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第189話 心配する仲間 ★爺や SIDE

 カミルが楽しそうだとシルビーは言うたな。恐らく敵がとても弱いか、王族である事を伝えて保護させる事が出来たかじゃろう。まぁ、カミルも『練習装置・改』を毎日欠かさずやって随分と強くなったからのぉ。数十人程度であれば、囲まれても余裕で勝てるじゃろう。


 それに、ザラカン王国は魔法が使える者は極端に少ない事で有名なのじゃ。剣も魔法も使えるカミルが負けるとは考えづらい。皇帝がザラカン王国の色んな情報を惜しみなく教えてくれた事で、あちらの出方(でかた)を待った方が良さそうであると言う結論が出たが。


 しかし、リオはそれでは落ち着かないじゃろうのぉ。自分が連れ去られていれば冷静になれるのじゃろうが、カミルがどうなっているか分からないから不安なのじゃろう。まだ動かない方が得策だと理解しているが、焦る心に気持ちがついて来ず、耐えられないのじゃろうな。


「リオ、大丈夫か?」


 急にポンッ!と現れたのはライトじゃった。精霊王から聞いて来たのじゃろうか?


「まぁ!久しぶりね、ライ。元気にしてたかしら?」


吾輩(わがはい)は元気だ。リオは元気じゃ無いんだろ?王様が、手伝っておいでと言うから来たぞ。カミルが居る国で、バレない様にカミルを守れば良いんだな?」


 どうやら、カミルの護衛をしてくれるようじゃな?リオの不安が伝わるのじゃろう、少しでも安心させたい様じゃ。ライトも他の精霊と同じで、とても優しい子じゃからな。


「え、ええ、そうなのだけど……ライはあの国へ行って大丈夫なのかしら……半分精霊だし、危険なのでは?ライ、カミルが居る国は精霊を(いじ)めるような国なの。私は精霊も、カミルも守りたいと思ってしまうわ……」


 ザラカン王国には精霊を繋いでおける魔道具や、力を吸い取る魔道具がある事は、皆が知っているからな。そこへライトを行かせたくないと……酷い目に遭わせたく無いリオの気持ちも分かるが、精霊王が許可したのであれば、問題無いと言う事じゃろう。


「ん、それも聞いている。吾輩の魔力量なら、あの魔道具では繋ぎ止められないんだと言ってたぞ。力で引き千切る事も出来ると。力を吸い取る魔道具は、吾輩から吸い取る事は出来ても、全部吸える大きさの魔道具は作れて無いから、逆に思いっ切り魔力を流してやれば、壊れるらしいぞ」


 さすがは精霊王と言えば良いのじゃろうか?人が持てる情報の上を行くのぉ……どうやって調べたのか気になるのぉ?ホッホッホ。


「そこまで教えてくれて大丈夫なのかしら?精霊王にペナルティが無いと良いんだけど……」


「あぁ、そう言えば、それもリオが気にするだろうと言っていたな。王様が言うには、ザラカン王国の所為でこの世界が終わる事は無いから、王様が手を出さなくても取り戻せるカミルを、結婚式があるから最速で取り戻す手伝いをするだけだから大丈夫だと言ってたぞ」


 精霊王がそんな言い方しても良いのかのぉ?まぁ、精霊を減らした元凶だから許せんのかも知れんな。


「取るに足らないと?」


「面倒じゃから早よぉ終わらせろと言ってる様に聞こえるがのぉ?」


「まぁ、ザラカン王国だからな……」


 皆んな同じ意見の様じゃな。まぁ、ここに居るのは精霊を愛する者達ばかりだから、許せないのは皆同じか。カミルを助けに行くのは当たり前じゃが、その後の事は皆考えておるのかのぉ?


「カミルとリオなら簡単に潰せる国だとは思うが、潰した後のザラカン王国はどうするつもりかのぉ?」


「あぁ、その事なのですが。王国が要らないなら、アンタレス帝国が吸収しましょう。ザラカン王国は砂漠ばかりですが、国民は穏やかで賢い人間も多いのです。必要であれば、アンタレス帝国で仕事を斡旋する事も可能ですからね」


 ワシは良く考えておるなぁと頷いた。皇帝に任せておけば大丈夫だと思える程、立派になったのぉ。シアを毛嫌いしていた頃の面影など全く残っておらず、良い顔つきをしておる。


「それは助かります。直ぐに国王陛下にお伺いを立て、決断して貰いましょう。私とカミルは王族と貴族の一部を潰して来れば良いのですよね。それと、今も居るかは分かりませんが……皇帝陛下に助けを求めて来た使者の名前を覚えていらっしゃいますか?」


「あぁ、あちらで働く詳しい人間が必要ですからな。確か……アイザック、だったと記憶しております」


「彼が味方になってくれると良いのだけど……」


 本当にリオは記憶力が良いのぉ。カミルからも聞いておるし、王妃も言っておった。それがどれだけ大きな変化をもたらすか、恐らくリオは気づいておらんじゃろうな。誰かのためにと働くリオだからこそ、ワシらがサポートして能力を最大限使い(こな)せる様にしてやりたいと思うのじゃろうな。


「では、私が一筆書きましょう。友好国は難しいかも知れませんが、国民を助けたいと言う手紙となります」


「陛下、それでお願いします。使者の方も、そこまでして貰えるとは思っていないでしょうからね。それでも国を、民を守りたいと言う気持ちが無ければ、仲間にするにはリスクが高いですしね」


「さすが、王太子妃殿下となられるお方ですな。そこまで考えて行動なさるのであれば、私は全てをカミル殿下とリオ様にお任せしましょう」


 サクッと結論まで出てしまったのぉ?皇帝に、リオとカミルに任せると言わせただけでも凄い事なのじゃが、それどころでは無いのじゃろう、皆気にしておらんのぉ?婆さんだけが、ワシの方を見て苦笑いをしておるな?ホッホッホ。


「では、取り敢えず……私達はザラカン王国から連絡が来るまで待機。ライはこれから向かう予定?」


「あぁ。吾輩なら何も食わずとも平気だしな。隠密魔法も覚えたし、吾輩がテキニンだと王様が言ってたぞ」


「ふふっ、そうね。ライが頑張って隠密魔法まで使える様になってくれたお陰でカミルを任せられるわ。よろしくお願いするわね。あ、食べ物が無くなったら困るから、ライの亜空間におにぎりを入れてってくれる?」


「いいぞ。このお爺さんの家ぐらいは入れられるぞ。吾輩、頑張ったからな」


「それは凄いのぉ!ライトはリオと同じぐらいの魔力があるという事じゃからのぉ。しっかり勉強も頑張っておる証拠じゃ。偉いのぉ」


「本当に凄いわ、ライ。ライがどんどん成長しているのが分かって、とっても嬉しいわ」


 ワシらがライトをベタ褒めするから、ソラ殿が拗ねておるな?皆んなリオが大好きじゃからのぉ。精霊王が介入した事で、カミルは絶対に助けられると思えたのじゃろう、リオも落ち着きを取り戻しておる。今のうちにゆっくり体を休めさせて、ザラカン王国から連絡が来たならば、即座に動かねばなるまい。


「いつ連絡が来るか分からんからな。食事を摂って、少し睡眠を取っておくべきじゃろう。各々(おのおの)しっかり準備しておくのじゃぞ。皇帝陛下とジャンはワシが城まで送って行こう」


「えぇ……やっと回復したのですが」


 ジャンが、か細い声で反論した事で、その場にいる全員が声を上げて笑っておるな。


「ホッホッホ。仕方がないのぉ。移動して辛かったら、ワシが治癒魔法で治してやろうな?じゃから安心して気持ち悪くなるが良いぞ?ホッホッホ」


「お手柔らかに、お願いします……」


 直ぐに戻る事が決定事項だと分かったジャンはガックリと肩を落としているな。王国の人間は、飛行魔法を使える者も多いが、帝国では他人までを浮かせられる程の魔術師は居ないのかも知れないのぉ?


「ジャンは若いのだから、練習すれば良かろう?自力で飛べれば酔わんで済むぞ?」


「…………そうですね。今後必要になりそうですし、デューク殿がお手隙の際に教えて貰う事にします」


 ワシは大きく頷いて、皇帝とジャンを飛行魔法で城まで連れて帰り、ジャンを治癒魔法で回復させた。そしてギルへ最低限の報告をし、ザラカン王国に対する許可を得てから我が家へ戻ったのだった。

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