第26話 楽しい訓練がしたい! ★カミル SIDE
もの凄い勢いで、リオとデュークが執務室に飛び込んで来た。特にデュークが変に興奮していて怖い……
「カミル!絵を描いて欲しいの!デューク様に得意だと聞いたわ!」
「あぁ、構わないが……」
「リオ殿が、私に何か頼みがあるらしい。その説明が口頭では限界がありそうだからと殿下に頼みに来た。私もリオ殿も絵に自信が無いからと……そしてそれを行動に移して良いかのお伺いも兼ねてだな」
「デュークは内容を聞いているのかい?」
「これについてはまだです」
「なるほど。確かに来てくれて正解な気がするな」
きっとデュークは既に何かしらリオの思い付きを聞いた後なのだろう。興奮しているから前のめりな上に、ただでさえ怖い顔が更に怖くなってる……
「さて、リオ。ざっくりとやりたい事を教えてくれるかな?」
「えぇ、分かったわ。先ず、練習場の的がつまらない」
「「……………………??」」
「動かないでしょう?動かない的に魔法を当てるのなんて、簡単過ぎて練習にならないわ」
「「!!!!!」」
「だからね、左右に壁を作って……高さ5mぐらいで、横幅は10mぐらいかしら。奥行きが20mぐらいで、魔法が当たっても壊れない壁で囲む感じね。自分が立つ地点と、天井は開いていて……そう、そんな感じ!」
僕は言われた通りにサラサラと紙にコの字を描く。
「それで、10m地点ぐらいから物を飛ばすのよ。山なりに飛んで来たり、真っ直ぐ飛んで来たり、下から上に飛ばしたりしたいの」
「「……………………」」
「えっと、分かり難いかしら?的が動かないと実戦では意味が無いでしょう?魔物は動いてるんだし、飛んで来る魔物もいるんじゃない?」
「いや、言いたい事は理解した」
チラリとデュークを見ると、目を輝かせて頬を紅潮させて更に興奮している……やっぱり怖い……
「リオ殿!素晴らしい!先程の魔法といい、是非とも私めが明日までに作りますぞ!」
「デューク様、まだあるの……」
「何なりと!お申し付けください!」
「ええっと、ここら辺が良いと思うんだけど……15mぐらいの場所かな?ここに、動画……姿を録画……えっとなんて言えば良いんだろう?」
「動画?動く絵かな?」
「そうそう!動いてる自分を後でもう一度見れる様にしたいのよ」
「どうして?」
「えっと、例えば10分ぐらいで1セットを練習するとして、飛んで来る物体が100個だったとするでしょう?何処から飛んで来た物を落とせなかったか、何個落とせなかったのかは後から見なきゃ分からないじゃない?」
「なるほど、自分の死角や欠点を探せるのか……」
「そうよ。苦手って誰にでもあるけど、自分じゃ分からないものだと思うの。1人で練習したい人もいるだろうし、人に指摘されると嫌がる人もいるかなって。後は、指導する時に見ながら教えた方が、イメージも掴みやすいでしょう?」
「素晴らしい!確かに教育にも使えますな!」
「うん、凄いね……画期的だ。予算は僕が出すから、出来るだけ早く作ってくれるかい?楽しそうだ」
「勿論ですとも!先程のリオ殿の件をお伺い立てたら、すぐにでも戻って作り始めます!さすがに動画?の魔道具はすぐにとはいきませんが……」
「ちょっと待って。リオのお伺い?コレじゃ無くて?」
「リオ殿は魔剣士をやってみたいと仰っておられて」
「あぁ、なるほど。剣を扱うからお伺いね。リオはやってみたいんでしょう?」
「勿論よ!出来れば双剣で、細くて軽い剣をビュンビュン振れるようになりたいわ!魔法を纏わせるんだから、剣は軽くても威力が出るでしょう?」
「そうだね。本来は剣士の基本があった方が良いとは思うけど、リオの場合は実戦では後衛だろうからね。近くまで来てしまった魔物を屠れるなら、僕も少しは安心出来るよ」
「えぇ、飛んで来る魔法にも対処しなきゃだしね。さっきの練習する道具?面倒だから『練習装置』と呼ぶけど、練習装置で動く物体に当てられなければ何も出来ないでしょう?飛んで来た魔法を消したいんだもの、先ずは当たらなきゃ意味が無いわ」
「……魔法を消すの?」
「あぁ、リオ殿は火球などが向かって来た場合に殿下を守りたいそうだ。避けるにも限度があるからな。良い考えだと思って感心したんだ」
「まさか、超級の闇魔法のアレを?」
「リオ殿の事だから、出来るまで諦めないだろう。私もアドバイスは出来るし、そしたらこの国初の魔法消去魔剣士になるな」
ガハハハハと笑いながら機嫌良く僕に視線を向ける。リオは魔法で動く的を落とす練習がしたいんだと思っていたが、その先まで見越していたらしい。上手く行けばリオの功績として陛下に報告出来るだろう。
「うん、良いね。デューク、制作は任せるよ。リオ、その飛んで来る物体は何にするのか考えているのかい?」
「えぇ。枯れ草を編んだ物と、丸太を適当な大きさに切った物が良いと思うわ。重さが違えば落ち方も変わるし、スピードにもバリエーションが出るわ。それに、後片付けも燃やせば良いだけだし、経費も抑えられる」
「「…………………………」」
経費や練習した後の事まで考えているとは……僕が知りたい情報を全て準備して来るんだから驚きだ。正しくは、僕が考えてなかった事まで考えてたから、リオの方が有能だな。
「あとは、出来るならで良いんだけど……」
「何でも言ってください!」
デュークが前のめりになりながら食い付いた。
「途中で魔力が切れちゃう人もいると思うのよ。そんな時に、「ストップ!」とか決まった言葉を叫べば止まる装置?目の前に防御壁が出て来るとか?安全装置的なものがあれば安心して練習出来ると思うの」
「確かに!練習で怪我をしては大変ですな!」
「でしょう?10分を3セットが基本として、集中力が続く人は5セット、7セットと増やして行けば、自分が成長してるのも分かって良いと思うし、自分の限界も知れると思うの」
「凄いな……そこまで考えてたのか。リオには驚かされてばかりだね」
恐らく、魔道士達のレベルが格段に上がるだろう。国としても是非取り入れたい装置だ。僕も使ってみたい。
「本当に。リオ殿、やはり私を弟子にしてくだされ」
「デューク様は私の師匠でしょう?私が師匠なんて烏滸がましいわ」
「デュークの気持ちは分かるが……体裁があるからな。リオはデュークの愛弟子って事で勘弁してやってくれ」
「残念だが、分かった。闇魔法の練習にもトコトン付き合いますぞ!」
「ふふっ。心強いわ。練習装置も楽しみにしてるわね」
リオは楽しく努力出来る装置を発案してくれた。きっと魔道士達のレベルも底上げしてくれるだろう。剣でもこの装置を使う気でいるようだから、剣士としての腕も上がるのか……?
僕も鍛え直さなきゃ。リオより弱い婚約者になってしまいそうだ。上級魔法を全属性使えてる時点で、もう負けてる気はするけどね……




