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第182話 王妃とリオと仲間達 ★ギルバート国王 SIDE

 本日は待ちに待った、オリビアが王妃として復帰する大事な日だ。やっとダンスを1曲ではあるが踊れるぐらいの体力は戻り、日常生活を送る分には問題ないぐらい回復していると、皆に知ってもらうための夜会を行っているのである。


 まだ少しふらつくオリビアを支えてくれていたのは義娘(むすめ)になる予定のリオ。2人は治療を始めてからあっという間に仲良くなり、今ではカミルや婆さんが嫉妬するぐらいに仲が良い。


 結局オリビアの病気は、聖女であるリオがスキルを使って完治させたという事にしてある。第二王子の母親である側妃が亡くなって間もないが、第二王子や側妃と呪いが関係していたという事実は、書類上からも削除される事となった。王妃の汚点にしかならない上に、それを40年も解決出来なかった王家にも問題があると思われる可能性があるからだ。


 主治医が変更になり、新しい主治医が大聖女様になら治せるかもしれないと発言させ、結果完治する事になったと言うシナリオだ。新しい主治医には口止め料として、王妃を治すきっかけを作ったと言う功績を上げた事になっている。出身も公爵家で、私やカミルも信用出来る者だからこそ、白羽の矢が立ったのだ。


 私は国王の為に準備された玉座に座り、のんびりと皆の動向を見学する事にした。リオ達の所へ行こうとしたら、宰相に(つか)まってしまい、大人しく座っていろと言われたからなのだが。さて、気を取り直して周囲を見渡すと、愛しのオリビアとリオが見える。会話はハッキリと聞こえないが楽しそうだ。相変わらずスレンダーで儚げなリオは、美しい黒髪を風になびかせて窓の近くでオリビアと涼んでいた。パーティーの始まりに、王である私とオリビアがダンスを踊り、カミルとリオが続いて踊ったからね。2人とも、少し涼みたかったのだろう。


 そんな2人に侯爵家の者が数人近づいて来ているな。彼奴(あやつ)らは、オリビアが王妃になる事を最後まで反対していた者達だな。内容が気になるな……風魔法を使って話しを盗み聞ぎしようか。宰相が居ないうちに「風よ、声を届けよ」と(とな)えた。


「お加減如何(いかが)ですかな?王妃様。40年近くお姿を拝見(はいけん)出来ませんでしたので、貴女様が本物の王妃とどうやって証明なさるのだろうか?のぉ、そなた達は覚えているか?」


「オリバー侯爵の仰る通りですなぁ。40年も治らなかった病気が急に治るなんて信じられませんしな。本当にうつらない病気なのでしょうか?あまり近づきたくありませんが」


 ニヤニヤと気持ち悪い笑みを見せる侯爵達にうんざりした顔を見せるオリビア。40年前と何も変わってないなんてな。私もうんざりしていると、リオがスッと一歩前に出たな。


「失礼な方々ですわね。その事については陛下からお話しがあったと思いますが?そちらの方、うつらないかですって?それも陛下が説明してくださいましたよね?最初についた主治医が誤診(ごしん)していたのですよ?最初からうつらない病気だったと言ってるでしょう!人の話しを聞いていらっしゃらないのですか?それとも耳が遠いのかしらね?」


 吹き出しそうになったオリビアは慌てつつも優雅に扇子(せんす)を口に当てて誤魔化(ごまか)したな。リオに正論を突き付けられた侯爵達は驚いているようだ。これまでリオはカミルを立てる為に発言を(ひか)えて来たからな。ハッキリと物を言えるタイプだとは思っていなかったから驚いたのだろう。


「確かに年寄りばかりですからなぁ。聞こえなかった上に、理解できなかったのでは?」


 リオの事が大好きなエイカー公爵と夫人を含めた公爵家の者達が近づいて来たな。ここにいる公爵家の者達は信頼出来る者ばかりだから任せて大丈夫だろう。


「え、エイカー公爵様……」


「ほら、反論してみてはどうだい?このままでは君達が不敬だと知らしめる事になるのでは?なぁ、ソフィア夫人」


 リベラ公爵家の爺さんが夫人に同意を求めたな。リベラ公爵はデュークの父親で、5つある公爵家を裏でまとめている存在だ。発言力もかなり強く、ソフィア夫人と2人で来たならば負け無し、最強で無敵だと言われている。そんな2人に睨まれてしまった侯爵達はどうするつもりでいるのだろうか?夫人は容赦(ようしゃ)無いぞ?


「ええ、そうなりますわね。わたくしの親友であるオーリィが偽物な訳がないでしょうに。わたくしも聖女様も、ここ最近はずっとオーリィと一緒にお茶してますけど体調に何も問題ありませんしね?公爵夫人のわたくしがうつらないと証明しているのです。これ以上の証明が必要ありますか?それとも他に何か問題でも?」


 頷く夫人にリオとオリビアが頷き返す。女性を……それも公爵家では最強の女性であるソフィア夫人を敵に回した時点で負け確定だと思うがな?


「し、失礼しました、夫人。我々は悪口を言っている訳ではないのですよ。王妃様は40年という長いブランクがありますから、王妃の仕事は荷が重いのでは?と言っているのです」


「あぁ、そこは心配していただかなくても大丈夫ですのよ。わたくしが直々に王妃教育をしておりますの。ですから義娘(むすめ)のリオもわたくしの仕事を手伝ってくれておりますので、全く問題ありませんわ」


 侯爵達は黙ってしまったな。必死に考えている様だが、さて次は何が出て来るのだろうな?地頭の良さが違うのだから、喧嘩を売るだけ無駄だと思うんだけどなぁ?まぁ、それが分かっていない時点で負けが決まってるよな。


「し、しかし!聖女様にも仕事はあるでしょう!王太子妃候補としても執務があると聞いておりますぞ。そちらをおざなりにしては困りますからな!」


「それこそ問題無いと思うよ?」


 侯爵達の後ろから現れたのはカミルだ。そのまま侯爵達の横を通り過ぎ、リオの隣を陣取って腰に手を回した。リオと視線を合わせるカミルは、(とろ)けるような笑顔でリオを()でている。但し、侯爵達に視線を向けるまで、だがな。


「リオの1日のスケジュールを知っているかい?午前中に執務を終え、午後は世の為になる魔道具を作る為に打ち合わせをし、それでも時間が余るから僕の執務を手伝ったり。リオは賢くて要領も良いから、仕事が直ぐに終わってしまうんだよ。王国の書庫の本も読み終えてしまって暇だと言うから、母上に相談して早めに王妃教育も始める事になったのであって。おざなりなんて事はあり得ないんだよ」


 侯爵達を見るカミルの目つきはとても鋭くなっていて、侯爵達は恐怖を覚え、後退(あとずさ)ってしまう者もいた。


「そ、そんな馬鹿な!聖女と言う肩書だけの女でしょう!」


 あぁ、こいつ本物の馬鹿だな。公爵家の人間達と、王族も敵に回したのだからな。この国のトップである王族と、それに連なる公爵家が皆リオの味方なのだから、勝ち目は無いといい加減気が付いてくれよ?この事態はさすがにマズイと思ったらしいリオが、事態を収拾しようと動き出したな。


「相変わらず、この国の一部の殿方(とのがた)男尊女卑(だんそんじょひ)がお好きなのかしらね?時間の無駄だと思われるので、もう結構です。あなた方に理解していただこうとは思っておりませんわ。そんな事より、今日は王妃様の記念すべき復帰なさるお祝いの席なのですから、邪魔なさらないでいただけますか?」


 わざとらしく大きな溜め息を「はぁ――――っ」と吐いて、侯爵達を軽く(にら)むリオはカッコ良いな。オリビアに、もっと堂々としていなさいと教育されたのだろう。『王妃の心得』は早くから振舞(ふるま)えた方が便利だからな。リオにはその権限もあるのだし。


「そうだね、リオ。今日は母上の為に行われるお祝いパーティーなのだから、僕やリオが目立っちゃ駄目だよね。母上も、父上の隣で少し座って休憩なさってくださいね。あの席は母上のお顔が良く見えますから、皆も祝福の挨拶をしに来てくれるでしょう」


「ええ、そうね。カミル、母様(かあさま)を気遣ってくれてありがとう。それではまた後でね」


 オリビアの顔は、子を想う母の表情そのもので。優しく愛おしむ笑顔でカミルとリオに目を合わせ、公爵達に向かって頷いてから私の方に戻って来た。やはり私の妻はオリビアしかいないな。あちらでは、まだごたごたしていそうだが、私は愛しいオリビアと並んでこの席に……40年ぶりに私の隣に戻って来てくれた事を、心の底から喜ぶ事だけで精一杯だった。

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