第62話 車椅子を作ろう! ★カミル SIDE→リオ SIDE
リオは婆やとも仲良くなっていた。婆やが初対面で人の名前を呼んでいる所を初めて見たかも知れない……そこまでリオを気に入ったと言う事なのだろう。
「リオ、楽しかったかい?」
「えぇ!沢山お話しをしたわ。ご飯もとっても美味しかったし、爺やは婆やにベタ惚れなのね!仲睦まじくて、とても楽しかったわ」
「そっか、それは良かった。何か言ってたかい?」
「あ!あのね、婆やに車椅子を作ってあげたいの。今からデュークの所に行っても平気?」
リオが何か婆やの為に作りたい物がある事も、『車椅子』という名前からも、何となくやりたい事は分かったので許可しよう。設計図が必要そうだな。期待してるリオのキラキラしている目を見て頷いた。
「僕も行って良いかな?」
「勿論よ。早く作ってあげたいわ」
「分かった。それじゃあ行こう」
コンコンと扉を叩く。勿論デュークの執務室だ。
「はい!殿下、如何しました……あぁリオ殿、お帰りなさい。大丈夫でしたか?」
「デューク、ただいま。私は大丈夫よ。それよりお願いがあって来たの」
「分かりました。それでは中で話しましょう」
「お邪魔するよ」
ソファにリオと並んで座る。
「デューク、紙とペンを。リオ、僕が設計図を描くんだろう?」
「えぇ!ふふっ、良く分かったわね。デューク、今回は婆やのために、車椅子を作って欲しいの」
「車椅子、ですか?」
「えぇ。私のいた世界では当たり前に普及していたわ。足の不自由な人が、後ろから押して貰って移動したり、自分の腕で車輪を押して動かしたり出来るのよ。行動範囲が広がるし、誰も居なかったとしても、ほら、お手洗いとか?行きやすくなるでしょう?」
「えぇ、何となく言ってる事は分かります。先ずはどう言う物かを聞きながら考えましょう」
「そうね。車椅子はね、軽くて硬い素材が良いわね。それで、骨組みを作って、タイヤ……車輪ね。大きさは椅子がこれくらいの高さなら、タイヤを回すために腕を置くここら辺までの大きさよ。椅子がこの高さなら、車輪に手が届くでしょう?」
リオが身振り手振りで説明をする。用途とどう言った物なのかを一生懸命伝えてくれるから、絵に起こす事に集中する。
「それで、背もたれの左右……そう、ここに後ろから押すための取っ手をこう。押す側の人の方へ向けて……そうそう。そこをこうやって持って押すのよ」
「なるほど……この車輪は鉱石で作って良いですか?」
「枠だけ鉱石で強くして欲しいんだけど、乗り心地が悪くなるから、ゴム……えっと、樹脂?とかあるかしら」
「あぁ!なるほど、地面との設置面に樹脂をグルッと」
「そうそう。婆やは家の外では『突風』を使うでしょう?出来るだけ乗り心地を良くするなら、タイヤは樹脂で覆って欲しいわね、もしかするともどかしくて車椅子ごと浮かせる可能性もあるかしら……」
「まぁ、家の中で使う時には師匠か侍女が押すのだろうから、基本的な形と機能は問題無さそうだね」
「あぁ、足を置く……浮かせないと引き摺っちゃうからね、ここにこう折りたためる足置きを付けて欲しいわ」
「そうか!なるほど……ふむふむ……こうだね」
「えぇ、それで良いのでは無いかしら」
「これは、元冒険者達にも売れるのでは?怪我をしたり、病気で歩けない人達にも売れそうだな……」
「簡易的な……材料費を安く済ませられる物を作れるなら売れる可能性は高いわね。先ずは婆やに乗って貰って改善点を出して貰った方が良さそうね。婆やが自力で歩ける様になるまでには半年かかる予定だから、気がつく事もあると思うわ」
「そうだな……って、え??婆やが半年後に歩けるって?」
「えぇ、脚をソラと一緒に治して来たわ」
「「えぇ――――――――!!!」」
リオがまた不可能を可能にしたのか?あの脚は、治癒魔法に長けている師匠ですら治せなかったと聞いてるぞ?僕達が生まれた時には既に歩けなかったから、いつも飛行魔法を使って移動していたぐらいなのだ。
「ソラと一緒に」と言っていたから、精霊が関係しているのだろうか?分からない事だらけだが、リオが話してくれないなら聞かないでおこう。婆やが魔導師団の手伝いを辞したのは、僕達が成人した年だった。その理由も、師匠達は話したく無さそうだったからね。
「精霊のカケラ?が刺さっていたのよ」
「師匠ですら治せなかった婆やの脚を?凄いね!」
「………………リオ殿、私が!全力で車椅子を作って参ります!私にやらせてください!」
「デューク、貴方に頼むしか無いから任せるわよ?それに口調が戻っているわ」
「もう、尊敬するリオ殿に敬語を使わない選択肢を見出せないのですが…………」
デュークが遠い目をしている。確かに、リオは尊敬出来る人物だろう。キースやクリスに伝えたら、土下座して拝むんじゃ無いだろうか?
「普通で良いわよ。取り敢えず、車椅子は任せたわ。出来たら教えてね!私も婆やに会いに行く口実が欲しいから、一緒に持って行きましょう」
「はい……権利は殿下に任せますがよろしいですか?」
「えぇ、私は良く分かってないから……カミル、任せて良いかしら?」
リオは権利とか全く考えて無かっただろうからね。リオの行動基準は人の為に自分が出来る事を、損得勘定無く、やりたいからと行動しているだけだけなのだから。
「あぁ、勿論だ。僕に任せて欲しい」
「よろしくね」
「では、私は魔導師団へ戻ります。リオ殿、婆やの事、ありがとうございました」
「いえいえ、どういたしまして?」
「それでは失礼します」
デュークは設計図を持って、イソイソと帰って行った。
「リオ、画期的な提案をありがとう。これで外に出たがらなくなってしまった婆やが元気になってくれると良いんだけどなぁ」
★リオ SIDE
カミル達は婆やの精霊が暴走した所為で怪我を負った事を知らないのだろう。だから、婆やに元気が無いのは歩けない程の怪我を負ったからだと……
恐らく、婆やは暴走した精霊を想って心を痛めてるんだと思う。秘密だって言ってたから説明出来ないし、私が言うべき事では無いと判断した。
「そうね、早く婆やが元気になってくれたら私も嬉しいわ。また皆んなの幼少期のお話しを聞きに行かなきゃ」
「ええっ!何か可笑しな事を言って無かった?」
カミルも悪ガキだったらしいからね。何を話したか気になるみたいだけど、話してるうちに口を滑らせる可能性もあるから、気を付けなきゃ。どこまで話していいのか、一度振り返ってからにしましょう。
「皆んなが仲良しだったエピソードばかりよ」
「そ、そうか……まぁ、分かった。僕は陛下に報告へ行って来るよ。リオはもう寝る時間だね。今日も1日お疲れ様だったね。師匠の無茶振りに付き合ってくれてありがとう。助かったよ」
「ううん。私は楽しかったから大丈夫。カミルはまだお仕事するの?早く寝ないと体に悪いわよ?」
「うん、報告したら直ぐに寝るよ。また明日ね、リオ。良い夢を」
「えぇ、カミルも良い夢を。おやすみなさい」




