第164話 そんな事まで!? ★ギルバート国王 SIDE
「えっ?!リオちゃんは人物鑑定も出来るの?」
一拍遅れてオリビアが驚いて固まっている。そりゃそうだよな。今日初めて会った、話しでしか聞いた事の無いリオは出来る事が多いからな。これでもか!とスキルを詰め込まれた華奢な体は、我々からの重い期待を背負っている……いや、背負わせてしまっているのか。何だか申し訳なくなって来たな。
まぁ、もう今回もリオに頼むしか解決しそうに無いのだから仕方ないとしか……王として、あってはならない個人的な願いだと分かっているが、いつの日かオリビアが快癒する事を夢見て毎日女神様に祈るくらい、私の人生を掛けた願いなのだからな?神頼みならぬリオ頼みしても仕方ないだろう?
「あ、はい。私は『大賢者』の称号も持っているので、どうやらデュークよりも更に詳しく鑑定が出来るみたいなんです。帝国で個別に動いていた時に、グッタリしていた猫を鑑定してみたのですが、栄養失調で貧血気味だと出たので……恐らく王妃様の状態も詳しく分かるのではないかと思いまして」
「オリビア、構わないかい?君が良ければ、私は藁にも縋る思いでリオに希望を……私の夢を託したいのだが……」
「ええ、勿論わたくしもですわ。見られて困る様な後ろめたい事もありませんからね……リオちゃん、わたくしを人物鑑定していただけますか?わたくしも元気になって、リオちゃん達とお茶会を楽しみたいですわ」
丁寧に頭を下げるオリビアに、リオが恐縮しているな。両手を横にフルフルと振って、頭を上げてくださいと慌てている。2人とも可愛いなぁ。オーリィは昔から娘も欲しいと言っていたから、オーリィが快癒したらお茶会や食事も共にしたがるだろう。カミルとも一緒にいる時間も増えるだろうから、今から仲良くしてくれたら嬉しいな。
「ありがとうございます!それでは、私の予想が正しいか確認したいので、さっそく鑑定しますね」
リオはオリビアの事をとても集中して視ている。フッと胸辺りに視線を移動させたな。ステータスボードが出ているのだろう。それにしても、デュークの人物鑑定より上があるとは思わなかったな。王族の血を引いている者は、スキルもそれなりにレアな物になりやすいとは言え、人物鑑定出来るのはデュークを含めて数人程度。その中でも1番詳しく鑑定出来るのがデュークだったのだからな。
「間違いありませんね……王妃様はご病気では無く、長年『呪い状態』だった様です。王妃様のスキルのお陰で致命傷にはならず、何とか耐えていただけですね」
鑑定を終えたリオが顔を上げてオリビアに向けて解説している。ん?待てよ?今の話しを逆に取れば、オリビアのスキルが今と違っていたら、致命傷になっていたと言う事か!?な、なんて事だ。運が良かっただけでは無いか!ん?待てよ?そんな事よりも『呪い』だと?
「ま、待ってくれ、リオ!オリビアが呪われていると?それも40年前からって事なのか?!」
リオはコクンと頷き、まだ見えるのであろうステータスボードをじっくりと眺めながら解説してくれる。
「王妃様のステータスにはそう書いてあります。正しくは39年と4ヶ月前、複数の呪術師から呪いを受けています。ただ、スキルで呪いが相殺されて反応が出づらかった所為で、焦った元凶であろう人物が呪術師の人数を増やした事によって、痣が浮かび上がる程にまでになった様だ、と」
「その呪術師達の名前は書いてないのかい?」
王妃であり、私の愛しいオリビアを呪うなんて許せない。出来るだけ権力は使いたく無いが、今回は使えるだけガッツリと使わせて貰うからな。呪術師の名前が全員分かるなら、問答無用で処刑も……それぐらい私は怒っているのだ。
「2人までなら名前も出る様なのですが、さすがに10人を超えると厳しいみたいですね」
「な、なんと!10人以上から呪われてるって事なのか?!」
「確か、呪術師って人数少なかったですよね?限定するのは難しくなさそうですが……」
確かに多くは無いし、魔導師や呪術師もそうだが魔力がある人間は、どんな魔法が使えるかを10年に一度は人物鑑定して虚偽の報告が出来ない様にしっかり登録させているからな。次の鑑定までの10年以内に呪術を使える様になった者以外は登録されてるから探すのはそこまで難しくは無いだろう。ただそれは、はっきりした人数と、人物名が分かっていればの話しだな。
「それでもそれなりの数はいるからなぁ……呪術師達を城に集めるのは適当に理由をつければ何とかなるから簡単だが、集めた呪術師全員を尋問する訳にもいかんだろう?」
「あ、その場にいる事が出来るのならば、私が分かりますので」
「「「え??」」」
「王妃様に残っている呪術師の魔力を覚えました。恐らく22人の呪術師が関わっています」
な、何と!そこまで分かるのか……『また』リオだけで解決してしまいそうな勢いだな。確かにカミルの金の魔力であれば、私でも分かるからな。それをもっと細かく分析したり、魔力の癖を覚えたりしているのだろう。
「凄いとしか言えないな……それで、オリビアを呪った呪術師を捕まえて処罰すれば、オリビアの痣は消えるのかい?」
「あ、痣を消すだけでしたら、恐らく私のスキルで可能だと思いますよ?」
ん?今、何だか大事な事をサラッと言ったな?痣を消す『だけ』ならって……呪いを解呪するから痣が消えるのだろう?ん?解呪されるんだよな?
「な、な、なんだってー!?お、オーリィは助かる?た、助かるのか?!」
分からなければ聞けば良いって事で、勢い余ってリオの肩を掴んでユサユサと前後に揺らしながら聞く。カミルが私の手からリオをスマートに奪って行った。
「父上!やめてください!そんなに揺らしたらリオが気持ち悪くなっちゃうでしょう。リオ、大丈夫?これから母上の治療もしてもらわなきゃならないのに、父上がごめんね?」
「あぁ!そうだった!リオ、よろしく頼む。オーリィを普通に生活出来る様にしておくれ」
「えっと、お二方は少し黙っていて貰えますか?王妃様とお話ししたいので」
私とカミルはピタッと動きを止めて口を閉ざした。治る可能性にテンションが上がり過ぎて、時間を無駄にするところだったな。さすがはリオだ。冷静な判断力と決断力を持っているからな。我々は大人しく話しを聞いていような、カミル。
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