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第17話 称号は大聖女!? ★カミル SIDE

 練習場から執務室へ移動し、ソファに2人並んでくつろぐ。キースが紅茶を淹れてくれた。


「ねぇ、カミル。騎士団って何処にあるの?回復魔法をただ放つのは勿体無いから、実際に使ってみたいと思うんだけど……」


「とても良いアイディアだとは思うよ。ただ、魔力量が少ないと言われているリオが、いきなりヒールや範囲回復魔法を打ちまくってたら目立つだろう?」


「確かにそうね……」


 リオは肩を落として眉を下げ、明らかに落ち込んだ。


「リオはもう上級まで使えるのだから、そろそろ魔法の応用のやり方を理論的に勉強してみないかい?3日間で使った魔法の幅を広げる事が出来るよ」


 リオの顔がバッと上がる。瞳をキラキラさせて、興味津々のようだ。


「応用?上級まで打てたら終わりじゃないのね!」


「ふふ、面白そうでしょ?明日は僕の執務室で昼食を食べてから、デュークを呼ぶよ。きっと楽しいと思うよ」


「えぇ、それは楽しみだわ!ノートとペンを持って来るわね?色んな可能性があるなんてワクワクするわ」


 リオの手を取り、優しく撫でる。喜んでいたリオの頬が薄っすら赤くなる。


「それで、リオの魔力量はどうなったのかな?」


「あぁ!見てなかったわ。ちょっと待ってね」


 リオは自分に鑑定スキルをかけた。


「えっ?か、カミル……魔力量が2万超えてるわ……」


「やっぱりね。あれだけ上級魔法をポンポン放ってたら増えるだろうと思っていたよ」


「想定内だったのね?あら?称号……大聖女?」


「あぁ、上級魔法を全属性クリアしたからね」


「「えぇ――――――!!!」」


 驚きの声を上げたのは、キースとクリスだ。そりゃそうだろう……魔法を覚えて3日目だもんね。


「お、おめでとうございます……リオ様」


「大聖女様!おめでとうございます!……あれ?聖女の称号はすっ飛ばしたのですか?」


「恐らく……中級の時には全属性をクリア出来た事に興奮して、称号まで気がつかなかったのだろうね」


 こんなに簡単に大聖女の称号を手に入れられるとは思っていなかったが、最終的に貴族を黙らせるカードとして大聖女の称号は欲しかったのだ。リオは他に変わった場所が無いか、じっくりステータスボードを確認してもらう。


「あら?カミル、スキルが解放されてるわ」


「………………キース、デュークを呼んでくれ」


「御意!」


 キースが慌てて執務室から出て行く。クリスは深い息を吐いてから紅茶を淹れなおしてくれた。


「リオ、スキルはデュークが来てから聞くよ。何度も説明するのは面倒だろう?それより、明後日に行われる王城でのパーティーの話をしよう。ドレスも僕が準備したんだ。楽しみにしておいてね」


「パーティー?カミルはセンスが良いからドレスは楽しみだけど、私にちゃんと務まるかしら……」


「大丈夫だよ。僕がずっと隣にいるからね」


 コンコンとノックの音がしたと扉に視線を向けると、「殿下!」と慌ててデュークが入って来る。猛ダッシュして来たのだろう、汗だくでゼイゼイ言っている。


「大丈夫かい?」


「キースの慌て方が大袈裟だったんだ!特に問題は無さそうだな?」


「あぁ、リオのスキルが解放されただけだ」


「だけって……大事でしょうに……キースの慌てた理由が分かって安心はしたが」


 ガチャっと扉が開く。キースがグッタリしながら入って来た。


「置いて行くなんて酷いよデューク!魔導師のくせに、何でそんなに足が速いんだよ!」


「足の長さじゃないか?」


 ガハハハと笑うデュークに、キースが不貞腐れてる。


「強化したのですか?」


 リオがデュークの足を見ていた。


「あぁ、リオ殿は魔力に敏感でしたな。その通り、身体強化を足だけに重ねがけしたんです」


 なるほどと頷くリオの魔力感知能力の高さに驚く。


「それで、スキルは何が増えたんだ?」


「『聖女の息吹』と『大聖女の祈り』ですね」


「スキルに鑑定を重ね掛け出来ますか?それだけではどんなスキルか分からないですから……」


 リオは言われた通りにスキルに鑑定を掛けたようだがコテンと首を傾げる。


「んんー?スキル名が光っただけですね。何度やってもスキル名が赤く光るだけです」


「使ってみるしか無いが、自動発動スキルだと分からないんだよな……」


「自動発動スキル?あぁ、私の意思に関係無く、勝手に発動してくれるとか?」


「その通りだよ。恐らく、聖女の称号と大聖女の称号を獲得したタイミングで解放されたんだろうから、まだ発動条件が揃って無い可能性が高いね。大聖女の称号を獲得したのは昨日だし?」


「取り敢えず『聖女の息吹』から発動出来るかやってみて貰えますか?」


「分かりました」


 胸の前で両手を祈るように組み、リオが集中する。


「駄目ですね……『大聖女の祈り』をやってみます」


 同じく集中するが何も起こらないようだ。


「ふぅ、駄目ですね。自動発動スキルって事ですよね?」


「そうだと思われますな。スキル名からして、自己回復スキルっぽいですが……危険な目に遭って見なきゃ分からない」


「駄目だぞ!」


「分かってるって。南の森に行く事があれば、発動する可能性もあるからな。まぁ、当分先だろうが」


 ギャーギャーと騒いでいると、リオが急に体を預けて来て驚く。甘えたかったのかとリオを見ると、顔が真っ赤にして大汗を掻いている。


「リオ?リオ!どうしたんだ!」


 リオの異変に気付いて男4人で慌てる。


「キース!医者を呼んで来い!あーー!誰でもは駄目だ!僕の主治医を!」


「トリス爺ですね!御意!」


「横にした方が良いのでは?殿下、端にズレて。膝枕の方が良いだろう」


「あぁ、そうだね」


 トスンとリオの頭を僕の太ももに乗せる。息もかなり荒くなっていて、熱が高そうだ。


 「坊ちゃん!どうしましたか!」


 トリスがバターン!と勢い良く扉を開けて入って来た。


「トリス!凄い熱なんだ!とても苦しそうで……」


「どれどれ……んん?ちょっとお待ちくだされ。んー、これは、魔力熱ですな。坊ちゃんも6歳ぐらいの時に苦しまれたでしょう?子供が初めて自分の魔力を動かした事で、体が驚いて出る熱ですな。こんなに育ったお嬢さんが熱を出すのは珍しいですが……」


「魔力熱……はぁ――――、良かった…………」


「トリス殿、お聞きしてもよろしいか?」


「えぇどうぞ、デューク殿」


「召喚された女性達がいたと思うのだが、魔力熱を出したと報告はあっただろうか?」


「いいえ、ございませんなぁ」


「トリス、この事は内密に頼む」


「あぁ、このお嬢さんは召喚者でしたか。なるほど、なるほど。勿論、坊ちゃんの命でしたら従いますとも」


「助かる。ありがとう、トリス」


「いえいえ。お嬢さんには熱を下げる薬を出しましょう。なに、心配なさいますな。魔力熱に効く薬はありませんが、睡眠が1番の薬です。自然に任かせ、3日も寝れば元気に動けるようになりますからな」


「あぁ、分かったよ。薬はリオの部屋に……僕が運ぶから、後で取りに行くから準備しておいてね。食事はさせずとも大丈夫なのかい?」


「夕食までの数時間寝かせ、軽く食べれる物を胃に入れてから薬を飲ませてあげてくだされ。起きないようなら、目を覚ますまで寝かせてあげても大丈夫ですぞ」


 しっかり頷き、リオを部屋に運ぶ。侍女達に汗を拭いてから着替えさせるように指示を出し、夕食時に来ると告げる。これが魔力熱である事は黙っておき、慣れない場所で疲れが溜まったのだろうからゆっくり休ませるようにと伝えた。

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