第158話 念願の、、、 ★リオ SIDE
今日は念願のダンジョンに潜る予定の日!昨晩は遠足前の子供の様にワクワクし過ぎて寝付けなかったから、ソラにお願いして眠りに誘ってもらったお陰で今日も絶好調!そんな私は現在猛ダッシュ中。カミルが私を探しているらしいのよね。ソラの転移魔法を使うと、シルビーに場所がバレてしまうし……魔力を使ったらバレるから、強化すらせずに走るしか無かったのだ。
さて、やっとカミルとシルビーを撒いたわよ。急いで爺や達との待ち合わせ場所に行かなきゃだわ。えっと、忘れ物も無いわよね?先日コテツさんに夢の中で必要な材料や工程をちゃんと聞いて、細かくメモしておいたから問題無いはずだわ。
私がダンジョンに潜りたい理由は、カミルに結婚指輪を贈りたいから。あんなにも素敵なネックレスと婚約指輪を贈ってくれたカミルに、私からも『特別な』贈り物をしたいってのが本音なのよね。
この『特別』がね……爺やが言うには国宝級のアクセサリーになるのでは?と。国王に言ったら反対されるかも知れないから、作っちゃってから報告すれば、作っちゃったものは仕方ないで済むじゃろうって、言ってるのよね……
でも、どうしても私が作って渡したいと思ってしまう。指先は器用な方なのよ。絵は下手なんだけどね。デザインは爺や御用達の宝石店で手伝ってもらえる事になっているから、何とかなると思うし。
ただ、材料が希少な物も多くて、爺やかデュークに手伝って貰わないと厳しいの。素材の名前は分かっても、その素材を見た事が無いんだもの。毎回鑑定してたら途方もなく時間が掛かると思うし、そのせいで結婚式に間に合わないのも困るわ。まぁ、爺やに相談した時に「ワシが一緒に行くから問題なかろう?」って言ってくれたから、サクッと解決したのだけどね。
護衛もサイラスとリューがついて来てくれる事になってるし、ソラもいるから間違いなく戦力過多なのよね。なのでダンジョンに潜りたいと言う私の願いは、爺やが国王陛下に話しを通してくれて、あっさりと聞き届けられたのでした。
まぁ、ギリギリでカミルが私を探しているとソラが教えてくれたから、シルビーに魔力を探られない様に注意しつつ待ち合わせ場所に遠回りしながら急いだって訳。私の魔力って特殊だから分かりやすいだけじゃ無くて、魔力が多過ぎてダダ漏れなんですって。だから、魔力を漏らさない様に体の内に隠す訓練をしたのよ。そのお陰でカミル達を撒けたのだから、訓練の甲斐があったわね。
「おぉ、リオ。もしかして、カミルが探していたのかのぉ?」
「爺や、待たせちゃってごめんなさいね。カミルが探してるってソラが教えてくれたから、こっそり遠回りして来たの」
「ふむ、上手に隠せるようになったのぉ。ワシでも数十メートルも離れたら、リオの魔力は全く分からなくなりそうじゃ」
うんうんと頷いて私の頭を優しく撫で、良くやったと褒めてくれる。小さい頃は、何か良い事をしたら褒めて貰えるのが嬉しいから、頑張ろうと思っていた記憶があるけれど……実はこの年になっても努力を認めて貰ったり、褒められたりすると嬉しいものなのね。私って褒められて伸びるタイプだったみたい。ふふっ。
「そうなのね!上手くいって良かったわ。ダンジョンでは魔力に魔物が集まるんでしょう?」
「そうじゃ。ダンジョンの中で魔物が少なかったら、少しづつ魔力を放出すれば集まるからの。時間は少し短めじゃが、恐らく全ての材料が集められるとは思うから安心するのじゃぞ」
魔力を隠す訓練をした理由がこれね。私が魔力ダダ漏れのままでダンジョンに潜ると、もれなくスタンピードの様な状況になるらしい。魔物がいつも私ばかりに向かって来る理由が分かったわね。
「ありがとう、爺や!これでやっとダンジョンに行けるのね!」
「リオ様、流石でございます!ダンジョンに入りたければ、魔力を制御し体の外へ漏れない様にしなければ連れて行けないと言う賢者様のお言葉を受けてから、たったの半日で魔力制御まで完璧に習得なさるなんて!」
リューが私を大袈裟に褒めてくれる。魔力を制御するのは思っていたより簡単だったのよね。袋を端からクルクル丸めて圧縮するイメージで魔力を小さくして、袋を掛けるように閉じ込めたら体から出ない様に上手く出来たわ。私は未熟で知らない事も沢山あるのだから、もっと色んな経験や勉強をしたいわ。このダンジョンも、経験のひとつよね?ふふふ。
「本当にのぉ。それに寝てる間も制御していたとソラ殿に聞いておるからの……さすがにワシも驚いたわい」
「聖女様に不可能は無いのでしょうね。私は騎士なので魔力の事は詳しく分かりませんが、気配が全く感じられないので凄い事なのだろうと思います」
あぁ、だからカミルやシルビーにも見つからずに来れたのかも知れないわね?
「ほぉ。サイラス、魔力を制御すると気配も隠れると言う事かのぉ?」
「少なくとも、私にはそう感じます。賢者様の気配も分かりづらいのは、もしかしたら魔力制御に秀でていらっしゃるからかも知れませんね。影ですら見つけられない時があると聞いておりますし……」
「ふぅ~ん。そうなんだね~?まぁ、オイラ達精霊には2人ともハッキリ見えてるから、ニンゲンの感覚の限界?が魔力に関係してるんじゃない?面白いね~」
スルスルと私の腕に絡まりながらくっついて来たソラが、精霊視点での見解も教えてくれたわ。
「ソラにはハッキリ見えているのね。やっぱりソラ達精霊は凄いのね!私が人間から隠れていても、ソラ達なら私を見つけられるって事よね?凄いわー!」
「なるほど、それは良い事を聞いたのぉ。何も無い事が一番ではあるがの。リオ、人間から逃げなければならなくなった時には、必ず魔力制御して逃げるのじゃぞ?リオの事はソラ殿が必ず見つけてくださるじゃろうから、安心して隠れていなさい」
爺やがいつもより落ち着いた声で、真面目な顔をして私と目線を合わせながら語りかけてきた。私は春には王太子妃になる予定だから、誰かに狙われる可能性を考えてでしょうね。心配してくれる家族がいるって、本当にありがたいわよね。
「ええ、爺や。誰かに追われる事があれば、魔力制御して逃げるわね。ソラ、その時は隠れてる私を見つけて、カミルと爺やに場所を教えてあげてね」
「うん、了解したよ~。リオからお願いして来る事って少ないから、その時は絶対に見つけてカミル達に教えてあげるから安心してね~」
「ソラが約束してくれるなら安心して隠れてられるわ」
腕に絡まっていたソラを抱いて、頬ずりする。ソラもスリスリと私の頬に摺り寄せてくれた。皆んなの力を借りて、こうやってダンジョンに潜れる事をありがたく思うわ。私1人では、何も出来なかったと思うからね。改めて、私に信用できる仲間がいる事をとても嬉しく思うわ。
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