第58話 戦闘メイド ★カミル SIDE
「リュー、防音膜張れる?」
「はい」
リューは防音膜を無詠唱で張った。
「影だったのなら、リオの事情や加護の事は知っているかい?」
「はい。女神と精霊の加護を持ち、特級魔法の修得を許されたと伺っております」
「精霊の使い魔がいる事は?」
「存じ上げませんでした」
「表向きは侍女だから、リオの使い魔であるソラと会う機会も多いだろう。ソラは精霊王の子で、精霊の王子だ。年も500歳を超えているらしい。今はリオが猫の姿を取らせているから、見掛けたら挨拶しておいてね」
「はっ!」
リオの部屋の前で立ち止まる。リューには既にメイド服に着替えて貰っているから、ただの侍女に見えるだろう。
「リオ、今大丈夫かい?」
「はい!」
リリアンヌが扉を開けて頭を下げている。
「リオ、新しい侍女を連れて来たよ」
「…………………………」
リオはリューをジッと眺めている。
「こちらにいらしてくださる?」
リューは言われた通りにリオの前に進み出た。
「お強いのね。初めまして、私はリオ=カミキ。カミル殿下の婚約者よ。よろしくね」
「は、はい!私はリューと申します!よろしくお願いします!」
リューも僕も驚いた。「お強いのね」って……サラッとバレたな。驚かせたかったのに……
「リオ、もう気づいちゃったの?」
口を尖らせて言うと、リオに笑われる。
「ふふっ。普段は人前に出ない、護衛や諜報をなさっているのでは?足音がしなさ過ぎるし、頭が全くブレないなんて、武人みたいだもの」
「僕は見慣れてるから気がつかなかったよ……」
「私も言われるまで気にした事が無かったです……」
「そうね、この世界には強い方が沢山いらっしゃるからそうなのかも。私のいた世界では、格闘家と言われる人達ぐらいしか戦わないから、見慣れて無くて違和感があるのよ」
「音を立てて歩くのは難しいです……頭がブレないのはどうしようも無いのですが……」
「マリー、こちらへ来てくれる?」
マリーがパタパタと駆けつける。
「リュー、この子はちょっと元気過ぎるけど、真似て見ると少しは違うと思うわ。慣れたらリリアンヌぐらいお淑やかに歩いてくれたら嬉しいわね」
リリアンヌが紅茶を出してくれながら、リューに軽く会釈をする。歩いて壁際に戻る様を確認していた。
「分かりました。明日までに習得して参ります」
「ええっ!いえ、急がなくて良いのよ?私は練習場と、カミルの執務室とこの部屋ぐらいしか移動しないから」
「それでも、不審に思われる可能性があるならば、私は全力で達成致します」
「ま、真面目な方ね……任せるけど、無理はしないでね?これからよろしく。頼りにしてるわ」
リオがフワッと微笑む。可愛い……
「リオ、隣に座っても良いかい?」
「ん?えぇ、勿論よ?どうしたの?改まって」
「あ、いや、その……リューは、陛下からスタンピードの褒美として賜ったんだよ」
「まぁ!それは感謝のお手紙を書かなければかしら?」
「近々会う事もあるだろうから、その時で大丈夫なんじゃ無いかな。リューを選んだのは僕なんだけど、彼女を気に入ってくれたかい?」
「そうなのね!ありがとう、カミル。真面目そうだし、とても可愛らしいし、リリアンヌやマリーとも仲良く出来そうで良かったわ」
リオは優しいな。自分との相性より、周りと上手くやって行けるかを先に考えるなんて、僕には出来ない。
「あれ?ソラは?」
「私のベッドで寝てたけど、急に何処かへお散歩?なのか、居なくなってたりするのよね……ちょっと居るか見て来るわね」
「あぁ、よろしくね」
リオは寝室へ入ると、ソラを抱いて来た。ちょっとだけソラが羨ましい……僕もリオの腕に抱っこされたり、膝の上で昼寝したりしたい!
「カミル、居たわ。まだ眠いのかしら?ソラ、新しく私の侍女として来てくれたリューよ。ご挨拶しましょ?」
「ふわぁぁ、ムニャムニャ……」
ソラは欠伸をして、また寝入りそうだ……
「ソラ?ご飯あげないわよ?」
「いやだぁ〜……仕方ない、起きるよぉ〜」
「リュー、この猫ちゃんはソラって言うの。話しは聞いてるかしら?」
「はい、存じ上げております。お初にお目にかかります、私はリオ様の侍女として、陛下から命を受け参りましたリューと申します。どうぞお見知りおきを……」
「へ〜、強いんだねぇ〜。リオの方が魔法は上手いと思うから、リオに学ぶと良いよ〜。あ、オイラはソラ〜。よろしく〜」
「はい、ソラ様。よろしくお願いします。リオ様も、御指導の程、よろしくお願いします」
「私で良ければいつでも教えるわ」
「ありがたき幸せ!」
「リュー、もう少し砕けた話し方でお願い出来るかしら?」
「彼女達を観察し、近付けるよう努力します」
「……そうね、それでお願い。ところでカミル?浮かない顔をしてどうしたの?」
「えっ?」
顔には出してるつもりは無かったのだが……
「リオお嬢様?殿下はいつも通りに見えますけど、何か気になられるのですか?」
マリーの言葉にリリアンヌも頷く。
「えっ?私には全く違う様に見えるのだけど……」
「あははっ、リオには隠し事は出来ないねぇ?さっき陛下と話をして来たんだ。兄上の事とか、今後の事を話してたら少し憂鬱になっちゃったんだよね」
「体調が悪い訳では無いのね?」
「あぁ、体調は問題無いよ。ありがとう、リオ」
「んー、疲労回復魔法をかけても良いかしら?精神面には効かないだろうけど、少しでも疲れが取れると良いかと思うんだけど……」
「あぁ、お願いするよ。リオの疲労回復魔法は心地良いからね。とても癒されるんだ」
リオは隣に座る僕に少し寄りかかる様にして、疲労回復魔法をかけてくれた。リオの存在に癒され、魔法で癒され、僕は幸せだなぁとしみじみ思うのだった。




