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第172話 悪い呪術師を探せ! ★ノルト侯爵 SIDE

 国王陛下の名前で出した手紙によって呼び出された呪術師達が、パーティー会場に集められました。分かっているだけでも呪術師は300人を超えるので、さすがに謁見の間に全員は入りきれません。なので一旦パーティー会場で軽食を摂りつつ待っていてもらう事になりました。そして5名ずつ国王陛下のお目通りをし、新しい国営の事業を立ち上げたいと言う理由で話しを聞く事になっております。


 もちろん、実際にはリオ様が全員の魔力を視て、王妃様を呪った人間を22名探し出す事が目的ですね。国王の呼び出しに応じない者は不敬とされるので、殆どの呪術師が集まったと思われます。城が広くて場所が分からず遅れた者はいたようですが、私が作ったリストの数と(おおむ)ね合っているみたいですね。


 陛下は謁見の間でのんびり談笑なさっていました。本日この場に集まったのは、隠密魔法を掛けている賢者様とリオ様、そして影が長を含め10名。見える状態で陛下と共に立ち会われるのは、カミル殿下とデューク殿、そして私。あとは護衛が5名、扉の前に(ひか)えている。


 パーティー会場で行われていた呪術師達への説明が終わった様で、これから5名ずつ謁見の間に呼び出される事になっている。リオ様がご覧になって、間違い無く魔力が一致していると分かった場合は賢者様に伝え、賢者様が陛下に耳打ちする事になっているのだ。


 魔力が一致した者は一旦、別の部屋に通され、その後、魔法の使えない地下牢へ念の為、魔封じの魔道具をつけて放り込まれる。22名全て集まれば良いのだが……あぁ、1人は既に儚くなっているらしいから21名でしたな。


 さて、最初の5名が謁見の間に入って来ましたね。各々(おのおの)挨拶をして、陛下の話しに耳を(かたむ)けている様ですな。


「左から、得意な魔法と何が出来るか教えてくれるだろうか?」


 陛下が適当に時間稼ぎをしている。私の後ろの空気が動いて、賢者様のひそひそと報告する声が聞こえる。


「左から3番目と4番目の者の魔力が一致してるらしい」


 陛下は軽く左手の小指を立てた。了解の合図だ。スタートから2人も見つかってしまったのだから驚きだ。別の部屋に連れて行くのはデューク殿。影が数名隠れてついて行くが、デューク殿の方が『物理』での力が強いので、恐らく見守るだけになるだろう。別の部屋からは目隠しと魔封じをされ、地下牢へ入れられる手筈となっている。


「そうか、そうか。良く分かった。私から見て左から3番目と4番目の2人は詳しく話しを聞きたいから残ってくれるか。デューク、案内して差し上げなさい」


「御意!」


 さて、王妃様を呪った呪術師探しは、まだまだ始まったばかり。大体の流れは把握出来たでしょうから、どんどん進めて行かなければ夕刻までには終わらないでしょう。それでも他のやり方で21名の呪術師を見つける事は厳しかったと思われるのです。呪術は証拠が出て来にくいから、影達が長年掛けて隈なく探しても中々捕まらないですからね。リオ様と賢者様がお互い見えているからこその提案でしたが、サクサクと進める事が出来て有難いですなぁ。デュルギス王国はこの2人に殆どの問題を解決して貰っている気がしますね。リオ様は特に、まだお若い上に理不尽な目に遭われて来たのに……デュルギス王国の貴族である私が言うのも(はばか)られますが、敬服(けいふく)に値すると思っておりますぞ。


 ⭐︎⭐︎⭐︎


 やっと残りも5組となり、このままサラッと終わってくれると皆が思っていたでしょう。ところが別室へと言われた1番右の呪術師が抵抗して暴れ出しましたか。


「あっ、こら!待て!」


 ちょこまかと人の間を縫って逃げる男は、1番弱そうに見えたのだろう私に向かって突進して来ました。失礼な方ですねぇ。私、これでも王国であれば騎士になる資格も持っているのですよ?スッと右足を出し、男の(うで)を取って後ろに回り込み、地に()せさせた。


「まぁ!侯爵様って、お強いのね。魔法を使える事しか知らなかったけど、剣も(たしな)まれるのかしら?」


 賢者様に小さな声で話し掛けているリオ様の声が聞こえた。この年になっても褒められるのは嬉しいものですなぁ。


「あれで騎士にもなれる実力があるんじゃよ。王の(そば)に置いておくには良い体格よな」


 確かに私は縦にも横にも大きくは無い。小柄と言われるサイズ感ですからね。王より私を先に狙いやすいと言うのであれば、臣下としてはこの体格である事は恵まれているのかも知れませんね。


「カッコ良いわね。賢い上に、実は強いなんてズルいわよね」


 おっと、カミル殿下に睨まれましたね。リオ様が私をこれでもかと褒めるからでしょうけど、たまには私も褒めて欲しいですし、今日は譲ってくださいね。


「デューク!その者を()らえ、地下牢へ!」


「御意!」


 カミル殿下は、八つ当たりしたいが立場上出来ないと諦めてしまったご様子。相変わらず真面目でいらっしゃる。幼少期から知る私としましては、大変可愛らしく感じますなぁ。声を発する時に『王の威厳』スキルを使ってしまわないよう、ご自身を(りっ)する事を学んでから修得なさるのだが、瞬間的に感情を抑え込む様はさすがだと言えるでしょう。スキルの威力もリオ様と練習する事で、少し怖がらせるぐらいまでに抑える事が出来るようになったとか。年寄りは若い世代が成長する(さま)を見るのは楽しいですから、これからも変わらず成長し続けて欲しいですな。


 デューク殿が地下牢から戻っていらして、残りは4組ですかな。地下牢へ入れられた呪術師は20人で、残り1人でコンプリートですな。サクッと次の組を入室させると、その中に最後の1人がいたようです。全員揃ったと皆で大きな溜め息を吐いてホッとし、残りの3組15人は1度に全員を謁見の間に入室させ、念の為にリオ様に確認していただいてから解散させましたよ。


「何とか終わったわね……さすがにちょっと疲れたわ」


「リオ、お疲れ様。6時間も休み無く謁見に付き合わせてしまったからね。体調は平気?ずっと立ってたけど足は大丈夫?」


 6時間も集中していらしたのだから、疲れていらっしゃるだろうとは思っていたが、立っていたからと仰るカミル殿下の甲斐甲斐しく気を遣われる様に感服致しますね。これだけの時間掛かると分かっていれば、リオ様に椅子をご用意しておくべきでしたな。我々は立っているのが当たり前なので失念(しつねん)しておりました。


「リオ、隣の応接室のソファで少し休んでから部屋に戻ると良い。宰相、お茶とお茶請(ちゃう)けはあっただろう?」


 可愛い義娘(むすめ)と、少しでも長く関わりたいとお茶に誘われているのは分かっております。リオ様に構いたいのは皆同じ気持ちですからな。今日は時間も少しありますし、私も少しお手伝い(いた)しましょうか。


「はい、ございますよ。リオ様は焼き菓子がお好きだとお聞きしましたので、数種類用意してあります。どうぞお召し上がりください」


「まぁ!嬉しいわ、ありがとうございます。今は甘い物がとても恋しかったので楽しみですわ」


 笑顔で応接室に向かう陛下達はとても嬉しそうだ。勿論、40年間に渡って王妃様を呪った呪術師を全員見つけられたからでもあるだろう。これで後は、賢者様とデューク殿が『いつも通り』尋問なさるのだろう。口を割らない魔法がかかっている場合はリオ様が解除なさると聞いておりますが……絶対に賢者様一家を敵に回してはなりません。リオ様が少しでも悲しめば、賢者様を始めとしてカミル殿下や精霊達までを敵に回すだけでは無く、リオ様ご本人の力こそが1番お強い事を……絶対に忘れてはなりませんぞ。

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