第21話 マイペースな精霊との出逢い ★リオ SIDE
執務室に着くと、中から扉が開けられた。キースが開けてくれたらしい。
「リオ様、お久しぶりです。お体は大丈夫ですか?」
「ごきげんよう、キース。すっかり元気よ」
クリスは不在のようで見当たらない。今日は休みだろうか。
「おいで、リオ。話があるんだろう?」
カミルと並んでソファに座る。キースがすぐに紅茶を淹れてくれる。
「あのね、朝起きてすぐに疲労回復魔法を自分にかけたのだけど、いつもと違ったの」
「どう違ったの?僕にもかけてみてくれる?」
「えぇ、かけるわね。お腹辺りが光るから、驚かないでね?」
カミルのお腹辺りに手を伸ばし、疲労回復魔法をかける。先程と同じく、白く輝いた。
「凄いな……威力が桁違いだ。恐らく、目に見える程の威力だという事だろうと思うけど……デュークを呼ぶかな。まぁ、こんな事初めてだから呼んでも分からなそうだけどね」
「呼んで来ましょうか?」
「キース、クリスが戻って来てからで良い。さすがに部屋に2人きりだと、周りが煩いからね……」
カミルが遠い目をしている。イチャイチャしたいって事なのかしら?侍女がいても、普通にイチャイチャしてるじゃない……
「リオ?」
ハッとカミルを見る。誤魔化そうと話を戻す。
「それでね、先日までと何か変わっていそうでしょう?だからステータスを確認しようと思ったんだけど、カミルと一緒に確認するのが良いと思って来たのよ」
「そうだったんだね。じゃあ、早速鑑定して教えてくれる?」
コクリと頷くと、自分に鑑定をかける。ステータスボードをじっくり確認すると、不思議な事に文字が浮かんで来た。
「カミル!文字が浮かんでるわ。読めない文字……」
「キース、紙とペンを。リオ、書き写せる?」
「やってみるわ」
キースから紙とペンを受け取る。浮かんでる文字を何度も見直しながら紙にペンを走らせる。
「神々に愛されし少女は 空の青さと白さに輝くって書いてあるよ。古文だから読めなかったのかなぁ?」
カミルが私の書いた文字の下に現代文字で分かるように書いてくれたので口に出して読んでみる。
「神々に愛されし少女は空の青さと白さに輝く?」
すると、ブワァ――――――――!っと目の前が白く輝いた。キラキラと光が降って来る。
「呼んだ〜?」
目の前にフワフワと白い雲のような物が浮いている。カミルが慌てて私の前に出て庇おうとしてくれた。
「何もしないよぉ〜」
何とも気が抜けるような声は、白い雲から聞こえるようだ。
「何者だ!姿を現せ!」
カミルが白い雲を威嚇している。
「え〜?呼ばれたから来たのに〜。オイラを呼んだのは……そこの娘だね〜?ねぇ君、好きな動物は〜?」
「え?私?えっと、猫ちゃんかしら」
「おっけ〜、猫ね〜!にゃ〜ん!」
ポン!と白い雲が弾ける。その中から1匹の白く輝く猫が現れた。そして私の前でフワフワと浮いている。
「これでい〜い?君の名前を教えて〜?」
「私はリオよ。こちらは婚約者のカミル殿下」
「リオにカミルね〜、オイラは〜名前はまだないよ〜。リオがつけてくれると嬉しいなぁ〜」
「おい!待て!お前は何者なんだ?浮遊魔法は……」
「カミル〜、リオに名前をつけてもらわないと、何も話せないんだよ〜。そういう決まりなの〜」
「何だと!」
「カミル、大丈夫よ。悪い感じはしないから。ね?」
カミルの腕に手を乗せ、軽く揺らす。前のめりになっていたカミルが少し体を起こした。
「変な動きをしたら焼くからな」
「やだ〜、カミル怖〜い」
全然怖がってない口調で猫が喋る。名前をつけてあげなければならないのだが……
(白いからシロ?猫だからニャンコ?単純な名前しか浮かんでこないわ……名付けって苦手なのよね……)
猫の名前をうーん、うーんと言いながら考える。
「猫ちゃんは男の子?女の子?」
悩んだ末、猫からヒントを得る事に。
「オイラはどちらにもなれるよ〜」
「何処から来たの?」
「空からだよ〜」
「じゃあ、『ソラ』と『ルナ』なら、どっちが良い?」
「わぁ〜、選ばせてくれるの〜?嬉しいなぁ〜。んー、ソラが良いなぁ〜」
「分かったわ。今日から猫ちゃんはソラって名前よ」
「ありがとぉ〜」
パァ――っとソラの輝きが増してスゥーっとソラの中へ吸い込まれて行く。
「ふぅ〜契約完了だよ〜。今日からよろしくね〜リオ」
「契約、だと?」
「そうだよ〜?オイラはリオに召喚された使い魔だよ〜。詠唱してくれたでしょ〜?」
さっきの古文の事だろう。確かに声に出して読んだ。
「僕が読んでも来なかったじゃないか!」
「え〜だって〜、カミルは精霊の加護を持ってないでしょ〜?」
「ソラは精霊さんなの?」
「そうだよ〜。これでも精霊王から産まれた上位の精霊ね〜。だから使い魔になれたんだよ〜。ニンゲンでいうと、王子や姫だね〜」
「精霊の王子……君は精霊王に言われて来たのかい?」
「カミル〜、オイラの事はソラって呼んで〜?確かに精霊王が行っておいで〜って言うからやって来たよ〜」
チラッとキースを見ると、完全に固まっている。人間の王子に仕えるキースにとっては、精霊の王子は格上になると考えたのだろう。本来であれば、こちらから声をかける事は許されない。
「キース、ソラに飲み物を出してもらえる?ソラ、熱いのと冷たいのはどっちが良いかしら?」
「わ〜ありがと〜。リオは気が利くんだね〜。猫舌だから、冷たいのが嬉しいなぁ〜」
「かしこまりました……」
「笑うところだったのにぃ〜」
ソラはお茶目な精霊らしい。
カミルは顔を引き攣らせながらソラを観察している。
ソラにコップで飲み物が渡された。器用に両手でコップを挟んで飲んでいる。舐めて飲むんだと思ってたわ。
「猫らしく飲んだ方が良かった〜?」
「いいえ、飲みやすい飲み方で構わないわよ」
「喉が乾いてたから、一気飲みしたかったの〜」
「それは気がつかなくてごめんなさいね?」
「ううん。美味しかったよ〜。キース?ご馳走様〜」
礼儀正しい猫……精霊ね。何故ここに来たのかしら?
「ね〜、カミル。予言は知ってる〜?」
「あぁ、勿論。リオが召喚された理由だからね」
「あ〜なるほどね〜。だからリオの魔力はこの世界の色じゃないんだね〜」
「魔力の色?」
「そうだよ〜。リオは知らないかもね〜?すっごく昔に、この世界へ召喚されたニンゲンと同じ色だよ〜」
「他の召喚者もそうなのか?」
「会ってないから分からないけど〜。『純白の魔力』を持ってるのは、リオだけだよ〜。すっごく特殊で、とぉ〜っても強い魔力だから、この国には……この世界ではリオだけって分かるよ〜」
「ソラは凄いのね。何故私だけなのかしら?」
「古文書によると、召喚されし聖女はひとりと書かれているからだと思うよ。恐らく、今代に1人しか存在しないんだろう」
「正解〜!カミル、頭良いね〜。古文書全部読んだの〜?」
「あぁ、後に付け足された古文書まで全部読んだよ」
「うわぁ〜……オイラには無理ぃ〜。お爺に要点だけ教えて貰ったの〜」
「そんなに難しい内容なの?私も読んでみたいわ」
「やめときなよ〜、リオ……古代語だから難しいだけじゃなくって〜、1192冊もあるんだよ〜?」
「正確には、古文書1000巻と書き足されたのが192巻で、書き足された後半には古文書1000巻の修正もされてるから面倒ではあったよ」
「書き直してくれたら良いのにね〜」
「それは僕も思ってたよ」
カミルは勤勉なのね。賢いとは思っていたけど、まさか精霊の王子が大変だという本を全部読んでるなんて。ソラはいくつぐらいなのかしら?
「ソラっていくつなの?」
「ん〜?オイラは〜……500歳から数えるのやめたから〜、わかんないや〜ハハハ〜」
思ったより年上……世代まで違うレベルだったわね。もっと敬った方が良いのかしら?緊張感が無いから無理そうだけど。
「廊下〜、誰かが凄い勢いで走って来る〜」
「ソラ、私のお膝にいらして?誰か分からないから、普通の猫ちゃんのフリをしてくれる?」
「りょ〜か〜い」




