当に凄いな……婆さんを治しただけでも凄い
功績だと言うのに」
「恐らくリオは功績とか関係無く、純粋に婆やが歩けたら良いなと思ったから行動しただけでしょう。自力で歩ける様になるには半年掛かると言っていましたから、その間も外へ自由に出られる様に、車椅子を作って欲しいと頼みに来たのだと思います」
「心根の優しい娘だな。そうであるから精霊も懐いておるのだろう」
「えぇ。この国には精霊は居ないと言われてますから」
「信仰する者が少ないからのぉ……」
「そうでしょうね。この国では女神信仰が盛んです」
「異世界から来たからこそ、女神と精霊、両方の加護を持つんだろうからなぁ……」
「リオは、今日の出来事を詳しく話そうとはしませんでした。恐らく、何か婆や達から感じるものがあったのだと思われます。リオは賢いですから、僕が知っておくべき事は「秘密なんだけど」と言って教えてくれますから、リオ本人が言うべきでは無いと考えたのでしょう」
「そうじゃな……お前も賢いから、報告は抜かり無い。私を揺さぶろうとはしないでおくれよ?」
ハハハと陛下が笑った。これ以上は聞くなと言う事なのだろう。
「はい。では僕は戻ります」
「飲んで行かんのか?」
「リオに早く寝るように言われたので、戻って寝ます」
「早速尻に引かれとるな。うむ、良い事だ」
「それでは失礼します。おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」




